確かな演技力でさまざまなドラマ、映画、舞台にアクセントを添える実力派女優の江口のりこ。9月まで放送されていた『半沢直樹』(TBS系)では、国土交通大臣・白井亜希子役で、錚々(そうそう)たる俳優陣に引けをとらない強烈なインパクトを残した。
【写真】照れたような優しい笑顔を見せる江口のりこ
◆顔や名前を知らない相手との恋愛も「楽しいならいい」
『ホタルノヒカリ』『スカーレット』の水橋文美江が脚本を担当する本作は、面倒な恋愛を避けて悠々自適なおひとり様生活を送っていたドSで完璧主義な産業医の美々(波瑠)が、「このままでは一生ひとりかも」と孤独と焦燥を感じ、不器用に恋を追い求める恋愛ドラマ。江口は、それなりの成功を手にし、思うままに生きている達観した精神科医・富近ゆりを演じている。オンラインゲーム上で顔も名前も分からない相手に恋をした美々を見守るゆりについて「人の話を引き出すのが上手な人。私も後輩にお節介を焼いたり、話を聞いたりするので、そういうところは似てるかもしれないですね」と笑う。
主演の波瑠とはガッツリ芝居をするのは今回が初。波瑠の印象を「明るくてさっぱりしている方」と言い、「一緒に過ごすのは楽しいです」とほほ笑む。また、オンラインゲームをきっかけとした美々の恋愛については「めちゃめちゃいいと思う」と即答。「恋愛が彼女にとって日々の励みになってる。気になる人から連絡がきたら、舞い上がることもそう。
一方で、自身のプライベートにおいては、SNSをきっかけにした恋愛はイメージがまだ湧かないとも。「首が弱いので、スマホをずっといじってるとつらくなるんです(笑)。なので、その時点で無理かな」と苦笑い。また、恋の相手を選ぶ上で意識していることを聞くと「ないですね」と断言し、「この人がこうだからと好きになるわけでもないし、気付いたら好きになってる。自分でも分からない」と素直な思いを明かす。
本作はコロナ禍の社会をそのまま描いているため、劇中の芝居でもマスクを着用。「目元しか見えていないので、大丈夫かと気になることもあったんです」とコロナ禍ならではの現場での悩みを明かすも、「でもそんな時にメイクさんがきて、目元を丹念に直して、表情を分かりやすくしてくれて。心強い支えがあるので、マスクがあろうがなかろうがいつものように芝居をやろうと思っています」と意気込む。
@@separator◆『半沢直樹』白井大臣後も「本当に何も変わらない」
2000年に劇団東京乾電池に入団。それから300本以上の舞台、ドラマ、映画に出演し、着実にキャリアを重ねる江口。
多種多様な役を演じる上で意識していることを問うと、「なるべく人の言うことを聞こうというくらい」との答えが。「気持ちよく仕事をしたいので、監督がこうしてほしいと言うならばそうします。作品は自分一人で作ってるわけではない。人の意見をとり入れた方が私は演技が豊かになる気がするので、自分の考えだけでやるのではなく周りの声を取り込みますね」。
作品を選んだりせず、基本、出演オファーがきてスケジュールが合えば受けるスタンスだという。「オファーをいただいたものは大体やるので、『そうか、今回はこれなんだ』と思うくらい。連ドラはキャラクターが途中から変わっていくことも多いので、最初はあまり何も考えずにやり、現場で臨機応変に対応していきます」。
『半沢直樹』の白井大臣を演じてから環境の変化は、「何もないです。今までの役と全く同じ」とケロリ。「ネットニュースに自分の名前が前より載るようになっても、それは自分が知らない他人が言っていること。
◆自粛期間を経て感じた芝居できることの喜び「前より文句は言わなくなりました」
「一つの作品を引きずる暇はないです」と口にするなど出演作が途切れないが、そんな多忙な中、プライベートでも芝居につながる時間を過ごしている。「休みの日はだいたい映画や芝居を見ています。自粛期間中はそれができなかったので、本当にすることがなくて…。目的もなく3、4時間散歩していて、コロナ痩せしました(笑)。仕事はもちろん自分の楽しみを奪われていたので、寂しかったですね。なので、今は忙しいですが、芝居ができてるので前より文句は言わなくなりました(笑)」。
そんな江口が今後、女優として挑戦したい役とは?「何かをプラス練習できるものがついてくる役をやりたいです。体を動かすのは嫌なので、楽器がいいですね。ダンスは絶対嫌です(笑)」。(取材・文:高山美穂 写真:高野広美)
水曜ドラマ『#リモラブ ~普通の恋は邪道~』は、日本テレビ系にて毎週水曜22時放送。