海外資本に開かれた特区を擁する北朝鮮の羅先市で、ロシアとの合弁貿易を手がけていた貿易会社の経営者夫婦が、国家財産の横領および違法行為の疑いで中央検察所の特別検査チームによる調査を受けていることが明らかとなった。本事件の波紋は大きく、羅先市内の複数の貿易機関にも緊張が広がっている。

デイリーNKの内部情報筋によると、問題の夫婦は過去7年以上にわたり、ロシア企業との合弁で事業を展開。その中で数百万ユーロ規模の資金を私的に蓄財し、一部をロシアの銀行口座に隠匿していた疑いが浮上した。今年5月、羅先市で実施された合弁事業に対する大規模監査の過程で内部告発があり、中央検察所はただちに特別検査チームを派遣した。

特別検査チームは羅先に到着するや否や当該貿易会社を家宅捜索し、会計帳簿や取引資料を押収。その後、6月中旬から下旬にかけて2度にわたる集中尋問を行い、今月初旬には正式に逮捕に踏み切った。この夫婦は現在、平壌に送致され、身柄を拘束されたまま捜査が続いている。

捜査によって、夫婦が貿易で得た収益の一部を個人名義の口座に不正移転し、税金の納付を逃れていた事実や、工場で生産した一部物資を羅先港から非公式に国外へ搬出していた実態も明るみに出た。

中央検察所は本件を、単なる個人の横領事件ではなく、「国家の外貨収入を長期的に損なう深刻な問題」として認識しており、関連する他の貿易機関にも捜査の手を広げている。これにより、羅先市内の貿易関係者の間には不安と警戒感が高まっている。

ある情報筋は、「今回の事件を受けて、羅先市内で合弁会社の整理事業が本格化しており、現在少なくとも4つの貿易機関が調査対象となっている」と証言。さらに、「今後は10年以上にわたって合弁事業を続けてきたすべての貿易会社に対して、特別監査が実施される見通しだ」と述べた。

国家が外貨獲得を重視する中で発覚した今回の事件は、経済部門における腐敗の深刻さと体制の脆弱性を改めて浮き彫りにした。

今後の捜査次第では、さらなる摘発や組織再編に発展する可能性もある。

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