2022年の櫻坂46を一言で表すことは難しいが、あえて表現するとするならば“激動”という言葉がしっくりくる。一番大きな出来事で言うならば、菅井友香の卒業に伴う、松田里奈のキャプテン就任だろう。
今年も残すところあとわずか。櫻坂46の22年の歩みを振り返ってみたい。
「流れ弾」快進撃からの「五月雨よ」
今年の櫻坂46は、フォーメーション1、2列目メンバー・櫻エイトを除いた3列目メンバー・バックスによる『3rd Single BACKS LIVE!!』から幕を開けた。同ライブは昨年10月にリリースされた3rdシングル「流れ弾」(21)のバックスが参加し、櫻エイトに劣らぬパフォーマンスを展開。
バックスライブとは銘打っているものの、櫻坂46には元来優れたパフォーマーがたくさん在籍している。「流れ弾」カップリング曲「ソニア」でセンターを務めた小池美波や、2ndシングル「BAN」(20)カップリング曲「思ったよりも寂しくない」のパフォーマンス時にセンターに立った増本綺良など、それぞれが輝かしいポジションで生き生きとしていたのが印象的だった。
今年も「流れ弾」から比較的短いスパンで、4月に4thシングル「五月雨よ」をリリース。本作で注目すべきポイントは、最年少の2期生・山﨑天がセンターに抜擢されたことだろう。これまでもカップリング曲「思ったよりも寂しくない」、「Buddies」(20)、「それが愛なのね」(21)などでセンターを務めてきた山﨑だが、彼女の無邪気な一面を映し出したかのような快活的な楽曲が多かった。しかし「五月雨よ」では、山﨑の表現の美しさが凝縮された、綺麗なメロディラインとダンスが特徴的。高速のファンクチューン「流れ弾」とはまた違う櫻坂46の表現の形が提示されている。
同作は「オリコン週間シングルランキング」で39万枚を突破するなど、売り上げを見てもまさに櫻坂46の勢いを裏付けるような楽曲にもなったのではないだろうか。
渡邉理佐、原田葵、尾関梨香の卒業
5月には櫻坂46の初期メンバーとして――欅坂46の1期生としてグループの中心にあった渡邉理佐が卒業。ファッション誌「non-no」(集英社)の専属モデルを務め、さまざまなファッションイベントに出演するなど、グループのファッションリーダーとしても活躍してきた。『櫻坂46 渡邉理佐 卒業メモリアルブック』(集英社)のインタビューの中で、渡邉は「確かに(欅坂から櫻坂に)改名をしてから、自分がもっと引っ張らなきゃ、もっとしっかりしなきゃという意識が強まった」と話しており、改名後、2期生がセンターを務めるなかで、常にフロントポジションで後輩たちを支えてきたのが渡邉だった。
彼女の偉大さは、5月に2日間の冠ライブ『渡邉理佐 卒業コンサート』が開催されたことも物語っている。これまでも渡辺梨加や守屋茜など多くのメンバーが卒業してきたが、既存ライブの1つのブロックとして卒業セレモニーが行われていたため、メインというわけではなかった。渡邉に最後に与えられた「僕のジレンマ」(22)は、まさに彼女の心の内を覗いているかのような楽曲で、卒業コンサートで本編のラストで披露された際には胸にくるものがあった。
そして少し時期はあとになるが、原田葵と尾関梨香も今年卒業。2人の卒業セレモニーが行われる予定だった『W-KEYAKI FES. 2022』はメンバーの新型コロナウイルス感染によって7月開催が中止となり、振り替え公演が8月19、20日の2日間にわたって開催された。
同ライブで最も感動的だったのは、卒業した渡邉の跡を引き継ぐように、親友の原田が「無言の宇宙」(21)を披露したことだ。原田の卒業という文脈も相まって、2人の絆が強く感じられた。
原田は加入当初はMC陣から「ごぼうちゃん」と呼ばれたり、中学生であることをいじられたりと、妹キャラ的な立ち位置だった。18年に学業への専念のため一時活動を休止した後は、インテリキャラとして『Qさま!! 3時間SP』(テレビ朝日系)に出演するなど、個性を発揮していった。
東京ドーム公演のアップデートされたパフォーマンス
