北朝鮮で、約1180万人が慢性的な飢えに苦しめられているとの分析が出た。
国連で北朝鮮の人権問題を担当するエリザベス・サルモン特別報告官は18日、国連人権理事会に報告書を提出した。
北朝鮮は、農業政策に力を入れ増産を図っているが、農業インフラの老朽化、立ち遅れた農業技術、投資や資材の不足、自然災害が複合的に作用し、供給が需要を満たすに至っていない。
WFPの報告書によると、北朝鮮より栄養状態が不良な国はマダガスカル、ソマリア、中央アフリカ、レソトの4カ国だけで、東アジアの平均栄養不良人口の割合2.5%と比べると極度に異常な高さだ。
報告書は、「北朝鮮が市場などの民間の商業活動を制限し、コメやトウモロコシなどの流通を国の独占に転換したことで、食糧難がよりひどくなった」とし、北朝鮮が近年進めている市場に対する抑制策を含めた食糧政策に問題があるとした。
(参考資料:収穫して間もなくコメ消滅…金正恩「失政」で飢える北朝鮮)
報告書は、保健や衛生面においても、改善が見られないと世界保健機関(WHO)の報告書を引用して指摘した。
WHOの挙げた耐性結核の高負担国30カ国の一つに北朝鮮が入っており、「栄養失調と真冬の寒さで結核が増加するとの報告がある」とした。
また、予防接種率も低下している。
新型コロナ前の2019年、全国の予防接種率は96%を超えていた北朝鮮だが、2020年1月にはコロナ対策で国境を封鎖。翌年半ばには接種率が42%以下に低下し、2022年に入ると、結核を含む主要な疾患の予防接種を受けた子どもが1人もいない状態になったとした。幸いにして、国連児童基金(UNICEF)の支援で昨年9月から、80万人以上の子どもと12万人の妊婦に対する予防接種を実施できた。
報告書はさらに、北朝鮮の52%の家庭で排泄物が汲み取り式トイレなど非衛生的な施設で行われているとした。
(参考資料:「道が糞尿まみれに」洪水で下水が逆流した北朝鮮の惨状)
報告書は「人権と経済開発、平和・安全は相互に関連している」とし、「利用可能なリソースを兵器開発や軍に投入する極端な軍事主義と国際協力の欠如が、北朝鮮国民の経済、社会的権利を悪化させる」と指摘した。