「餃子の王将」の大東隆行社長が射殺された事件で、なんと事件現場から遠い東京・新宿の歌舞伎町から「チャイニーズマフィアとのトラブル説」が聞こえてきた。

 同所で飲食店を営む元暴力団関係者F氏が「6年前に中国・大連の店にトラブルがあったときに仲介をしようとしたマフィアがいて、一緒に現地に行った」という話をしているのだ。



 F氏は十数年前に暴力団組織から抜けて飲食店経営を続けてきたが、長い歌舞伎町生活で「チャイニーズマフィアが、かなり力を広げていった」という街の変化も見てきた人物。その中でマフィアと関わりを持ち、風俗店経営などをしている在日中国人たちとも親しくなり、彼らが一時帰国する際は旅行気分で何度か同行していたという。

「俺はトラブル処理には一切関わっていないし、深い事情は聞いてないけど、餃子の王将が何かモメていた話は耳にしていた。6年前に歌舞伎町で風俗店をやっている中国人のCさんについて大連に行ったとき、人民路って通りにあった店に行った。Cさんはそこで店の奥のオフィスにいた現地の有力者らしき人と会っていたけど、4日間の滞在で毎晩、同じ人物と口論していて、結局『解決できなかった』と嘆いていたんだよ」

 このCなる人物は、元暴力団関係者いわく「日本と中国に関わるビジネストラブルの仲介をよくしていた」というのだが、2年前にビザの問題で帰国してしまい、現在は音信不通。当時、何があったかはわからずじまいだが、社長射殺事件に関しては以前からチャイニーズマフィア関係説が一部でささやかれており、実際に捜査官がそうした線でを調べていたこともわかっている。


 というのも、餃子の王将は2005年、中国・大連に出店し、一時は6店舗を経営も、その後は次第に縮小し、事件後の昨年、中国完全撤退を決めた中で現地有力者とのトラブルを抱えていたというウワサがあるからだ。

 撤退の理由は中国人の味覚に合わせられなかったことなどが指摘されていたが、日本企業が中国で事業をする場合、土地取得や認可などで役人へのコネが必要で、過去に中国興行を発表しながら開催数日前になって中止に追い込まれたK-1やプロボクシングなど、裏社会との交渉に比較的慣れている興行関係者でも現地有力者の説得に失敗したケースがあった。

 先の大連・人民路の店はCなる仲介人が出入りした翌年に閉店しており、我々の知らないところでなんらかのトラブルが持ち上がっていた可能性はある。中国に開店していた餃子の王将のいくつかの店舗は、現地の運営会社が解散したのに、メニューをほぼそのままに別名の料理店として運営が継がれるなど、妙な動きもあった。

 警察の捜査では、先ごろ現場にあったタバコの吸い殻から九州の暴力団関係者のDNAが検出され、社長の死に暴力団が関係した疑いが浮上中なのだが、現在までこの暴力団と餃子の王将の間にトラブルがあったことは確認されていないため、別の人物が暴力団に殺害の協力を依頼したという線は考えられる。

 事件を取材する関西紙の記者によると「大東社長は毎朝、早朝に会社付近をひとりで掃除することがテレビ番組で報じられていたことから、待ち伏せすることは容易だったとしても、25口径という日本にあまり出回っていない小型拳銃で至近距離から4発を急所に命中させ、さらに監視役と実行犯に分かれていたと見られる手口は、まさにプロの犯行。
日本人ならわざわざハイリスクな拳銃を用いずとも刃物で済んだ話と捜査官も話していて、外国人の関係を疑う声もたしかにある」という。

 社長射殺事件の捜査は現在も継続中でうかつなことは言えないが、ここ最近、日本では宝石や高級酒の相次ぐ盗難事件や中国密漁船の襲来で、警察がチャイニーズマフィアを想定した訓練まで始めているほど。いずれにせよチャイニーズマフィアへの警戒感は強まるばかりだ。
(文=片岡亮)