新潟県が、昨年同県産のコシヒカリとして販売された米をDNA検査したところ、約1割の商品に別の品種が混入していたことを発表した。
100%の新潟県産コシヒカリと確認できた商品は、68%にとどまった。
産地偽装は「夕張メロン」や「神戸ビーフ」、「信州味噌」などでも横行していて、農林水産省が対策に乗り出しているが、中でも米は「見分けがつきにくく一向に減らない」というのが関係者の見方だ。
「少し前に週刊誌でJA京都の米卸業者がコシヒカリに中国産米を混ぜているという報道があって、業者が反論する騒動になっていましたが、もっと身近なところで偽装はいくらでもあります。特にネット販売はひどい」(県消費者行政課の関係者)
その一例と疑われているのがネット上で「農家直売のコシヒカリ」、「魚沼地区の中里産」などとして販売していた滋賀県の業者だという。
「購入者から告発を受けて、いま調べているところですが、見た目からして明らかに新潟県コシヒカリではないです」(同)
この業者はネットオークションの「ヤフオク!」などで米を大量に販売している。購入者の男性を取材すると、なんと「この業者はクレームに対し、50万円の追加請求をしてきた」という。
「4,000円近くの代金を支払って送られてきた米は、袋に印字された検査証明書の欄がすべて空欄のままで、実際の米も明らかに魚沼産コシヒカリではなかったんです。そこで業者にクレームを入れたんですが、すると『代金未払いだ』とウソを言われ、追加で50万円の請求が届いたんです」(同)
そこで、この自称農家の業者を直撃してみたところ「そんなん急に言われてもわからへん」と、ふてくされたような口調でトボけたが、疑惑の部分を指摘すると「魚沼産のコシヒカリとは書いていない」と反論。その商品説明の一部には『魚沼地区の中里産、同等品の棚田産』とあり、魚沼地域の棚田米と勘違いしてもおかしくない紛らわしい文言となっていたが、業者は呆れるような言い分を述べた。
「ウチは魚沼産なんか売ってない。滋賀県産だ。発送地の欄にちゃんと滋賀県と表示しているから。
商品の発送地と品種は別のはずで、なんとも屁理屈のような回答だが、その「魚沼産と同等品」とする根拠を聞くと、こんな説明をした。
「同じぐらいの標高だもん。一緒ということで」
論理はめちゃくちゃ。そして、ついにハッキリ「滋賀県産」と書かなかった理由を打ち明けた。
「地元で、インターネットで売っているってバレたら、カッコ悪いから……」
客に対しいわれのない50万円を追加請求したことについても「言ってない。そんなことしてない」と否定していたが、メールなどで請求の記録に残っていることを指摘すると、「その人だけちゃうかな。50万円の話はその人だけだと思う」と妙な言い方で認め、さらに「買った客が精神異常者だった」とまで言いだした。
まさにトンデモ業者としか言いようがないが、厳しい規制がないからか、そのまま同様の販売は継続。こうしたずさんな米販売については農林水産省・規格監視室も「特にネット販売の食品表示偽装は増えている実感があります」と答えた。
ただ、購入者が実際に届いた商品に違和感を覚えるケースは全体の割合からいえば少数で、騙されたことに気付いていない消費者も多いという。
魚沼産のコシヒカリを作っている新潟県魚沼市の農家に聞いたところ「魚沼の生産量の30倍以上の自称『魚沼産』が出回っている。魚沼の田んぼの数を見てみろよ、と言いたい」と言っていた。
(文=藤堂香貴/NEWSIDER Tokyo)