自販機で小銭を集める老女に 1万円を渡すことは効果的な慈善と言えるのか? [橘玲の日々刻々]

自販機で小銭を集める老女に 1万円を渡すことは効果的な慈善と言えるのか? [橘玲の日々刻々]
       
 昨年の暮れ、いろいろ用事が立て込んで深夜3時過ぎに仕事場を出て、徒歩で15分ほどの自宅に向かって歩いているときのことだ。私の前を、分厚いオーバーの下に重ね着した小柄な老女がビニールバッグを抱えて歩いていた。自販機があるたびに立ち止まり、釣銭の返却口を一つひとつ調べている。 

 昼間だと人目が気になるから、誰もいないこの時間を選んで、わずかな小銭を手に入れようとしているのだろう。そう思って、見てはならないものと遭遇したときにように目を伏せて老女を追い越したあと、ふと考えた。財布から1万円札を取り出し、いまから引き返してあの老女に渡すべきではないだろうか。

 こうした行動は、経済学的にはじゅうぶん正当化できるように思える。老女が朝までかけて近隣の自販機をすべて回ったとしても、手に入るのはせいぜい100円か200円だろう。それに対して、財布から1万円札が1枚減ったとしても、私がそれを気にする理由はほとんどない。

 お金の効用を考えれば、1万円は老女にとってものすごく大きく、私にとってはそうでもない。だとすれば、お金の価値が小さな側から大きな側に移転することで全体の効用は大きくなるだろう。

 誤解のないようにいっておくと、これは政府による所得の再分配について述べているのではない。私のお金をどのように使おうと私の自由なのだから、1万円札を財布に入れたまま何カ月も持ち歩くより(キャッシュレス化が進んだ東京では現金を使うことはほとんどなくなった)、ずっと有効に活用する機会が目の前にあるのなら、経済合理的な個人はそちらを選択すべきではないのか、という話だ。

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2019年2月14日の経済記事

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