乃木坂46の最年少メンバー、16歳の筒井あやめ。中学2年生、14歳の時に愛知県から上京してアイドルの世界に飛び込んだ。

そんな彼女が初めてグループを離れ、1人で挑むのが、パルコ・プロデュースの舞台『目頭を押さえた』だ。演じるのは写真家を目指し、東京への大学進学を夢見る高校生。筒井自身は、アイドルという新しい“舞台”へチャレンジするため、わずか14歳で親元を離れたわけだが、当時の思い出はどうだったのか――。筒井の“上京物語”を聞いた。

【写真】16歳とは思えないほど、大人びた表情も見せる筒井あやめ

■上京した自分だから「気持ちが分かります」

 筒井が女優の秋田汐梨とダブル主演する舞台『目頭を押さえた』は、伝統的に林業をなりわいとしてきた関西圏のとある集落を舞台にした群像劇。筒井演じる高校3年生で写真家を目指すため東京への大学進学を夢見る少女・杉山遼と、秋田ふんする従姉妹(いとこ)で同級生の中谷修子との関係性を中心に、彼女たちを取り巻く家族や教師たちも交えた人間模様が描かれる。

――『目頭を押さえた』は、筒井さんにとって初のグループを離れての仕事。舞台での主演も初めてですが、本番を控えた現在の心境は?

筒井:緊張と不安が大きいです。お芝居の経験は、4期生で出演した舞台『3人のプリンシパル』(2019年)以来ですし、メンバーのいない現場も初めてなので。でも、演技のお仕事には興味がありました。先輩方が出演された舞台や映画を見て憧れていたし、自分らしく精いっぱい頑張りたいです。

――伝統や慣習を守ろうとする集落で、その地に住む人々の死者との関わりなども描かれる本作。
物語に対しては、どのような印象を持ちましたか?

筒井:台本を頂いた時は、伝統のお話や身近にない言葉も出てきたので、難しそうな印象を受けました。でも、私の演じる遼ちゃんには写真家になる夢があり、それを巡って娘に対して“上京してほしくない”と思うお父さんと言い合うシーンなどは、リアルだなと思って。私も、中学2年生の時に1人で上京してきたので、気持ちが分かりました。

――筒井さんと遼。互いに似ていると思う部分は?

筒井:夢に向かって一途に真っすぐな部分は、似ているのかな。私も、一度決めたことは貫くタイプなので。幼い頃から、お姉ちゃんの影響で習い事に打ち込んでいて、書道やピアノ、そろばん、水泳、英語、ギターといろいろやってきたけど、段位とか、形になるものを残すまで突き詰めてきました。

気持ちを表に出せない部分も似ています。私もグループでは、ほかのメンバーに対して、言いたいことをなかなか伝えられなくて。でも、昨年12月の4期生ライブ(「乃木坂46 4期生ライブ2020」)から意見を出せるようになってきました。演出の関係で普段とは違う振り付けもあって、みんなでそろえなければいけないから積極的になれたのかな。最近も克服しようと頑張っています。


■「好きなようにやっていいよ」背中を押してくれた両親

――地方から上京しようと夢見る遼の人生は、筒井さんの過去とも重なります。中学2年生で、愛知県から東京へ。そのきっかけとなった「坂道合同オーディション」を受けた当時、家族はどんな反応をしていましたか?

筒井:遼ちゃんはお父さんに反対されてしまうけど、私の両親は「好きなようにやっていいよ」と背中を押してくれました。合格したときも、すごく喜んでくれて。審査中も、“オーディションの話は緊張しちゃうからあんまり話さないでほしい”みたいな、私の空気を察してくれていたのか、普段通りに接してくれました。

――とはいえ、上京するときはやはり心配されたのでは?

筒井:意外とあっさりしていました。一言「頑張ってね」みたいな。きっと寂しかったんだろうけど、あんまり見せないようにしてくれたんだと思います。

――ひょっとしたら、寂しさをこらえながら見送ってくれたのかもしれませんね。今回の劇中で、お父さんが遼に反対する気持ちは分かりますか?

筒井:分かります。私のお父さんも、きっと寂しいんだろうなって。でも、反対せずに送り出してくれたから。
ありがたいなと思っています。

――直接、お父さんにその気持ちを聞いたことはありますか?

筒井:ないです。恥ずかしくて聞けません(笑)。

――(笑)。中学2年生で地元を離れたとなると、当時の同級生は、どのように送り出してくれましたか?

筒井:一緒に卒業できないからと、思い出の写真をたくさん切り貼りしたアルバムをプレゼントしてくれました。中学校が大好きで、同級生たちともずっと一緒にいたからうれしかったです。ただ、実は連絡を取れなくなってしまって…。上京するタイミングでスマホが壊れてしまって、みんなの連絡先が分からなくなったんです。実家に帰るときもあるけど、今もまだ会えないまま。だから、寂しいです。■両親と毎日電話「ほんの数分間だけど、すごく大切な時間」

――地方から上京、乃木坂46へ加入してから約2年半。現在の活動を、家族はどう見守ってくれていますか?

筒井:熱心に応援してくれています。
私が出演したテレビ番組とか、常にチェックしているみたい。雑誌も読む用と保管用で何冊か買って、実家の私の部屋に保管してくれているんです。ライブの感想も聞かせてくれるし、4期生ライブでセンターを任せていただいた「命は美しい」や「僕の衝動」について「良かったよ」と言ってくれて。初めて選抜メンバーになれたときも、お母さんが「あやちゃんらしく頑張りな」と励ましてくれました。

――今なお、家族に支えられていると実感する瞬間は?

筒井:上京した当時から、毎日、電話していて。ちょっと話しているだけでも、声のトーンで気持ちの浮き沈みをくみ取ってくれるんです。私が落ち込んでいそうなときは「今日、どうしたの?」とそっと聞いてくれたり。お姉ちゃんはたまにですけど、お父さんとお母さんは仕事帰りに必ず連絡してくれます。ほんの数分間だけど、私にとってはすごく大切な時間です。

■“舞台仲間”清宮レイ&早川聖来へ

 筒井と同じく、乃木坂46の4期生である早川聖来も6月9日から舞台『スマホを落としただけなのに』に出演。清宮レイも、6月17日から舞台『3年B組皆川先生~2.5時幻目~』に出演する。同時期に、グループを離れて演技の世界へ挑む仲間に向けたメッセージをもらった。


★筒井あやめ→清宮レイ
レイちゃんとは、お互いメンバーがいない舞台が初めてなので「不安だね」と話し合っていました。でもレイちゃんの出る舞台は、面白くておかしい作品だと聞いたので、きっと大丈夫。レイちゃんは明るくて、ずっと笑顔で、元気なのが持ち味だから、“レイちゃんらしさ”全開で頑張ってください!

★筒井あやめ→早川聖来
聖来ちゃんは舞台をすでに経験(※)しているので、私にとっては先輩です。1人での舞台出演が初めてなので相談したら「そんなに重く考えなくて大丈夫だよ。絶対に楽しいから」と言ってくれて。お互いに舞台についていろいろと話し合いながら、頑張れたらなと思います。

※早川出演『スマホを落としただけなのに』は、2020年3月~4月に上演。しかし、コロナ禍の影響による途中での公演中止を経て今回、再演が決定した。

(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:ヨシダヤスシ)

 パルコ・プロデュースの舞台『目頭を押さえた』は、6月4日~7月4日に東京芸術劇場・シアターイースト、7月6日~7日に大阪・サンケイホールブリーゼ、7月9日に愛知・名古屋市芸術創造センターで上演。

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