10月14日から公開されている映画『いつか、いつも……いつまでも。』は、変わらない日常(いつか)に訪れた、ちょっとした変化(いつも)が、かけがえのないもの(いつまでも)に変化していく気持ちのグラデーションを繊細に描いた、ちょっと変わったラブストーリーだ。
主人公は高杉真宙、ヒロインは関水渚。ひょんなことから始まった“ひとつ屋根の下”で芽生える、2人の小さな恋の物語。なんだか懐かしくて、なかなかストレートな恋愛。
無邪気というか、空気が読めないというべきか。関水演じる天真爛漫なヒロインも少女漫画的だったりして、コメディ要素も多い。
そんな空気感が、どことなく一時期の韓国映画やドラマに似ているのだ。2000年~10年代にかけての韓国ドラマといえば、日本でいえば80~90年代の、恋愛ドラマ全盛期のちょっと懐かしいテイストに似ている作品も多く、それが一周回って、日本に帰ってきたと思わせてくれる(そういったテイストの恋愛映画が過去の産物と思えてしまうのも、悲しいことではあるのだが……)。
というのも本作は、『8月のクリスマス』(2005)、『西の魔女が死んだ』(08)、『少女たちの羅針盤』(11)でタッグを組んできた、監督・長崎俊一と脚本家・矢沢由美の映画。『8月のクリスマス』は、韓国映画『八月のクリスマス』(1998)の日本リメイクだったこともあって、本作にもどことなく韓国ドラマのような雰囲気があるのには、そういった背景があるのかもしれない。
【ストーリー】
海辺の診療所で、祖父と共に働く医者の俊英(高杉真宙)。
“空気の読めない人”たちのアンサンブル・ホームドラマ
“一つ屋根の下”で男女が暮らす中で、互いに惹かれ合っていく……一時期の韓国ドラマのようなテイストもある今作だが、他にも注目すべき点がある。それは、主要な登場人物のほとんどが“空気の読めない”キャラクターに設定されていることだ。
主人公・市川俊英(高杉真宙)は、自分では“空気が読める”と思っているが、恋愛においては極端にそれが機能しないことから、奥手になっている。そして、ヒロインの関口亜子(関水渚)の空気の読めない行動や発言が、見事なまでに豪快に、周りをかき乱す。
亜子にはイラっとする部分もあり、清々しい部分もあったりもするが、彼女が俊英のプライバシーに踏み込んでくるとき、思わぬ変化が生じる。
他にも、やたら首を突っ込んでくる家政婦のきよ(芹川藍)や、他人の意見など求めず、自分の思ったことをマシンガンのようにしゃべりたいだけしゃべって去っていく叔母の秋子(水島かおり)など、“空気の読めない”人々が登場し、コメディ色を強くしている。
本作を正真正銘のコメディとして観ると、正直言ってそこそこ。
“空気が読めない”からこそ、他人の境界線にズケズケと入り込んでくるヒロイン。相手は戸惑いを隠せず、怒りすら覚えるものの、時にはそれに救われ、癒されることだってある。そんな“空気の読めない”人の効能が、存分に詰まった作品ともいえるだろう。
自分に正直に生きることで、他人を傷つけることがあるかもしれない。しかし、他人のためだけに、自分を偽り続けて生きるよりも、他人を傷つけてしまうかもしれないことは一瞬忘れて、時には自分の思うまま、正直に突き進むことも必要なのかもしれない。それがきっと、相手を救うことになる可能性だってあるのだ。
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『いつか、いつも……いつまでも。』
2022年10月14日(金)より全国公開
監督:長崎俊一
脚本:矢沢由美
音楽:江藤直子
出演:高杉真宙、関水渚、水島かおり、小野ゆり子、DJ松永(CreepyNuts)佐藤貢三、中島歩、江頭勇哉、芹川藍、石橋蓮司ほか
制作プロダクション:オフィス・シロウズ
配給:バンダイナムコフィルムワークス
製作:バンダイナムコフィルムワークスギャンビット
©2022『いつか、いつも……いつまでも。』製作委員会
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