コロナが一段落し、途絶えていた海外アーティストの来日公演が続々と行われているが、チケット代の高騰が止まらない。
8月26日に有明アリーナで行われたビリー・アイリッシュの公演は、A席が1.5万円、S席が1.9万円、SS席が2.5万円。
邦楽アーティストのライブのチケット代が1万円を大きく超えることはあまりないが、洋楽ロックでは1万円超えなど当たり前。1バンドで夏フェス並のチケット代を取られることもめずらしくない。30年来のロックファンの男性はため息をつく。
「先日、KISSの最後の来日公演が発表されました。KISSは2019年にサヨナラツアーを行いましたが、“今回が本当に最後”とのこと。
11月にはガンズ・アンド・ローゼズがさいたまスーパーアリーナでコンサートをやりますが、こちらはSS席が1万9000円で、S席は1万5000円ですね。
かれこれ30年以上、洋楽アーティストのライブを見てきましたが、1990年代のチケット代は6000円前後、2000年代でだいたい7000~8000円でした。しかし2010年以降、1万円を超えるのが当たり前になり、2016年のQUEENの武道館公演はS席が1万6500円、2018年のポール・マッカートニーの東京ドーム公演はS席が1万8500円でした。
もちろん、チケットが売れているということは、経済原則に照らし合わせて価格は適正だということ。KISSの公演では40万円のチケットも用意されたという。日本は物価も賃金も上がらないのに、コンサートのチケット代ばかり上がる状況には驚かされるが、アーティスト側にもいろいろと言い分もあるようだ。コンサートプロモーター関係者はいう。
「まず、原油価格の上昇により、コロナ前から飛行機の運賃は跳ね上がっています。
また、日本では1990年代からほとんど物価が上がっていませんが、そんな国は日本だけ。海外は賃金も物価も上昇しているので、アーティストのギャラは着実に上っています。それは当然、チケット代に転嫁されます。
そして最も大きな理由は、サブスクの普及でCDが売れなくなり、アーティストはライブで稼ぐことが重要視されていることです。かつてはアルバムの売上だけで食べていくことも可能でしたが、今や音楽はタダ同然で聞けるようになり、アルバム制作に掛かった費用を回収する場所はライブ会場しかない。いきおいチケット代は高くなりますし、グッズも大量に作って、何とか収支を合わせているのです」(コンサートプロモーター関係者)
さらに追い打ちを掛けているのが円安だ。何せ年初には1ドル110円台半ばだったドル円相場は、先日には144円を記録。実に3割近くも下げており、それはダイレクトに洋楽ファンの財布を直撃している。
「先日、音楽関係者の間で話題になったのが、ビリー・アイリッシュの来日公演(※先述)です。
海外アーティストへのギャラはドルで払うので、契約してからライブをやるまでに円安が10円も20円も進めば、払う額は何百万円も変わってしまう。下手したら儲けが円安で吹っ飛ぶこともあり得るわけで、リスクヘッジのためにチケット代が高く設定される状況はしばらく続きそうです」(音楽ライター)
さらに、こんな指摘もある。
「邦楽のフェスなら1日で2万円前後、通し券なら1日あたり1万5000円前後で楽しめるのに、洋楽のライブに行くと1バンドで2万円近く取られるのなら、若者は邦楽のフェスを選ぶでしょう。
そもそも高額のチケット代を取る洋楽アーティストのファンはおおむね中高年ばかりですし、レコード屋は絶滅寸前で、洋楽に気軽に触れられるコンテンツもなかなかないので、洋楽離れは深刻です。下手すれば“洋楽”という単語さえ死語になりつつある。日本のアーティストは短期的には大歓迎な状況かもしれませんが、今後、日本の音楽シーンはガラパゴス化が一挙に進む可能性は大きいでしょう」(前出・音楽ライター)
ビートルズが来日したのが1966年のこと。それから半世紀以上を経て、海外のアーティストは再び“雲の上の人”になってしまうのかもしれない。
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