11月30日、国民民主党の前原誠司代表代行(61)は記者会見を開き、離党、さらに新党「教育無償化を実現する会」立ち上げを表明した。
実はこの1週間前、前原氏はX(旧ツイッター)でこんな投稿をしているのだ。
<本人に確認することなく、この様な記事を書くとは。誤報です!(誠)>(11月24日)
引用したのは、地元の京都新聞。同日に採決される補正予算案に国民民主党が賛成すれば離党する意向を関係者に伝えたという内容だった。
一体、この手のひら返しは何なのか? 政治部デスクが呆れながら解説する。
「この投稿の前段で<補正予算の賛否を理由に、重大な政治決断をすることはありません。>とあり、離党はそれが理由ではないから、重箱の隅をつつくような”誤報”ではある。怒ったふりをせざるを得なかったのは、前原氏が合流を画策する日本維新の会も補正予算案に賛成する立場だったからです。ただ政界には『理由は貨車で後からついてくる』という言葉があるように、政治行動の理由なんてあってないようなもの。前原氏の人間の小ささは相変わらずでした」
前原氏は政界随一の「もっていない男」である。
スラリとした体躯、甘いマスク、松下政経塾仕込みの弁舌で、早くから頭角を現し、2005年9月、43歳にして民主党代表に。半年後の06年3月、民主党議員が、ライブドア事件に絡み、同社社長・堀江貴文氏と自民党幹事長・武部勤氏の間に不当な金銭の授受があったとするメールの存在を国会で追及。だがそのメールは偽物だったことが明らかになる。
やがて09年、民主党政権になると中枢に復帰。国土交通大臣になったのだが、八ッ場ダム(群馬県)建設中止を明言しながら実行できなかった。さらに外務大臣の時、京都市内の韓国籍の女性から毎年政治献金をもらっていたことが発覚。外国籍と認識しながらの献金で、明確な政治資金規正法違反。外相辞任に追い込まれる。前出・デスクが続ける。
「外相辞任直後、民主党代表選に出馬。政経塾の先輩・野田佳彦氏との決選投票にも食い込めず、敗退しました。政調会長に就いた際、民主党の”天敵”・産経新聞が、漫画『夕やけ番長』をもじり『言うだけ番長』という絶妙なネーミングをつけた。すると前原氏はこれに激怒して、産経の担当記者を記者会見に出入り禁止に。たいてい記者の『出禁』とは、事務所の出入りを指しますが、公の行事である記者会見では前代未聞。
17年9月、民進党代表に。山尾志桜里氏を幹事長に抜てきする方針を固めた直後、「週刊文春」(文藝春秋)が、山尾氏の不倫をスクープ。人事は白紙となり、山尾氏は離党した。
その間隙を縫うように、安倍晋三首相は衆院解散を断行。前原氏は、台風の目となった小池百合子東京都知事による「希望の党」に、民進党ごとの合流を決断する。政権交代の機運が高まったかと思いきや、小池氏の「(全員を受け入れず左派を)排除いたします」との発言で、希望の党への支持は急落。前原氏は代表をわずか2カ月で辞任し、やがて民進党は消滅するのだった……。
見事なまでの「疫病神」と言うほかないが、日本維新の会はそんな前原氏と組もうとしている。野党担当キャップが指摘する。
「党勢拡大で、政権交代を視野に入れる中、維新の現メンバーには大臣経験者がおらず、しかも”顔”になるのは吉村洋文大阪府知事くらい。要職を担ってきて、多くの国民が知る前原氏の存在は大きい。政権担当能力をアピールできるわけです」
さらなる旨味も。
「カネです。政党交付金の基準日は1月1日で、新党立ち上げをこの時期にしたのは紛れもなく、それ目当て。『教育無償化を実現する会』なるやる気のない党名にしたのも、消滅させることが前提となっています」(同前)
しかし、当の維新議員はこう危惧するのだ。
「大阪万博の費用負担が膨れ上がり、維新にかつてほどの勢いがない。国民の不信感は、2025年の万博スタートまで消えないだろう。それに維新内には、元民主党議員も大勢おり、前原氏は必然的に『非大阪組』のリーダー格になる。政治家は『運』も実力のうちだが、前原さんにはそれが無さすぎるからね。維新の『終わりの始まり』になるような気がする」
前原氏は維新の獅子身中の虫となりそうである。