東京証券取引所二部上場の建設・不動産会社スルガコーポレーションが6月25日、総額約620億円の負債を抱え東京地裁に民事再生手続きを申請し、受理された。

 同社は前期末時点で約500億円の総資産があり、売上高、営業利益とも過去最高を記録していた。
にもかかわらず資金ショートに陥ったのは、今年3月に、テナント立ち退き交渉を委託した山口組系暴力団のフロント企業社長らが、弁護士法違反で逮捕されたことによる影響だ。

 反社会的勢力とのつながりが嫌気され、取引金融機関からの新規融資がストップ。保有不動産の売却もままならず、6月末期日の支払い債務のメドがつかなくなった。

 ここ数年来の不動産ミニバブルのなかで、都心部の複雑に交錯した地権者交渉を、新興企業が成功裏に行なうために、裏社会と結託しているのではないか――。建設会社としての創業は古いものの不動産事業では近年苦戦していたスルガが、この疑惑を図らずも立証したかたちとなり、反社会的勢力との癒着が疑われる同様の新興企業で、株が軒並み下落する現象が起きている。

 金融庁が金融機関に対し、特定の不動産会社に対して融資を自粛するように通達したとのうわさも広まっているほどだ。


 なかには風評に近いものもあるが「優良な企業やREITでも新規の資金調達が滞ったり、最高益を上げた会社の株が合理的な理由なくストップ安になったりしている。『不動産業界全体がいかがわしい体質である』との嫌悪感が金融機関や株式市場に広がっている」と石澤卓志・みずほ証券チーフ不動産アナリストは指摘する。

 マンション市況の冷え込みも事態を悪化させている。不動産経済研究所によると、首都圏の分譲マンションの契約率は前年同月比17.7%減。供給量も「前年比22%ダウンの5.4万戸とした当初予測をさらに下回り、今年は5万戸ぎりぎりになる可能性もある」と福田秋生・企業調査部部長は言う。

 業界関係者のあいだでは、危ない不動産会社のリストが出回り、「法人税の支払いなどが集中する6月末から、体力と資産のない新興ディベロッパーの経営破綻が続出する」というシナリオがまことしやかにささやかれている。


 スルガの破綻は、そのシナリオの実現を図らずも後押しすることになるかもしれない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 鈴木洋子)


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