表題曲で踊れるか――。欅坂46からの改名後、“全員選抜”から移行し、全曲参加の8人のメンバー“櫻エイト”と各フォーメーションの3列目メンバーで楽曲を表現している櫻坂46。
【写真】ポジションへの本音を明かした櫻坂46・上村莉菜、井上梨名、幸阪茉里乃
■「悔しさ」や「焦り」自身のポジションへの本音「グループの歌番組も見られなかった」
――デビュー作の表題曲「Nobody’s fault」は、フォーメーション発表の様子をレギュラー番組『そこ曲がったら、櫻坂?』(テレビ東京/毎週日曜24時35分)で放送していました。今回、表題曲「BAN」のフォーメーションは、どのように聞いたのでしょうか?
上村:前回と同じように、1つの部屋に集まって一人一人の名前を呼ばれました。
井上:違いは、前作のフォーメーションを発表してくれたハライチの澤部さん(『そこ曲がったら~』MC)がいないくらいでした(笑)。
――改名以降、楽曲のフォーメーションはファンの間でも関心を寄せるトピックに。前作の発表時、ブログで「表題曲に参加できなかった事に対し、悔しい気持ちもあります」と書いていた井上さんは、今回、表題曲「BAN」のメンバーとなりました。結果については、どう受け止めましたか?
井上:前作で、ファンの皆さんから「表題曲に入れたらいいね」という声をたくさん頂いたし、今回は「おめでとう」と言ってもらえたから素直にうれしかったです。でも、最終目標が表題曲の3列目ではないので、頂いたポジションにも、グループの現状にも満足してはいけないと思いました。
――さらに、前列へ行きたい気持ちもありますか?
井上:そこは自分の中でも難しいとも感じていて。いろいろなメンバーがいて、それぞれにいいところがあるから、どのメンバーが前にいてもいいと思っているんです。
――前作から今作にかけて、気持ちの変化はありましたか?
井上:前作では、表題曲に入れるかどうかで、テレビで歌う機会も変わってくるし、見られる機会も変わってくるという悔しさもありました。でも、自分にとっての目標は、表題曲に入るのがすべてではなかったから。こだわり過ぎていたと気が付いたんです。活動を続けるうちに、自分がやりたいこと、どう自分を見せたいかに視点を変えるようになって。結果へ執着するのは負担になるから、日々、楽しむことを第一にと考えるようになりました。
だから、今は、何でもポジティブに捉えようって。今作までの間に私が「悔しい」と話す場面を見てくれていたスタッフさんから「見ている人はいるよ」と励まされたこともありました。クヨクヨしている暇があるなら、まずは、楽しむ。楽しんでいる姿を見るのがファンの方も一番うれしいと思うし、それを大事にしようと思いました。
――上村さんは前作に続き、惜しくも表題曲のメンバー入りとはなりませんでした。正直、選ばれたい気持ちはありましたか?
上村:もちろん、ありました。
前作のフォーメーション発表後は、自分が出演していないグループの歌番組も見られず、表題曲だった「Nobody’s fault」も聴けなかったんです。しばらくは、表題曲入りしたメンバーのブログも見られなくて。ブログで、みんながMVの撮影や歌番組への出演で楽しそうにしている姿を見るのも苦しかったです。
――その後、気持ちは晴れたのでしょうか?
上村:はっきりとした区切りはないんですけど、時間が経って…。櫻坂46のデビュー日(1stの発売日)に、表題曲のメンバーが『2020 FNS歌謡祭 第2夜』(フジテレビ系)に出演したのを、出演していないメンバーと一緒に見てから、かな…。自分が参加していないからこそ、見られた気がして。何も知らないからこそ、メンバーとしてではなく、ファンのような気持ちで見られるようになりました。
――前作からグループのシングルに参加した幸阪さんは、表題曲のメンバーへ入りたいと思っていましたか?
幸阪:高望みはしてないと思っていたけど、今作では、同期の大園玲ちゃん(「Nobody’s fault」でも表題曲メンバー)や守屋麗奈ちゃんが選ばれたので、尊敬しつつ、差が付くことへの焦りもありました。表題曲のメンバーに選ばれるとテレビ番組へ出る回数も変わってくるし、自分よりもすごい人たちなんだなって。
――今作に向けて、表題曲に選ばれるための努力をしていましたか?
幸阪:パフォーマンスでの表情とか、ダンスがうまいメンバーの動きを研究するために動画を見ました。個人的には、一期生の小林由依さん、同期の森田ひかるちゃんや藤吉夏鈴ちゃんが上手だなと思うメンバーで。私とは何かが違うはずだし「こう動けばカッコよくなるのか」と思っていました。
――今作では、カップリング曲の3列目に選ばれました。ポジションについては?
