木下優樹菜オフィシャルブログより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「『お互いに、第三者に話をしない』ということで解決させていただけないでしょうか?」木下優樹菜
『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ系、11月18日)

 若い方はご存じないと思いますが、昭和や平成中期、つまりネットが生まれる前の時代、週刊誌には「あの清純派アイドルのウラの顔」的な企画があり、「デビュー前はこんなヤンキーだったんですよ」という暴露が写真付きでなされていた。

当時の芸能事務所は、新人をデビューさせるにあたり、その子に「変な写真を持っている相手がいないか」をチェックしていたと聞いたことがある(これは現在でもそうかもしれないが)。

 しかし、芸能界には、元ヤンキーであることを隠さない人もいる。例えば、女優・飯島直子がその一人だ。その昔、『ウチくる!?』(フジテレビ系)に出演した際、中学時代に髪の毛を染めていたことを明かし、また「番長と付き合っていた」と、さらっと発言していた。11月13日放送の『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)でも、MCの明石家さんまに「番組から『昔の写真を貸してくれ』と言われても、(飯島の)昔の写真は全部特攻服を着ている」というエピソードを暴露されたが、否定していなかった。

 もう一人、ヤンキーであったことを隠さないのが、タレント・木下優樹菜。

番長を決めるため、同じ学校の生徒とタイマンを張ったが、負けて番長になれなかったことを、いろいろなバラエティーで明かしている。

 飯島や木下は、清純派アイドルとしてデビューしたわけでないので、隠す必要がないということもあるだろうが、この2人は「いいヤンキー」のイメージを「売り」にしていると見ることができるのではないか。「ヤンキーなので、違法薬物をやっていました」といった法律違反は、「悪いヤンキー」の例であり、それをテレビで告白したとしたら、番組にとっても本人にとってもマイナスでしかない。しかし、「精神性」についてアピールするなら、必ずしもマイナスイメージにはならず、「いいヤンキー」の例として、むしろイメージアップにもつながるだろう。

 例えば、木下は「ヤンキーはさみしがりだから、家族や仲間を大事にする」、飯島は「ヤンキーは上下関係を大事にする、好きな男に尽くす」とバラエティーでよく語っていたが、これはヤンキーのプラスの面だろう。目上を敬い、家族や仲間を大切にするのは、中世日本の「御恩と奉公」を連想させる。

また、「女は好きな男に尽くすべき」という考え方も、いまだに滅びていない。ファッションや行動は別として、ヤンキーの精神性というのは一種の保守であり、根強く日本に浸透しているだろう。うまく使えば「いい人」と思わせることができるのではないだろうか。

 飯島は結果的に、「元ヤンキー」というより「癒やし系女優」として地位を固めたが、一方の木下は、「ヤンキー」をうまく使ってステップアップしていったと私は見ている。家族を重んじる元ヤンキーとしての生きざまによるものなのかは不明だが、木下は、夫と子どもとの仲睦まじい姿をオープンにしている。インスタグラムのプロフィール欄には「娘にとって最高のMAMAだよ!!と思ってもらえたら、他に何を言われても聞こえないユキナ育」と、我が道を突っ走る育児を実践していると書かれており、これもまた、ヤンキーの精神性によるものと言えるだろう。

情報過多で、人の目ばかりを気にする人が増えている中、こういう木下の態度は新鮮だったのか、彼女のインスタグラムは、フォロワー数530万人を誇っている。

 また木下は、「木下組」と呼ばれるファンクラブの会員と、定期的に交流会を開いているそうだが、「夫が家事育児をしない」という悩みを抱えるファンに対し、「うちが旦那に電話しよっか?」と声をかけるなど、例によって「仲間を大事にする」スタンスでファンと交流していると、『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)で明かしていた。木下のこうした対応が、ファンの心をつかんでいるのではないだろうか。

 しかし、彼女の人気の要因でもあるヤンキー的なおせっかい、もしくは義侠心が仇になったようだ。木下と、木下の姉が勤務していたタピオカドリンク店店長のトラブルが明るみになり、大炎上が起こった。

 事の発端は、今年7月、木下がインスタグラムで「姉がタピオカ店を開いた」と宣伝したこと。

しかし、実は姉の店ではなく、単なる従業員だったらしい。同店のオーナーと店長は夫婦であり、店長にしてみれば、自分たちの店なのに「優樹菜の姉の店」と言われることは面白くないだろう。給料の支払いについても、姉と店長の間で意見の食い違いがあったようだ。

 姉の言い分だけを聞き、木下は怒り心頭になったのだろう。10月6日、インスタグラムでファンに向かって「店に行かなくていい」と投稿。しかし翌7日、木下が店長に対し、「弁護士立てて、法的処理、いくらでもできるから」「こっちも事務所総出でやりますね」「週刊誌に姉がこういう目にあったと言えるから」といった脅しめいた内容のダイレクトメッセージを送っていたことが発覚した。

フォロワー530万人の芸能人に「店には行くな」と言われたら、客が減る可能性はあるだろうし、店側にいやらがせをする人がいないとも限らない。木下の営業妨害と恫喝疑惑はネットでバッシングされた。

 義侠心が強いキャラでやっているのなら、この時にすぐにテレビで謝ってしまうか、店長にきちんと謝罪して「和解」をもぎとればよかったのだろうが、同9日、木下はインスタグラムで謝罪するに留めた。「週刊文春」(文藝春秋)によると、木下はその後、夫であるフジモンこと藤本敏史と母親とともに、店長宅に出向いたそうだが、店長には会えず、謝罪できていないという。この中途半端な姿勢がよくなかったのか、木下バッシングはやまず、とうとう11月18日に芸能活動を自粛することを発表した。

 まぁ、妥当な判断だと思われるが、ここでまた木下にとって不利な情報が出てくる。

木下はインスタグラムで謝罪した日に、店長に「今回の件については、お店のことも含め『お互いに誹謗中傷をしない』、『お互いに、第三者に話をしない』ということで解決させていただけないでしょうか?」と依頼するダイレクトメッセージを送っていたという。

 しかし、店長からすれば、一方的に文句をつけてきた人の和解案を受け入れる筋合いはないだろう。このダイレクトメッセージは関係者を経て、『直撃LIVEグッディ!』(フジテレビ系)に渡り、木下がこの炎上を必死に鎮火させようとしていることがバレてしまった。

 今回のトラブルの原因は、木下の早合点と一般人を下に見ていたことにあるのではないだろうか。人気芸能人と一般人では社会的影響力が違いすぎるので、一般人を軽んじても仕方ないが、現代にはSNSがあるということを忘れてはならない。SNSがあれば、週刊誌が相手にしないような人でも、自分の言い分を世間に訴えられるし、SNSは往々にして、立場の弱い人の告発の方が支持される傾向がある。SNSの時代に「ナイショ」は通用しないと思った方がいい。

 「いいヤンキー」を貫く気持ちがあったなら、お金を使うべきだったのではないだろうか。大事な姉のために、自分が出資して店を出してやるとか、今回のトラブルに関しても、早々に弁護士を立てて、先方に“お気持ち”を渡せば、事態は変わっていたかもしれない。少なくとも、弁護士が入れば、情報が洩れることはなかっただろう。

 「週刊女性」(主婦と生活社)によると、ヤンキーの先輩・飯島はホストと交際し、彼のために億ションやベンツなど3億円もの金額を貢いだそうだ。結局別れてしまったが、好きなもののためにカネを惜しまないのが、ヤンキー女の心意気なのかもしれない。謹慎中の木下は、もう一度ヤンキー道の原点に帰ることを考えてはどうだろうか。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。