観光客は「もう来ないで!」の大混雑。なのに、住民の人口が減っている。

京都市の建物規制の緩和方針検討をきっかけに、そんな京都市の実情が明らかになっている。

 京都市では、全国でタワーマンションなど高層建築の建設が盛んになった2007年に、新景観政策を実施。これによって、京都駅や四条烏丸などの中心地では、建物の高さを31メートル以内に制限。ほかの地区でも15メートル以内。もっとも厳しい地区では10メートル以内にして京都らしい景観の維持に努めてきた。

 この規制が実施される以前から、京都の市街地で高い建物を建築しようとすれば、騒動になるのが当たり前。
古くは1964年に建築された京都タワーの際にも論争になった。京都駅と並んで高い建物として知られる「京都ホテルおいけ本館」は94年に竣工したが、この際にも景観破壊だとして、大きな批判を浴びることとなった。

 建物を高くすれば、景観破壊として猛烈な批判を浴びるのが京都の常識。そんな中で、京都市が規制緩和を実施する理由は、住宅不足による人口減少への危機感である。

 というのも、京都中心市街地では観光客相手のホテルは急増しているものの、住宅は極めて少ない。例えば、京都市内で新築マンションを求めようとすれば、郊外でも東京都心と同程度の価格。
市街地には、そもそも新築物件などない。中古物件でも、市街地の物件は安いし狭いしで、ほかの大都市圏に比べて「そうだ、京都に住もう」と思ってもそもそも住むところを探すのが困難になりつつある。

「住宅はもちろんですが、オフィスビルも不足気味です。10月から観光客には宿泊する時に観光税が課されるようにはなりましたが、住民がいなくなってしまうことへの危機感は、ほかの都市よりも強いんです」(不動産業者)

 そもそも、狭い地域に繁華街が集まっていてコンパクトで暮らしやすいのが京都市のよい側面。ホテルばかりが増えて、住民がいなくなってしまっては、その利点も生かせない。

 高さ制限の緩和が実現し、人口が維持できるのかが、正念場になっている。

(文=ピーラー・ホラ)