米ラーメン店の買収を断念した「ワイエスフード」一転、M&Aを加速的に推進

米国やメキシコでラーメン店を展開する米Tajima Holdings(カリフォルニア州)の買収を断念した、九州筑豊ラーメン「山小屋」を展開するワイエスフード<3358>が、M&Aを加速的に推進する方針を打ち出した。

2025年6月に公表した「今後の経営方針に関するお知らせ」で明らかにした。

駅ナカ、駅チカなどにも出店

このお知らせでは、企業価値の向上に向けて、M&Aを成長戦略の中核に位置づけ、積極的、迅速に推進するとしたうで、「国内外でシナジーの見込める有力ブランドや成長企業の獲得を進める」としている。

ラーメン業態で多ブランド化を進め、多様な客層の獲得や、客単価の向上、リスク分散などを実現し、収益基盤を強化するのが狙いで、多ブランド化することでブランド間の調達や製造、物流の効率化、商品企画の高度化などのシナジーを見込む。

また、多ブランド化に伴い同社の事業基盤である北九州エリア中心の店舗展開を見直し、他の地域での需要の開拓に乗り出すほか、現在の出店形態である郊外路面店だけでなく、駅ナカ、駅チカといった人口密集地の開拓にも着手する。

さらに、原材料調達、製造、調理、店舗運営、物流、保管、マーケティングなどの面で、同社事業の補完、強化につながる事業会社についてもM&Aの対象とする方針で、ラーメン店だけでなく、製麺工場やマーケティング会社、商社、物流会社などのM&Aに発展することもありそうだ。

海外ブランドの日本展開も

ワイエスフードは2024年9月に、Tajimaを2025年1月に買収すると発表。その後、買収条件の確認や手続きに時間を要したことから、買収日を2025年4月に変更した。

この間にTajimaの業績悪化懸念が浮上したことから、買収価格の見直し交渉を進めたものの合意に至らず、取引が中止に追い込まれた経緯がある。

同社では海外企業の買収を機に、グローバル化を進める計画を打ち出し、国際財務報告基準への移行や、同社株式の海外機関投資家への売却などを進めていたが、取引の中止によって、グローバル戦略やM&A戦略の見直しが余儀なくされていた。

「今後の経営方針に関するお知らせ」では、M&Aの積極化と合わせて、「グローバル戦略の再定義」として、海外出店と海外ブランドの日本展開を進める方針を明らかにした。

海外出店については、すでに進出している国での店舗拡大を中心に取り組み、新たな国については、経済成長が見込め、地理的、文化的に近い東南アジアを中心に出店を進める。

同社では市場規模の大きさや年齢構成の若さ、所得水準の高さなどで絞り込んだ結果、インドネシアやフィリピン、タイなどへの出店を想定しており、これらの国々では現地企業との連携なども検討する。

海外ブランドの日本展開では、現地有力飲食ブランドとの提携やライセンスの取得を行い、日本国内で店舗を展開する。

M&A、海外展開で競争が激化

ラーメン業界ではM&Aが活発化しており、2025年はすでに適時開示された案件が6件に達し、2024年(3件)の2倍となっている。

博多ラーメン「一風堂」を展開する力の源ホールディングス<3561>、ラーメン店「一刻魁堂」を展開する JBイレブン<3066>、京都背脂醤油ラーメン「魁力屋」を展開する魁力屋<5891>が相次いでラーメン店の買収を発表。

異業種からもローカルビジネスのマーケティング支援を主力事業とするCS-C<9258>、居酒屋の「磯丸水産」などを展開するクリエイト・レストランツ・ホールディングス<3387>、焼肉チェーン大手のあみやき亭<2753>がラーメン店を傘下に収めた。

また、ワイエスフードが強化方針を打ち出した海外展開については、力の源ホールディングスがすでに海外の売り上げ比率が40%を超えているほか、魁力屋は2025年12月期の見通しの中で、台湾での海外1号店の出店を足がかりに海外出店を加速するとの方針を打ち出すなど、各社とも積極的。

ラーメン業界では、今後M&A、海外展開ともに競争が激しくなりそうだ。

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文:M&A Online記者 松本亮一

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