唯一無二の光る演技で人々の心をわしづかみにする俳優の草なぎ剛。第44回日本アカデミー賞では最優秀主演男優賞を受賞し、その勢いは止まらない。
【写真】“栄一”吉沢亮との信頼関係を熱く語る草なぎ剛
◆慶喜を演じ切ったことは人生のターニングポイント
本作は「日本資本主義の父」とも称される渋沢栄一を主人公に、幕末から明治にかけて挫折を繰り返しながらも未来を切り開いていく姿を描く。草なぎは栄一が生涯慕う慶喜を演じる。
大河ドラマへの本格的なレギュラー出演は初。ここまで長い期間同じ役を演じることも初めてで、たくさんの良い思い出ができたという草なぎは、本作の撮影を「規模も時間もすごく大作。大掛かりで準備も必要ですし『すごいドラマだったな』と思います」と回顧。「出演できたことは、このような仕事をやる人間としてはとてもうれしかったですね」と喜びをかみ締める。
慶喜を約1年間演じ、撮影が終わってからは「じわじわ寂しくなってきた」そうで「1年やったから、ほっとして次のステップに進むかな?と思ったら、慶喜のミステリアスな余韻がすごくあって。2、3日は『寂しいな』と思っていました」となんともいえない感情に襲われたことを告白。慶喜を演じ切ったことには「集中を切らさずお芝居ができた、ということで大きな自信になりました」と胸を張り、「僕にとっても久しぶりのドラマだったので、人生のターニングポイントになっているんじゃないかな、という感覚があります」と特別な思いを明かす。
◆大河ドラマの現場から受けた刺激「まだまだ頑張らなきゃいけない」
周りから受けた影響も多くあった。
中でも栄一を演じた吉沢には特別な気持ちがあるようで「亮くんの今回の役ってすごく大変だと思うんです。せりふ量もめちゃくちゃある。僕は出ていない回も多くて、それでもあたふたしているのに、亮くんは毎回あんなに出てて、あんなにしゃべっててどうなってるんだろうな?って。彼はずっと台本を手放さずにやっていたんだな、と思っています」と近くで見ていたからこそ感じる吉沢の努力を語る。
そんな吉沢の役への向き合い方や本番での瞬発力を目の当たりにしたという草なぎは「すごく刺激を受けました」と告白。「お芝居ってもっともっと可能性ってあるんだな。亮くんを見て、『もう一度がんばるよ、亮くん!』そんな感じです」と、吉沢の存在のおかげで役者としての決意が新たになったのだと笑顔を見せる。
本作を通して最も楽しかったことにも「最後まで亮くんといれたこと」と吉沢の名前を挙げ「吉沢亮くんという素晴らしい役者さんと長くお芝居できたこと。渋沢栄一という大変な役を、彼が最後まで妥協することなく、自分の命を懸けて演じている。その近くにいられたことが、僕にとっても活力になりました。
さらに撮影中の吉沢との関係性については「僕の方が長く生きていて、一応先輩ではあるんですけど、役になるとそういうのは関係なくて。亮くんが今回の栄一にかける思いなどに僕も感化されました」とコメント。吉沢のまなざしが素晴らしかったとも話し「栄一のおかげで、本当に余計なことを考えずに、僕もすごくピュアなお芝居ができました」と満足げな様子を見せる。
◆吉沢亮は同志 役を超えた関係性に並々ならぬ思い
栄一と慶喜の関係は、主従関係がなくなっても晩年まで続いていく。終盤の撮影では、長い期間一緒にいたこともあり、2人の空気感が出来上がっていたと話し「これが大河ドラマの醍醐味(だいごみ)というか。僕の好きな家臣たちは死んじゃう人もたくさんいたけど、栄一と慶喜は生き残って同じ時代を歩いてきている感じがしました。言葉を交わさずとも2人の空気感ができているのがうれしかったです」と改めて2人の特別感を感じたようだ。
自分の中で静かに込み上げてくるものもあったとも振り返り「そこは役とかそういうものを通り越して、栄一も通り越して、亮くんを見ていました。『1年間僕たち、僕は慶喜で亮くんは栄一を楽しんできたね』って。同志として、最後は役を越えたもので亮くんと一緒に仕事ができたんじゃないかなって思います」と並々ならぬ思いを明かす。吉沢に今かけたい言葉を聞くと「やり終えたら絶対に自分の財産になるんじゃないかな。
終盤に描かれる慶喜については「慶喜が将軍を退いてから描かれることも珍しい」と話しながら「栄一が慶喜を慕って会いに来てくれるんです。一線を退いてからの2人の友情の裏側に隠れる男の哀愁というか、枯れていく感じがありますよね」と説明。慶喜にとって栄一と過ごした日々は輝かしいものであった、と目を細め「枯れていく哀愁の中に栄一との輝きを感じているところがあると思います」と語った。(取材・文:山田果奈映)
大河ドラマ『青天を衝け』は、NHK総合にて毎週日曜20時放送。BSプレミアム、BS4Kにて毎週日曜18時放送。