女優、モデル、アパレルプロデュースなどさまざまなジャンルで輝きを放つ佐々木希。6年ぶりの舞台出演となる『醉いどれ天使』では、新境地ともいえる役どころに挑戦する。

最近さまざまなキャラクターを演じ、女優業にも意欲的な佐々木に、今の思いを聞いた。

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◆たくましく健気な女性に心ひかれる

 黒澤明監督が三船敏郎・志村喬という名優を迎え1948年に製作した日本映画史に残る伝説の作品を舞台化する本作。三池崇史が演出を務め、桐谷健太高橋克典高嶋政宏田畑智子篠田麻里子と実力派が顔をそろえる中、佐々木は、主人公の闇市を支配する若いやくざ・松永(桐谷)を陰ながら支える、同郷の幼なじみ“ぎん”を演じる。

――本作は6年ぶり2回目の舞台出演。オファーをお聞きになった時の印象を教えてください。

佐々木:うれしさと、ものすごく覚悟がいるなという気持ちでした。うわぁ、舞台!? 舞台、来た!って(笑)。6年前はまったく何も分からない状態で舞台に挑戦して、すごく不安や葛藤がありました。稽古中も本番もずっとドキドキして気が抜けないという感じだったのですが、会場が一体になる喜びや終わった後の達成感を知ることができたんです。その時の記憶は今もすごく鮮明に覚えていて、アドレナリンもすごかったので、またいつかやりたいなと思っていました。

――今回は、黒澤明監督の名作の舞台化となります。作品の印象はいかがですか?

佐々木:以前より黒澤明監督の作品は拝見していたのですが、『醉いどれ天使』は今回初めて拝見しました。
脚本も読ませていただき、「おもしろい!!」とかなり心を動かされました。人間のきれいな部分だけでなく、奥の奥の葛藤だったり、人間くさいところを描いていて。そういう作品も大好きで普段からよく見ているのですが、この作品の人間くささにもすごく心ひかれました。

――演じられる“ぎん”は、どんな女性でしょうか?

佐々木:ぎんは、戦争で足を負傷してダンサーになる夢もなくなって、故郷にも帰れず居場所もないから闇市の居酒屋で働いている女性です。ただ、映画からも脚本からも感じましたが、かわいそうには見えないと言いますか…。いろいろ抱えてはいますが、エネルギッシュで、たくましくて、でも健気な女性。明日はくるし、くよくよしていられないというぎんにすごく憧れますし、共感といいますかすてきな女性だなって思うんです。この作品に出てくる女性は、心が描かれているから、みんな本当にすてきなんですよね。
◆培ってきた経験や感情を生かせる女優業に喜びとやりがい

――今年に入って、映画『リカ~自称28歳の純愛モンスター~』では女性刑事、ドラマ『白い濁流』(NHK BSプレミアム)では新聞記者役と、これまでとはイメージの異なる役どころにも挑戦されています。

佐々木:そうなんです。これまではモデルなど華やかな役を頂くことが多かったのですが、最近は一本筋が通った、凛(りん)とした働く女性の役を演じるチャンスを頂けてすごくうれしいですね。

 女優というお仕事は、頭も使いますし、体力的にも朝から夜まで演じて大変な部分もありますが、すごくやりがいがあります。
台本を読んでいて心が動くこともそうですし、現場で相手役の方と目と目を合わせてお芝居したり、言葉で相手に気持ちを伝えたりすると、自分自身演じていて、感情が動くんです。それがすごく楽しいです。今まで生きてきた経験がいろいろな糧になっていて、それを生かせるお仕事だと思いますし…。喜怒哀楽などのいろいろな感情や、自分が今まで経験してきたものが引き出しに詰まっていて、それを出せるというのが魅力です。

――女優活動を始められて13年ほど経ちますが、思い出に残っている作品はありますか?

佐々木:う~ん。『さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~』かな…?(編集部注:2015年公開の映画。台湾の女性監督・チアン・ショウチョンがメガホンを取り、佐々木は永作博美と共に主演を務めた) 監督が日本の方ではないということもあり、心を重視して見てくださっていたので…。すてきな監督に出会えたことが財産となっていますし、永作さんとご一緒できたことも今でもすごく心に残っていて、忘れられない撮影でした。

――佐々木さんは今年で上京して15年の節目となります。振り返ってみるとこの15年は早かったですか?

佐々木:え!? もうそんなに経っていたんですね(笑)。長いな~と思う時もあれば、あっという間だったな~と思う時もありますが、今思うとやはりあっという間ですかね。上がったり下がったり、もがいたり苦しんだり、楽しかったりと、いろいろな経験をしましたが、結果それが今の自分を作っていると思うので、やっぱり早かったですね。


 私にとって故郷は、なくてはならないもの。秋田という場所があるから東京で頑張れますし、原動力になっていると思います。以前は頻繁に帰っていたのですが、今はコロナ禍で帰ることもできなくて。秋田に帰っておいしいものを食べている夢を見たくらい、求めているのだと思います(笑)。

――忙しい毎日かと思いますが、気分転換や支えになっている存在はありますか?

佐々木:やはり子どもですかね。すごく愛おしい存在。泣いている顔も笑っている顔もすごく愛おしく思うので、そういう存在がいることも頑張る糧になっていますね。子育ては大変なことも多いですが、子どもの成長はすごく楽しみですし、お仕事も子育ても楽しんで生きていきたいなと思っています。(取材・文:編集部 写真:高野広美)
 
 舞台『醉いどれ天使』は、東京・明治座にて9月5日~20日、大阪・新歌舞伎座にて10月1日~11日上演。※最新情報は公式サイトをご確認ください

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