King & Princeの新曲「ツキヨミ」は、ラテンフレーバー溢れる大人の1曲に仕上がった。ジャニーズにおいてラテン系の楽曲はもはや伝統芸であり、古くは近藤真彦「アンダルシアに憧れて」がその代表格として後輩メンバーに脈々と歌い継がれている。
「ツキヨミ」もそんな哀愁ラテンの系譜に連なるものだが、サウンドアプローチはひと味違い、ここ数年のグローバルポップにおけるトレンドであるレゲトンの要素が感じられる。レゲトンという音楽ジャンル自体は1980年代から存在するものの、2017年にルイス・フォンシがダディー・ヤンキーと共に「Despacito」を大ヒットさせたあたりから新たな潮流が生まれ、全米の音楽チャートを席巻していった。
「ツキヨミ」の場合はよりダンスナンバーとしての強度が高く、「ムーバトン(Moombahton)」のリズムを踏襲した仕上がりと言えるだろう。ムーバトンは、2009年発表のシルヴィア・エコモ&チャッキー「Moombah(Afrojack Remix)」のBPMを落としてみるとレゲトン風になった……という逸話から広まったジャンルで、「Moombah」にレゲトンのトンを合わせたことからこう呼ばれている。代表的なところではメジャー・レイザー&DJスネーク「Lean On(feat. MØ)」(2015年)やジャスティン・ビーバー「Sorry」(2015年)のほか、K-POPのヒットソングにもよく使われているリズムだ。
「ツキヨミ」に限らず、今年のキンプリは以前に増して「攻め」のモードを打ち出していた。6月にリリースしたアルバム『Made in』のリード曲「ichiban」では、平野紫耀が母からの影響で好きになったというKREVAによるプロデュースが実現している。制作にあたっては、2017年にリリースされたKREVAの「神の領域」(アルバム『嘘と煩悩』収録)を楽曲イメージとして伝えたのだという。それを受けて作られた「ichiban」はトラップ系のビートが印象的なヒップホップナンバーで、上昇志向に満ちた強気のリリックと攻撃的なビートの親和性を楽しめる1曲だ。レコーディングにはKREVA本人が立ち会ったこともあり、フロウにも彼の影響が色濃く感じられる仕上がりとなっている。
KREVAラップの真骨頂と言えるのが、全文字を押韻するスタイルだ。
「ichiban」でも〈No.1〉に〈ただやる〉〈まさか〉、〈1番〉に〈一心不乱〉〈ウイニングラン〉〈Here we are〉といった巧みなライミングを、わずか5秒ほどの間にこれでもかとばかりに詰め込んでいる。リリックにおける無駄のない簡潔さは、サビを中心とした短い秒数でのインパクトが求められるTikTokでのバイラルヒットに繋がった一因でもあるだろう。(1/2 P2はこちら)
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アルバム『Made in』には他にも、Kroiが手がけたスペイシーなファンク「Last Train」や、軽快なホーンをフィーチャーしたポジティブなソウルナンバー「A Little Happiness」といった多彩なジャンルの曲が並んでいる。一方でキンプリらしい王道ラブソングやヒャダインによるノベルティ・ソングまでをも網羅した、振り幅の広さが印象的な1枚だ。
ジャニーズのグループは、デビュー曲が最初の数年間のパブリックイメージを作るといっても過言ではなく、キンプリの場合「シンデレラガール」で見せた王道ジャニーズ路線のイメージが世間的には強かっただろう。しかし、1stアルバムのリード曲にクールなファンクナンバー「Naughty Girl」を据えたあたりからしても、彼らは早くから随所で音楽的なチャレンジを見せていた。ドラマや映画、CMのタイアップ曲ではその世界観に寄り添いつつ、R&Bやヒップホップに接近した楽曲も年々増えていった印象がある。
また「Magic Touch」でのメルビン・ティムティム、「ichiban」「ツキヨミ」でのRIEHATAといった世界的ダンサーとのタッグも、彼らのレベルを更に押し上げることとなった。
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