幸阪:私は、前作とポジションがまったく同じなんです。でも、変わったこともあって。前作では仲のいい同期の増本綺良ちゃんとシンメトリー(対になるポジション)だったけど、今回は綺良ちゃんが1つ内側に入ったので焦りました。正直、仲間だと思っていたから(笑)。■体当たりで挑んだ「BAN」収録曲MVの裏側
――さまざまな思いが詰まった最新シングルの「BAN」。そのうち、MVが公開されている3曲について撮影時の感想を伺います。まずは、森田ひかるさんセンターの表題曲「BAN」に参加の井上さんから。
井上:一番苦労したのは、水辺で踊った最後のサビのシーンです。寒かったから体調管理も気を付けなければいけないし、日中の限られた時間で撮り終えるのも大変でした。映像を見てもらうと分かるんですけど、足元だけに水を張っているからといって、そこしか濡れてないわけではないんです。躍動感を表現するために全身をわざと濡らしたので、水を含んで重たくなった衣装のまま踊る必要があって。水しぶきを上げるために蹴り上げたりして、パフォーマンスの激しさと寒さとの戦いでした。ブーツのヒールが取れてしまうメンバーもいるほど気合いを入れたので、注目してほしいです。
――上村さんは、藤吉夏鈴さんセンターの「偶然の答え」に参加しています。
上村:歌詞を表現するために「悲しみとか切ない感情を出して」と言われたので、表情をとにかく意識しました。でも、一番思い出に残っているのは、撮影現場の寒さです。衣装を着ていないと思うほど寒かったんです(笑)。欅坂46の時代に、体を満足に動かせないほど寒かった「不協和音」の撮影や、水をわざとかけられる「エキセントリック」の撮影を経験していたはずなのに、同じくらい凍えて。みんな、寒くて体も縮こまる環境で撮っていたけど、出来あがった作品を見たら、夏鈴ちゃんが満面の笑みでパフォーマンスをしていたので「すごい」と思いました。
――山崎天さん(崎は正式には「たつさき」)がセンターの「思ったよりも寂しくない」に参加した幸阪さんは?
幸阪:メンバー同士で遊んでいたり、楽しそうな振り付けが多いので、自然に湧き出てくる笑顔を意識しました。あと、撮影現場で印象的だったのは、靴ずれかな(笑)。
井上:櫻坂46あるあるです。MV撮影の靴ずれ(笑)。
幸阪:(笑)。全力疾走するシーンが多かったので、みんな痛がっていたんです。パフォーマンス中は何も感じずに楽しめたけど、カメラが止まると足が痛んでしまって。でも、完成した作品では、メンバー同士がビデオカメラでお互いを撮り合っていて、楽屋のように自然な笑顔をたくさん見られるので、注目してほしいです。
■3人の共通点は“アイドル好き”
――ここまでは楽曲のお話でしたが、皆さん個人に迫る質問もいくつか。まず、今日の上村さん、井上さん、幸阪さんの組み合わせは珍しい印象があるのですが、ズバリ、3人の共通点は?
上村:実はさっき話したんですけど見つからなかったです(笑)。
井上:私と(幸阪)茉里乃ちゃん、上村さんと私みたいなペアでのお仕事はあるけど、3人はなくて。
上村:2人での共通点はあるけど、3人だと…。
井上:ないってなるんですよ(笑)。あ、でも上村さんはアイドル大好きなイメージもありますけど、茉里乃ちゃんもアイドルソングをけっこう聴くみたいで。私もよく見るので、意外とアイドル好き同士かも(笑)。
上村:あんまりお互い言ってなかったし、どれほど好きかは知らなくて。だから、3人とも好きだと今日ようやく…。そこが共通点です!■後輩の井上、幸阪だからこそ分かる上村の“大人”な部分
――では、一人一人に迫る質問も。まず、井上さんは1月29日の誕生日で成人を迎えました。約2ヵ月が経ち、大人になった実感は?
井上:正直、17歳から18歳になったときの方が「誕生日!」みたいな実感があって。18歳から20歳にかけては「また1年が経った」くらいで、特別感もないです。
上村:うん、分かる。
井上:だから、もっと若いときの方が誕生日にワクワクしていたし、いろんな人から祝ってもらえた気もします。もちろん、今年の誕生日もメンバーや友達に祝ってもらったけど、大人になった実感はなくて。成人らしいこともしていないし、雑誌で振り袖の写真を撮影したくらい。中身は何も変わっていません(笑)。年下のメンバーも増えたからちょっとはお姉さんになりたいけど、グループでは年下の方だから、まだまだ甘えていたいです(笑)。
――精神的には、まだまだ子ども?
