AKB48の柏木由紀が、7年5ヵ月ぶりのソロCDシングルを3月3日にリリースする。「30歳までAKB48を卒業しない」と公言していたが、今年7月に30歳を迎える。
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3月3日リリースのソロシングル「CAN YOU WALK WITH ME??」は、柏木にとってターニングポイントになる作品だ。これまでの柏木のソロ楽曲のかわいらしい“王道アイドルソング”から一転。BiSHや豆柴の大群などを手がけるWACKの代表取締役・渡辺淳之介氏がプロデューサーを務め、渡辺氏と共に、WACKの攻撃的なサウンドを作り上げる音楽クリエイター・松隈ケンタ氏が彼女の楽曲を初めて手がけることでも話題を集めている。
先行して解禁されたミュージックビデオでは、バンドを背にして力強く歌い上げる場面をメインとしながらも、柏木が向かい風へ立ち向かい、強い雨にさらされながら前に進む “体当たり”シーンも描かれ、そのMVからは新境地へ向かう彼女の覚悟が感じられる。
――久々のソロシングルリリースについてはどんな思いがありましたか?
柏木:しばらくシングルCDを出せていないなと思っていましたし、数年間も空いてしまうと「もう出せないんじゃないか」と思っていたので、素直にうれしかったです。ファンのみなさんからも「新曲を出さないんですか?」とずっと言われていたので、いい報告ができて良かったです。
――本作では、WACKの渡辺淳之介さんがプロデューサーを務め、楽曲も松隈ケンタさんが手がけています。環境も新たな中でのレコーディングはいかがでしたか?
柏木:今回お二人に立ち会っていただき、めちゃくちゃ緊張しました(笑)。松隈さんには細かくいろいろ指導していただき、愛情を感じました。
――表題曲のMVでは、風・雨・炎の中を歩き進む体当たりシーンも印象的でした。また柏木さんの輝かしい過去の写真がボロボロになって風に飛ばされたり、炎で燃えたりする演出にきっとファンも驚いたと思います。
柏木:MV撮影は久しぶりに「一生懸命撮影している」と思えるほど、楽しかったです。たぶん、渡辺さんと組まなければ、バンドのみなさんと一緒に歌うシーンや夕焼けで歌うシーンだけになっていたのかなと思うんです。WACKさんらしい演出が加わったことで、私自身に興味がない人たちも見てくれるのではないかと、表現の広がりに期待を持てました。
渡辺さんからはこの演出について「これまで味わってきた風当たりや世間からの批判、炎上を表現していて、それに向かって私が立ち向かって進む姿を表現している」と聞きました。これまでを振り返って、自分では世間の声を意識していたわけではないけど、やっぱり大変なこともあって…。でも、もうすぐ30歳を迎えるにあたり、逆境にも負けず、応援してくださっているファンのみなさんからの声に耳を傾けてこれからも活動していきたいという気持ちが強くなってきたので、その思いと重ね合わせながら撮影していました。
■アイドルがずっと続けられるお仕事になればいい
――アイドルとしてのキャリアは15年目へ突入。そしてまもなく30歳を迎えます。正直、ここまでアイドルを続けていると思っていましたか?
柏木:ぜんぜん思っていなかったです。中学3年生でAKB48のオーディションに合格した当時、「アイドルとして活動するのは高校の3年間くらいかな」と思っていたので(笑)。AKB48の先輩やほかのメンバーを見ても、遅くても20代後半には次の道へ進んでいるので、私が実際、30歳になるのを考えると驚きますね。
ただ、誰かに「続けてくれ」と言われたりやらされているわけでもないし、純粋に辞めたいと思うことがなくて。
――2019年11月、柏木さんが28歳の時に音楽特番で「30歳までAKB48を卒業しません」と発表しましたが、あえて公言した理由はなんですか?
柏木:本当はめちゃくちゃ迷いました(笑)。「30歳まで辞められない」という不安よりは、わざわざ音楽番組で言って「誰が興味あるんだろう」と葛藤もあったから。ただ、ファンのみなさんから「もうそろそろ卒業するんですか?」とか「辞めないでください」という声もいただくことがあって…。だったら30歳までは約2年あったので、ファンの方にとってはその期間は卒業しないと安心して応援していただけた方が楽だろうなと考えて発表しました。
でも正直、もう少し叩かれるだろうと思っていました(笑)。批判や悪口はゼロではなかったけど、それ以上に「応援しています」「新しい道を切り開いてください」といった声がたくさん届いて…。今では、言ってよかったなと思っています。
――ほとんどのアイドルの方が30歳前にグループを卒業をしていますが、アイドルの定年についてどのように考えていますか?
