昨年12月以降、やや安定的に維持されてきた北朝鮮市場の穀物価格が最近上昇傾向に転じ、歴代最高値を記録した。 北朝鮮国民の負担がいっそう高まるものとみられる。

デイリーNKが定期的に実施する北朝鮮市場の物価調査によると、3月30日基準で両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市のある市場で、コメ1キロが9700北朝鮮ウォンで取り引きされ、2週間で15.9パーセントも急騰した。 デイリーNKが北朝鮮市場の物価調査を始めた2009年以来、最も高い価格だ。

平壌(ピョンヤン)と平安北道(ピョンアンプクト)の新義州(シニジュ)など他の地域のコメ価格も9000ウォン台半ばに跳ね上がった。 3月30日、平壌と新義州の市場でコメ1キロはそれぞれ9500ウォン、9510ウォンで取り引きされ、2週間前の調査時よりそれぞれ13.8%、13.2%値上がりしたことが分かった。

国内では豊作が伝えられ、ロシアから小麦も供給されているのに穀物価格はなぜ上がるのか。背景には、金正恩政権の「失政」があるとの指摘が出ている。

ウクライナ戦争への武器供給と派兵で密着の度を増している北朝鮮とロシアだが、この両国の協力では北朝鮮経済の改善には限界があると見る向きは多い。

一方、中国は朝ロの接近を嫌っており、北朝鮮との関係は冷めている。韓国統一省によると、北朝鮮の中国からのコメ輸入量は2023年の約28万トンから2024年の5万トンへと急減した。

北朝鮮は、ロシアとの協力拡大を見越してか、国民に対してしきりに「粉食」を奨励しているが、いままで主食でなかったもので、20万トン以上も減った中国米の穴を埋めるのは容易ではなかろう。

外交だけでなく、内政も上手く回っているとは言い難い。

市場に奪われていた穀物流通の主導権を国が取り戻すことで、穀物価格の安定を図るというのが金正恩政権の政策だが、価格が上昇していることを見ると、さほど順調に進んでいない状況が窺える。

日本政府ですらコメ価格の調整に四苦八苦しているのを見ればわかるように、「見えざる手」によって形成される穀物価格を、人為的に操作するのはそれほど難しいのだ。

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