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 「連載が始まって以降、同業他社から『いよいよ朝日さんも学会に魂売りましたか』などと皮肉を言われるようになりました。社内からも『なんでこんなちょうちん連載を始めたのか』と批判する声が上がっています」

 こう嘆くのは、朝日新聞出版の関係者だ。

「連載」とは、同社が発行する週刊誌「AERA」で昨年12月からスタートした「池田大作研究―世界宗教への道を追う」のことだ。筆者は元外務省主任分析官で作家の佐藤優。今年8月まで全35回にもわたって続く大型連載になる予定だ。

 驚くべきはその内容で、創価学会・池田大作名誉会長の「礼賛」が基本路線となっていることだ。

 佐藤氏は『池田大作全集』(聖教新聞社)などを引用しながら、池田氏の成育環境をたどりつつ、現在の思想に行き着くまでの端緒を探っていく。そのアプローチ自体はオーソドックスだが、出典はほぼ創価学会が発行した「公式文書」に限られている。

出典自体が池田氏を美化して描写している部分が多々あるがゆえ、佐藤氏の池田氏に対する評価もまた「過剰」になっている感が否めない。

 例えば連載1回目ではキリストやムハンマドと共に池田氏の名前が挙げられ、4回目では池田氏とキリストの弟子であるパウロを重ね合わせ、「池田の発想にはパウロに共通するものがある」とまで書く。常に肯定的な視点からしか池田氏の人物像が描かれていないのだ。これが「学会の広報誌のようだ」と批判される要因となっている。

 前出の朝日新聞出版関係者はこう語る。

「たしかに、過去に朝日新書から出版した佐藤優氏の『創価学会と平和主義』がヒットしたので、二匹目のドジョウを狙いたい気持ちはわかりますが、ニュース週刊誌を標榜する『AERA』がいち宗教団体のトップを褒めちぎるだけの連載を35回も続けるのは、ジャーナリズムの放棄と言われても仕方ない。

ただ、連載を始めてから低迷していた『AERA』の部数が回復基調のようなので、『毒まんじゅう』の効果はあるのでしょう。そのせいで、同じフロアにある『週刊朝日』やウェブニュースでも、今は創価学会の批判記事はダメという雰囲気が蔓延しています」

 4万部を割り込むことも多かったという「AERA」の部数が回復した背景に、池田氏を礼賛したことによる「学会パワー」があるのだとしたら、「朝日新聞出版が創価学会に魂を売った」というそしりは免れまい。だが、近年の佐藤氏が創価学会寄りの言論活動を展開しているのは周知の事実だ。

『創価学会を語る 佐藤優・松岡幹夫』(第三文明社)、『いま公明党が考えていること 佐藤優・山口那津男』(潮出版社)など創価学会系の媒体からも著書が出版されており、佐藤氏による「池田研究」がこのような批判を浴びることは想定できたはずである。朝日新聞出版は、なぜそうまでして創価学会にすり寄ることを決めたのか? その背景を親会社である朝日新聞の関係者はこう耳打ちする。

「上層部の1人が創価学会と昵懇だからですよ。

情報交換と称して、学会幹部とよく酒席を共にしていて、そこで懐柔されてしまったのでしょう。過去に、週刊朝日や『AERA』で学会に対する批判めいた記事が掲載されそうになると、その人物が止めにかかろうとしていたのはよく知られています。『AERA』編集長の方針というよりは、もっと上の判断で決まった話です」

 全35回の連載が終了した暁には、間違いなく単行本化されるだろう。書店の棚にまた新たな「池田大作礼賛本」が加わることになる。言うまでもなく、佐藤氏の著作そのものは労作である。また創価学会が世界平和を願うことは「礼賛」に値する。

ただ、雑誌ジャーナリズムを掲げる朝日新聞出版が一部の上層部による私的なつながりから、学会礼賛の片棒を担ぐのであれば、暗澹たる時代になったものである。