![アイデンティティ主義がもたらす さまざまな不愉快な出来事の原因と解決策 [橘玲の世界投資見聞録]](http://imgc.eximg.jp/i=https%253A%252F%252Fs.eximg.jp%252Fexnews%252Ffeed%252FDiamond%252FDiamond_153534_1.png,zoom=600,quality=70,type=jpg)
著者のオマル・エル=アッカドは1982年にカイロで生まれ、ドーハで育ったのち98年に家族でカナダに移住、新聞社で調査報道に携わり、アフガニスタン戦争、グァンタナモ米軍基地、エジプトの「アラブの春」、米ミズーリ州ファーガソンで起きた白人警官による黒人少年射殺事件などの取材を手がけ、その後作家デビューを果たした。
この経歴を見ればわかるように、『アメリカン・ウォー』はたんなる近未来小説ではない。そこには中東での現在進行形の紛争の影が色濃く刻まれている。
中東問題は「文明の衝突」とは無関係の主人公はサラット・チェスナットという二卵性双生児の姉で、妹のダナ、兄のサイモンとともにルイジアナ州の沼沢地で暮らしている。父のベンジャミンはメキシコからの不法入国者、母のマーティナはアフリカ系アメリカ人だ。
労働許可をもらいに役所に出かけた父のベンジャミンが自爆テロに巻き込まれて死んだことで一家は困窮し、マーティナは3人の子どもをつれて「自由南部国」のひとつミシシッピ州の州境にある難民キャンプに移ることを決意する。