北朝鮮とロシアの軍事協力が加速する中、北朝鮮当局は武器や弾薬などの軍需品生産を国家的優先課題として推進しており、それに伴い軍需工場の労働者には定期的な食糧や生活物資の配給が再開されている。一方、同じ地域にある一般工業工場では依然として配給が停止され、労働者間の生活格差が深刻化していると、デイリーNKの内部情報筋が伝えてきた。
平安北道新義州市にある731号、814号、115号などの小規模軍需工場では、これまで「下流工場」として配給の対象外とされてきたが、今年に入ってから月に2回、定期的な食糧配給が行われている。配給は労働者本人に1日あたり700g、扶養家族に300gを基準に15日分が支給され、本人のみでも月あたり約21kgの食糧が提供されているという。
加えて、これらの工場では食糧以外にも油、味噌、醤油などの調味料や、作業服、洗濯用石けん、作業靴などの生活必需品も供給されており、生活水準が大幅に改善されているとされる。消息筋は「以前は軍服や弾薬箱を作るような工場は、軍需といっても待遇が悪かったが、今はどんな小さな軍需品を生産する工場でも手厚く支援される雰囲気だ」と話す。
この背景には、ロシアへの武器供給を含む軍事協力の拡大があると見られており、北朝鮮当局が軍需産業を国家存続の柱と位置づけている実態が浮き彫りになっている。
北朝鮮製の弾薬はロシア軍に供給が開始された当初、暴発や不発などのトラブルが続発。背景には、劣悪な労働環境の中で資材の横流しがまん延していた実態があると見られる。
配給の改善は、こうした不正を減少させる対策でもあるのかもしれない。
一方、同じ新義州市内にあるパルプ工場やホーロー製品工場などの一般工業工場では、配給が何年も前から途絶えている。現地の労働者は「最後にトウモロコシの配給を受けたのがいつだったかも思い出せない」と語っており、慢性的な食糧難と生活困窮に直面している。
その結果、同じ地域でも所属する工場によって労働者の生活水準に大きな差が生じており、不満が広がっている。消息筋は「軍需工場に勤めているかどうかで生計が左右される。
北朝鮮当局は軍需関連の工場に優先的に資源を集中させており、住民統制と経済運営を「軍事優先」へと一層傾斜させている。こうした中、地域内でも労働者間の分断が進み、社会の不均衡が深刻化しているとの懸念が広がっている。