井上:どうなんだろう。精神年齢は…(上村に)低いですか?
上村:え~、最初からずっと大人だと思ってるよ。子どもっぽいなと感じたことはない。いい意味で(笑)。
――(笑)。今年、一期生の原田葵さんと二期生の大園さんも成人になりました。井上さん含めて、3人の中で一番の大人は?
上村:葵ちゃんと同い年なのか(笑)
井上:と、言われるんですよ(笑)。本当、いろんな人に。原田さんは小学生キャラが定着しているので違うのかな。この記事を見たら「コラッ!」と言われそう(笑)。玲ちゃんは同期だから「呼び捨てでいいよ」と言っても、あとから加入したので「井上さん」と呼んでくれるんです。だから、私の方がほんの少し大人かな(笑)。でも、まだまだ甘えたがりな3人です。
――井上さんが成人になった一方、幸阪さんも高校卒業の節目を迎えました。途中からはアイドルの活動も並行していたので、大変だったのでは?
幸阪:そんなに大変ではなくて。加入前(※2020年2月に加入)も高校生活を楽しんでいたし、ハンドボール部のマネージャーとして、部活終わりに友達とアイスを食べに行ったりしていました。加入後は自粛期間と重なっていたから、最後の年は6月に学校が始まって。マラソン大会がウォーキング大会に変わるとか、行事の変化もあったけど、先生に「行かなくてもいいよ」と言われたので大丈夫でした。
――学業との両立も苦戦しなかった?
幸阪:勉強せずにテストを受けても、高得点が取れたので。どの教科も合格点でした。
上村:すご~い! 何で(笑)。
井上:かしこい(笑)。
幸阪:かしこくはないです(笑)。
井上:単位が足りないと言っているメンバーもいましたから。
上村:出席日数が足りないとかね。本当すごい。
――幸阪さんの意外な一面が分かりました(笑)。最後に、上村さんも。グループの年齢順だと、一期生の渡辺梨加さんとキャプテンの菅井友香さんに次ぐ3番手。お姉さん組ながら、自分が子どもだと思う部分は?
上村:何だろう。1人で何もできないところですかね。1人では怖いから、どこにも行きたくないんです。怖がりだから、夜道も嫌いで走って帰るほど。病院へ行くとか、何か用事があっても明るいうちにしか出掛けません。
――例えば、1人で牛丼屋は行けますか?
上村:絶対に無理です! 1人で外食した経験もないです(笑)。
――(笑)。反対に、大人だと胸を張って言える部分は?
上村:メンバーからは「大人になった」と言われることが増えました。つい最近も、葵ちゃんに難しい言葉で言われたんです。「莉菜ちゃん、達観してる」って。菅井友香ちゃんもインタビューでよく言っているし、インタビュアーさんからも、ほかのメンバーが「上村さんが『大人になった』と言っていました」とよく聞きます。
――井上さんと幸阪さんから見た、上村さんの大人な部分は?
井上:先輩だけど、フレンドリーに接してくださるところです。二期生の私たちが加入したときも、最初に上村さんが先輩たちの輪へ入りやすいように話し掛けてくれました。メンバーみんながそう言ってます。
上村:そんな話してたの? うれしい!
井上:加入した頃、二期生の数人が「アンビバレント」で音楽番組へ出演したとき、上村さんが話し掛けてくれたと言っていて。あとから加入した茉里乃ちゃんたちも、上村さんと仲がいい印象です。今や、後輩の私たちがみんなで取り合うほどだから(笑)。私だったら、後輩がいても「どう話そうかな」と入り口を探ってしまうだろうし、気軽に話せる空気を出せるのは大人です。
幸阪:上村さんは、周りをよく見てくださっていて普段から、ちょっとしたことでも気が付いてくれるので安心感があるんです。泣いているメンバーがいたら寄り添ってくれるし、見た目の変化にも気が付いてくれる。私もふと「髪の毛伸びたね」と言われましたから(笑)。お姉さんだなと思います。
――上村さんなりに、意識してほかのメンバーを見ているんですか?
上村:たぶん、ファン目線だからです。みんなかわいくて、好きだから話し掛けるし、知りたいから声を掛けてしまうんですよ。泣いてたら「何で泣いてるんだろう」と気になるし、落ち込んでいる子には「どうしたんだろう」と心配になるから。思ったことを口に出してしまうので、何があったかすぐ聞きたくなっちゃいます(笑)。(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:ヨシダヤスシ)
櫻坂46 2ndシングル「BAN」は発売中。