長瀬智也が主演する金曜ドラマ『俺の家の話』(TBS系/毎週金曜22時)が、今日3月26日にいよいよ最終回を迎える。長瀬、そして脚本の宮藤官九郎と共に、数々のヒット作を世に送り出してきた本作の磯山晶チーフプロデューサーは、最終回を目前に「長瀬さんがジャニーズ事務所を退所する前の最後の作品となるので、現時点での最高傑作にしたいと思っていましたし、そういう意味で責任を背負っている感覚がありました」と本作への思いを吐露する。

撮影を通して改めて感じた長瀬をはじめとした出演者たちの魅力や最終回の見どころを聞いた。

【写真】長瀬智也、宮藤官九郎ら『俺の家の話』会見に集合

★年齢を重ね“いい男”に成長した長瀬 50歳、60歳になった姿も見たい「この作品が最高傑作とは言いたくない」

 本作は長瀬が演じるピークを過ぎたプロレスラー“ブリザード寿”こと観山寿一が、能楽の人間国宝である父の介護のために現役を引退し、長男として家族と家族に寄り添う女性ヘルパーと共に、一家をまとめていく、まったく新しい形のホームドラマ。長瀬×宮藤×磯山のタッグは『池袋ウエストゲートパーク』(2000年)、『タイガー&ドラゴン』(2005年)、『うぬぼれ刑事』(2010年・いずれもTBS系)以来、4度目となる。

 介護や家族を真正面から描いた本作は、多くの人がリアルに直面するであろう問題をコメディタッチに表現し、視聴者からも大きな反響を呼んでいる。磯山CPは「放送開始前は、介護というテーマは重いかなと思っていましたが、介護をされていない視聴者の方にも前向きに受け止めていただけることが多く、うれしく思っています。演者の皆さんが真に迫る、嘘っぽくない姿を演じてくださっているので、想像以上の作品になっていると思います」と語る。

 その役者たちの中でもひときわ輝きを放っているのは、やはり主演の長瀬だ。「まず、彼の役に対する早い段階からの準備、および完成度の高い仕上がりにすごく感動しました。実際に撮影が始まっても、毎回、宮藤さんの書いたセリフをどうすればより面白くなるのかをギリギリまで考えて、さまざまなアイデアを自分の体を使って試している姿が素晴らしいと感じています」と磯山CPは明かす。

 「宮藤さんと長瀬さんの相性が良いということはよく言われていますが、今回は特にそう感じました。長瀬さんは完璧主義なところがあって、ギリギリまで高い得点を狙うべく、どう演じればいいのかを考えています。長瀬さんが20代前半のときに『池袋ウエストゲートパーク』に出演してもらい、『タイガー&ドラゴン』では20代後半、そして今、42歳で本作に出演していますが、その時々に違う表現の仕方をされています。
ご本人は多分、あまり意識されていないと思いますが、彼の人生、自分の年齢に合わせてその時々の良いところや、それまでに積んだ経験を全部出してくれているのを感じます。この作品が『最高傑作です』と言ってしまうと、もうそれ以上のものがなくなってしまいそうなのでそう言いたくはないのですが、そうなればと思って作ってきました。でも、50歳の長瀬さんも60歳の長瀬さんも見たい。年齢を重ねるごとに、いい人間、いい男になっていると思います」。

 インタビュー時点では最終回の収録の最中だったが、磯山CPから見た長瀬の様子は「寂しくなってきたという感じです。西田さんと長瀬さんの第8話のお別れのシーンで、目と目が合うだけで2人とも泣いちゃうような、感傷的な感じ」もあるそうだ。★西田敏行戸田恵梨香ら芸達者ぞろいの現場 息子役・羽村仁成の演技も絶賛