8月には改名後初となる1stアルバム『As you know?』をリリース。リード曲「摩擦係数」では、森田ひかると山﨑のダブルセンターという初の体制が取られ、グループの中心を担う2期生メンバーが圧巻のパフォーマンスを披露しているのが見どころだ。櫻坂46の2年の総決算とも言え、アートワークに映ったメンバーの笑顔からは、櫻坂46の明るい青写真を覗かせている。
9月からは、同作をひっさげて全国ツアー『2nd TOUR 2022 “As you know?”』を開催。
東京ドームは1期生のメンバーの多くは経験してきたが、2期生はまだ未体験のメンバーも少なくなく、その意味でも櫻坂46のアップデートされたパフォーマンスを見せつけるいい機会となった。とはいえ、メンバーにとって改名から2年で東京ドームに立つということは大きな不安もあったようで、山﨑は「BUBKA 2023年 1月号」(白夜書房)のなかで「櫻坂46として東京ドームのステージに立つのは早いんじゃないか、と思ってました」と振り返っている。また、山﨑が同インタビューで「今回のツアーは『世界に通用するライブ』を大きなテーマとして、演出や音響、照明にこだわって、すべてのスタッフの方たちが私たちと息を合わせてステージを作り上げてきたんです」と語っていたように、東京ドーム公演では前半の5曲はペンライトなしでのパフォーマンスや後半のダンストラックなど、意欲的な試みがなされている。
全国ツアーでは、欅坂46時代からキャプテンとしてグループを引っ張ってきた菅井友香が卒業することを発表。もう一度東京ドームに立つことを目標としてきた菅井の晴れ舞台に、東京ドーム公演が実現したことはなんだか感慨深い。
菅井はまだまだ身体的にも精神的にも不安定だった時期にグループのキャプテンを任され、グループとしての方向性とメンバーの意向との間でもがき続けてきた。櫻坂46のスポークスマン的な立場を任されてきた菅井は、そうしたなかで、なかなか自らの本音を言うことができず、苦労したという。そのなかで、ライブのMCでも語っていたように、ファンの存在は大きな救いになっていたようだ。難しい状況のなか、ここまで紆余曲折しながらもグループが前進し続けてこられたのは、菅井のおかげと言っても過言ではない。
菅井からキャプテンを引き継いだのは、2期生で副キャプテンを務めてきた松田里奈。2
期生ながらグループをまとめる立場にいたことは決して簡単なことではなかったと思うが、1期生と2期生をつなぐ架け橋となり、グループのチームワークを向上させてきたのは松田の力だろう。一歩後ろに下がってみんなをまとめる菅井とは違って、松田はバラエティでもガンガン積極的に発言するし、自ら前に出ていくタイプ。菅井の卒業写真集『大切なもの』(集英社)で行われた菅井と松田の対談のなかで、松田は菅井を理想のキャプテン像に挙げていた。菅井のよいところをうまく取り入れつつ、松田には自分らしいキャプテン像を作り上げていってほしい。
『紅白歌合戦』落選から逆襲の2023年へ
順調に歩んでいると思われた矢先、『NHK紅白歌合戦』の落選が発表された。これまで櫻坂46として毎年出場してきた大舞台なだけに、ショックはひとしおだった。
キャプテンの松田は公式ブログで「私自身とてもとても悔しい思いでいっぱいです」という思いを明かしており、メンバーにとっても失望が大きかったようだ。ただ、櫻坂46の2022年を振り返ってみても、グループは着実に進化を続けてきたのは間違いなく、紅白落選を悲観する必要はまったくないだろう。
先日、日向坂46の4期生が発表された(関連記事)が、櫻坂46もまもなく3期生の加入が予定されている。小林由依は「三期生はこれからの櫻坂46を作っていく子たちだと思ってます。先輩として『こうしてほしい』と言うことはないので、自分たちで感じて、自分たちで選んで、自分たちで決断してほしいです」とメッセージを送っている(『BUBKA 223年 1月号』)。小林の言うように、3期生は櫻坂46の未来。グループの基盤を築いてきた1期生の卒業が続く中で、グループを継承していくのは2期生、3期生の役割だ。
2月には5thシングルのリリースも予定されており、おそらくこのタイミングで3期生たちも入ってきて、新体制が本格的にスタートするはずだ。2023年も、新しく生まれ変わる櫻坂46に期待したい。