北朝鮮の首都・平壌では先月16日、和盛(ファソン)地区第2段階1万世帯住宅の竣工式が、金正恩総書記の参加の下に行われた。

この高級マンション整備計画は、朝鮮労働党第8回大会で示された「平壌市5万世帯住宅建設構想」に従ったもの。

テープカットを行った金正恩氏は「わずか3年間に3万世帯をはるかに超える近代的な住宅を打ち立てた」と誇ったが、内部では不安の声も漏れている。

慢性的な経済難に加え、核兵器開発を巡る経済制裁が強まる中で建設されたマンション、とくにタワーマンションには、かねてから様々な問題点が指摘されてきた。そもそも北朝鮮の建築物は、建築資材の盗難や横流しのために手抜き工事が横行し、安全性の面で極めて重大な欠陥があるとされている。

そうした実態について、デイリーNKジャパンは、2016年に脱北した元朝鮮人民軍(北朝鮮軍)兵士から話を聞いいている。この元兵士は、平壌のタワマン街である「未来科学者通り」の建設に動員された経験があるという。

「未来科学者通りは金正恩が自ら旗を振った事業でもあり、当初は安全管理についても関係当局から厳しく指導されていました。

しかし、現場に供給されているはずの資材が足りないといったことが、次第に増えました。現場の監督には、その問題を追及する権限がありません。横流しは、もっと上の方(上層部)がからんでいたのでしょう。しかも、どんどん工期が迫ってくる。セメントと砂の混合比率や鉄筋の使用量が、上層階に行くほどいい加減になっていきました。北朝鮮で地震はほとんど起きませんが、いずれ何かの拍子に、建物がぜんぶ崩壊してもおかしくありません」

またこの元兵士によれば、現場では兵士や労働者の墜落事故が頻発したという。

平壌では2014年、これと同様の問題が原因となり、完成したばかりのマンションが崩壊。500人が犠牲になる大惨事があった。北朝鮮当局は従来、こうした事故を徹底して隠ぺいするが、このときは犠牲者の多くが朝鮮労働党中央委員会の職員家族だったこともあって、やむをえず公表している。

そのため北朝鮮国民の間では、タワマンへの入居を敬遠する雰囲気が強いとも言われる。