元宝塚歌劇団花組トップスターで、2020年に女優としての活動を本格スタートした明日海りお。ドラマや舞台などさまざまな作品で輝きを放つ彼女が、冠番組のMCという、まったく新しい分野にチャレンジする。

宝塚退団から1年半が経った今感じる率直な思いを聞いた。

【写真】ほんわかした笑顔もかわいい! 明日海りお

◆“宝塚の人”も意外と普通だよ?と知ってもらえたら

 自身初の冠番組となるドキュメント・バラエティー、Huluオリジナル『明日海りおのアトリエ』(Hulu/毎週土曜新エピソード配)は、明日海が「美」「癒やし」「食」に関するさまざまなことにチャレンジ。心が豊かになるような《日常生活の素敵テクニック》や《オトナ女子の新たな世界》を学びながら、新しい“明日海りお”に彩りを加えていく姿を追う。

 番組に登場するのはほぼ明日海1人、進行、ロケ先での専門家とのやりとり、食レポなどすべて明日海が担当するという大役だ。

 「私の番組なんて見てくれる人がいるのかな、大丈夫なのかなって、最初はちょっと不安でした」と振り返るも、「企画の段階から、私の興味のあることややりたいことをたくさん聞いてくださり、それを上手に組み込んでくださったので、私も収録に行くのがすごく楽しくて」とほほ笑む。

 最高のコーヒーの入れ方や土鍋でのおいしいお米の炊き方を学んだりと、さまざまなテーマに挑戦。「毎回思っていたのと違ったなとか、思ったより簡単にできるんだなという発見がありました。粉から打ったおそばもすごくおいしかった!」と笑う。今回の挑戦以外にも、まだまだやりたいことがあるようで「(湯切りするポーズを見せ)ラーメン屋さんの修業とか、かっこよくないですか? 今回運動系はやっていないので、ボルダリングとかもやってみたい」と目を輝かせた。

 番組は明日海の《オトナ女子修業》のような印象も受けるが、自身にとっての“オトナ女子”を尋ねると「こういうお仕事をしていると、いろんな方に出会うじゃないですか。すてきなオトナ女子ってたくさんいらっしゃいますが、皆さん前向きですよね。周りのことも大切にできるし、状況を読むこともしながら、自分の意志や自分自身のことも大切にできる…。
そういうすてきな人がいっぱい周りにいるので見習っていきたいです」と明かしてくれた。

 連続テレビ小説『おちょやん』(NHK)、『青のSP―学校内警察・嶋田隆平―』(カンテレ・フジテレビ系)、放送中の『コントが始まる』(日本テレビ系/毎週土曜22時)など、芯をしっかり持ったキリッとした女性の役が続く明日海だが、宝塚時代には千秋楽終演後のあいさつで、劇場全体を柔らかい雰囲気に包むなど、もともとはほんわかしたキャラクターの持ち主。この番組ではそうした明日海の素顔を新しいファンにも知ってもらういい機会になりそうだ。

 「役を演じてないときだとこういう感じになっちゃうんです。それが果たして大丈夫なのかな~っていう感じなんですけど(苦笑)。でも、宝塚の人っていうと、独特のイメージが強いと思うのですが、意外と普通だよ?というのを知ってもらえたらいいかなとも思いますし。役の時はキリッとしていることが多いので、それとは逆転している、こうしたのんびりしたところも面白いなと思っていただけたらありがたいです」。◆宝塚退団から1年半 忙しい毎日の中で生まれた心境の変化

 宝塚を退団してからの1年半を振り返ると、どんな印象なのだろう?「お仕事もそうですが、オフでも男役として生活するのではなくて新しいことばかり。少しずつですけど、だんだん女性でいることに慣れてきている感覚が面白いです。髪の毛を伸ばすのも中学生ぶりくらいなので、あ、実はこんな髪型は似合わないんだ、こういうふうにしたらしっくりくるんだという発見があります」と語る。

 「最初はとっても恥ずかしくて、誰かに見られちゃまずいなって思ったりもしたスカートも、こういう丈は似合わないなとか、こういうほうが私らしいなとか、女性版の、新しいタイプの自分らしさを探している感じで楽しませていただいています。いつか振り返った時に、あのとき無理してたな、まだ全然男っぽいじゃんって思うかもしれないですけど、今しかない自分らしさを工夫して楽しめたらいいなと思っています」。


 ほぼ初挑戦といってもいい映像の仕事は緊張の連続だという。

 「まだまだ数作なので、100%緊張していないかと言われたら、舞台よりも緊張感はあります。でも、ようやく段取りとか分かってきて、監督が出される指示とかカメラマンさんが望んでいることを予想できたりとか、少しずつアンテナがにょきっと伸びてきた感じですかね。あ、アンテナって今の時代ないのかな? 伝わりますかね?(笑)」。

 「『おちょやん』に出演してから、街で『ルリ子さんの方ですか?』って声を掛けられたりしてすごくうれしかったですね。自分が愛して、共演者の方々やスタッフの皆さんと作り上げた役が、そうやって親しみを持ってもらえるのってこんなにうれしいことなんだな!と実感しました」と新しい経験を積み重ねる毎日だ。

 プライベートでも心境の変化が。「お仕事の良し悪しが次に関わってくると思うと、緊張の連続なので、プライベートの時くらい脱力しようと。いろんなことを後回しにしても“もういいや!”と思うようになりました」と明かす。「宝塚時代は本当にへたくそでしたね~。家に帰ってもずっとオンというか、役のことをずっと考えて興奮して、セリフの練習をしたり公演の音楽をかけたり…。寝る時以外はずっと浸っていたいという感じでした。
それがすごく好きだったんですけど、今は日によって取り組むものが違うので、一回頭をオフにして、“はい、次はこれ”ってちゃんと指示を与えてあげないとごっちゃになってしまう気がして…。ゆったり過ごしています」。

 そんな中、4~5月には『エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャル・ガラ・コンサート』に出演した。「宝塚出身の仲間たちと集うと何も気負わずに素の自分でいられる。自分がどんな人か知ってもらえているし、どういうふうに接したらいいかも分かっているのでとっても楽で。在団中はどんどん学年も上がっていき、自分がしっかりしなきゃ、引っ張っていかなきゃという気持ちがあったのですけど、今回は上級生の方もいらっしゃったので、子どもに戻って甘えやすいというか…。ちょくちょくこういう機会が欲しいなって思っちゃうくらい、一瞬どこでもドアで故郷に帰ってきた感じがしました」と楽しんだようだ。

 生き生きと楽しみながら充実した毎日を送る明日海だが、今後はどのような、女優、女性になっていきたいのだろう。「役者さんとしては、こういう役も面白いし、こういう役も合うなと思ってもらえるような、作品に必要とされるキャラでありたい。この人面白いなと思ってもらえる存在でありたいです。女性としては、今すてきな女性が世の中にいっぱいいらっしゃるので、いろんな方に出会っていろんなことを吸収して歳を重ねていきたいと思っています」。(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 Huluオリジナル『明日海りおのアトリエ』は、Huluにて毎週土曜新エピソードを配信(全8回)。

編集部おすすめ