 本作では長瀬のみならず、西田敏行、永山絢斗江口のりこ桐谷健太ら実力派キャストによる好演も光る。物語中盤からは寿一との恋にもスポットライトが当たり、清純さとかわいらしさで多くの視聴者を魅了しているさくら役の戸田恵梨香もそのひとり。「すごく難しい役を、魅力的なお芝居で見せてくれている」と磯山CPは戸田に絶大な信頼を寄せる。

 「さくらは、その場その場でいい顔をするスタンスの女性です。踊介(永山)に対しても嫌われないようにしていますが、そんな態度も戸田さんが演じると全然嫌味に見えなくて、とにかくかわいくて魅力的なんです。捉えどころのない魅力を体現してくださっていると思います。
第7話で、寿一とラーメンを食べるシーンで、彼らの会話はほとんどかみ合っていないのに、すごく甘い気持ちになれるのもすてきでした」。

 「西田さんは、お風呂のシーンが多いのもそうですけど、今の年齢の自分をさらけ出してくださっている。歌声から裸まで全部出してくださって…。長瀬さんと一緒のお芝居では生き生きとされていて、ほんとに長瀬さんのことを好きなんだと感じます。もちろん、もともと名優ですけど、乗りに乗った西田さんを見ることができてとても幸せですね」。

 さらに、学習障害という特性を持つ寿一の息子・秀生役を演じる羽村仁成の演技力も目を引く。羽村はオーディションを経て選ばれたキャストだそうで、磯山CPは「オーディションの時は、第1話で寿三郎(西田)と野菜の名前を言い合うシーンを演じてもらったのですが、彼はずば抜けて演技力が高かったんです。自分のセリフを言っていない時も役に入って演技を続けていたのは、彼だけでした」と振り返る。さらに磯山CPは、「本当に落ち着いて演技をしていて、頭もよく、すごく頼りになる人。13歳とは思えないほどしっかりしていますし、彼が秀生を演じてくれて本当に良かったと思っています」と絶賛。

 「9話で、寿三郎が危篤となって親族がベッドを取り囲むシーンでは、羽村さんが学習障害のことを勉強してきてくれたのを特に強く感じました。これまでにも、学習障害のお子さんを持った視聴者の方から、すごくリアルだという声をいただいています。
羽村さんが実際にどれくらい準備や研究をしてくれているのかは分かりませんが、動と静をうまく使い分けてくれていると感じました」。

 そんな魅力的な出演者たちによって、宮藤の描く物語はより一層の輝きを増している。放送は残すところあと1話。バラバラになってしまった観山家が再び集結、さらに絆を深めた彼らが今夜放送の最終回でどのような結末を迎えるのか期待が高まる。磯山は「最終回では、観山寿一がどういう人物で、観山家にとってどういう役割を果たしているのかがはっきりします。彼の生きざまが観ている方にとって良いものになるといいなと思っています。ぜひあらすじなどは見ずに、前情報を入れずに、まっさらな気持ちで観ていただければ」と見どころを語る。磯山CP自身、長瀬がジャニーズ事務所を退所する前の最後の作品ということもあり、“こんなんで終わりかよ”と思わせられないと責任感を持ちつつ制作にあたったという本作。長瀬が寿一をどう体現するのか。放送を楽しみに待ちたい。(取材・文:嶋田真己)
 
 金曜ドラマ『俺の家の話』最終回は、TBS系にて3月26日22時放送(15分拡大)。◆『俺の家の話』最終回あらすじ◆

 “俺の家の最後の話” ―忘れないで!家族の時間―

 グループホームを抜け出し観山家にやってきた寿三郎(西田敏行)は、3度目の脳梗塞で危篤に…。


 多くの門弟や家族たちに囲まれ、最後の時を迎えようとしていた寿三郎の前に、いままで正体を隠してきた寿一(長瀬智也)がスーパー世阿弥マシンとして現れる。そして「肝っ玉!しこたま!さんたま!」の掛け声で、奇跡的に寿三郎は一命を取り留める。

 そして寿一は新春能楽会で舞う予定の「隅田川」の稽古に励んでいた――。

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