部下とどう接していいかわからない、というのは古くて新しい悩みだろう。世代によって考え方やものの感じ方は異なる。

3歳違ってもちょっとした「ジェネレーション・ギャップ」を感じることがあるのだから、ひとまわり年齢が違えば相手が「異星人」のように見えてしまうものなのかもしれない。

ただ、職場で指示を出す側としては求めている結果がある。期待した成果がまったく出なかったり、見当はずれの成果物が出てきたりすることがあまりにも続くと「この人、人の話ちゃんと聞いてるのかな?」となり、最終的に「もうどう接していいかわからない」となりがちだ。

◾️シンプルな指示なのにその通りにできない部下

『「指示通り」ができない人たち』(榎本博明著、日本経済新聞出版)は部下が自分の意図したように動いてくれなかったり、なかなか仕事を覚えてくれずに困惑する上司のための一冊だ。

特に上司を困惑させるのが「ごく単純な仕事をお願いしたはずなのに、まったくできない」と「昨日までちゃんとできていたことが、突然できなくなる」というパターンだ。前者については、本書にこんな例が挙げられている。

上司はある部下に顧客データの入力を頼み、入力したらシュレッダーにかけるように指示した。ところが、数分後にチラッと見ると、部下はまだ入力していない顧客データの束をシュレッダーにかけようとしていたため、慌てて止めた。

「入力したら、シュレッダーにかけて」と頼んだのに、部下はいきなりシュレッダーにかけようとしていたわけだ。つまり上司の指示が部下に伝わっていなかったのである。それを指摘すると、部下は「そうでした、すみません」と言ったが、その後も「簡単な作業を頼み、それができたら他部署にその成果物を持っていくように指示したのに、成果物を持っていかなかった」「書類を3種類に分類するというシンプルなタスクがうまくこなせなかった」など似たような出来事が起こったという。要するに「ごく簡単な指示なのに、指示通りに動けない部下」なのだ。

本人に上司の話を真面目に聞く気がないのなら、上司としても諦めがつくというもの。ただ、本人はいたって真面目に仕事に取り組んでいるし、上司の話も真剣に聞いている。だから上司としても切り捨てる決断はしにくい。

こうした部下へ仕事を振るために、本書では「同時に複数の指示を出さないこと」をポイントとして挙げている。「顧客データを入力して」とだけ指示して、「シュレッダー」はそれができてから指示する、というわけである。

上司からすると「入力してから、シュレッダーへ」というシンプルな指示を理解できない人がいるとは想像もできないかもしれない。

しかし、そういった人は一定数いて、自分の職場にもいると考えた方がいい。

「社会人ならこのくらいはできて当然」というのも、「自分の指示内容を理解はできるはず」というのも、上司の思い込みに過ぎない。ただし、その思い込みを正すだけでは、上司は無駄にヤキモキさせられることが減るだけで、部下はあいかわらず指示通り動けないだろう。問題は上司だけでなく、やはり部下にもあるのだ。

・自分の力量に気づかず、「できる人」然としてふるまって迷惑をかける部下
・状況の変化に対応できずにすぐパニックになる部下
・モチベーションは高いのに、極度に仕事の覚えが悪い部下

こうした部下にはどのような問題があるのだろうか。マネジメントに携わる人にとって学びの多い一冊だ。

(新刊JP編集部)