柏木:私自身も30歳に近づくにつれて年齢を意識しましたし、ほかのアイドルの方がこの年齢になると「辞めたい」とか、方向転換をしたくなる気持ちも分かります。でも、私みたいに「まだやりたい」と思っている方もいるでしょうし、ファンの方も「年齢を重ねたら応援しません」という人ばかりではなく、続けてほしい方もいると思うので、お互いの思いがマッチしているのであれば、年齢を気にせずに続けられるようになれたらいいなと思うんです。
少なくともAKB48では私が最初に30歳になるので、おこがましいですが、そこは私が変えられたらいいなと。
後輩の中に「長くアイドルを続けたい」と思っている子がいるならば、続ける選択肢を残してあげたいし、アイドルがずっと続けられるお仕事になればいいと思うので、そんな姿を見せていきたいです。■アイドルファンだったからこそ身についた批判への免疫力
――「何を言われるにしても慣れている」ということですが、そう考えられるようになったのはいつからですか?
柏木:元々アイドルが好きで、ファン側でファン同士の会話を見ていたからですかね。どんな人気グループや人気メンバーにでも、一定数批判や悪口を言う人はいるもんだと知っていました。AKB48に入って、言われる立場になってもその免疫があったので、「私も言われるようになったんだ」という感じで、もちろん「ひどいな」と思うことありましたが、あまりへこんだりすることはなかったです。
批判する人たちはもし私がアイドルを辞めても喜ぶわけではなく、私の話をしなくなるだけだと思っているので、マイナスの意見は取り込まないようにしています。落ちこむよりも応援してくださるファンの方を信じて、恩返しのために気持ちを使いたいと思います。
――14年強のキャリアを振り返ってみて、自分にとってのターニングポイントは?
柏木:肩の荷が降りたのは、2017年に「AKB48選抜総選挙」の立候補を辞退してからでした。頑張り過ぎていた気持ちが少し楽になって、「本当にやりたいことや楽しいことをやっていこう」と切り替えられたから今まで続けられたのかもしれません。
あとは昨年からはじめたYouTubeチャンネル(2020年2月開設「ゆきりんワールド」)で、素の私というかパーソナル部分を発信できるようになってから、「新しくファンになった」という方からたくさんコメントをいただくようになって、風向きが変わった気がします。今はこうしたインタビューでも、素直な思いを真剣にお話すればちゃんと伝わるんだと自信を持てるようになりました。
■ずっと“アイドル”という括りにこだわっていきたい
――もはや、アイドル界では名実ともに“ベテラン”の域にさしかかっている柏木さんの「理想のアイドル像」を教えてください。
柏木:最初は「有名になりたい」「ファンを増やしたい」と頑張っていたので、たくさんの方に応援してもらうのが“アイドル”という気持ちがありました。でも、長くやってきからこそ、応援してくださる方に「きちんと何かを返したい」と思うようになってきて。今は、私のことを支えてほしいといった気持ちではなく、ファンのみなさんにできるだけ楽しいことやうれしいことを提供したいという気持ちです。
私もアイドルファンをやっていて、その時代を今でも宝物のように思っているんです。だから私を応援してくださっている期間を誇りに思ってもらえるような活動をしたいですし、ブレずにアイドル活動し続けることで、私も応援してくださった方々を肯定したい。ファンのみなさんが誰かに「何で柏木由紀が好きなの?」と聞かれたときに、その理由をたくさん話せるようにするのが今の私の目標です。
――最後に、AKB48の卒業時期や今後のキャリアについてどう考えていますか?
柏木:ここまでやってきたからにはAKB48を嫌になって辞めようとは思わないし、むしろ楽しいことやグループで達成したい目標もあるので、今は卒業を考えていません。卒業を考えるとしたら、個人でやりたいこととグループのスケジュールが調整できなくなったとき。あとは、結婚や出産でライフステージが変化するとか、それぐらいしか思い浮かびません(笑)。
個人としては、ずっとアイドルという括(くく)りにこだわっていきたいです。ステージに立つのが好きで歌も続けたいし、演技もバラエティもグラビアもいろんなお仕事が好きなんです。
柏木由紀のソロシングル「CAN YOU WALK WITH ME??」は、3月3日発売。