最近、若手ビジネスパーソンの間では、異業種交流会が一種のブームになっている。出勤前の「朝食会」、お昼時の「パワーランチ」、夜の「飲み会」や「勉強会」など、その形態はさまざまだ。
その主たる目的は、ほかでもない人脈作り。日々の仕事や自己啓発、さらにはいざ転職や起業というときに役立つネットワークを築こうと、多くが日夜精を出している。

 そうした中、今、注目を集めている異業種交流会が「BNI」だ。BNIとは、Business Network Internationalの略で、1985年に米国でアイヴァン・マイズナー博士が創設した異業種交流会。現在、米国の統括本部のもと日本を含む42ヵ国に展開され、会員数は11万9000人という世界最大級の規模を誇る。

 この交流会の最大の特徴は、その目的を「ビジネス・リファーラル(会員同士で顧客を紹介し合うこと)」と明示していることだ。交流会にありがちな、単なる名刺交換や学びの場、ましてや飲み食い談笑の場ではない。いわば“本気”で仕事を融通し合うビジネス組織として機能させている点が、ほかとの大きな違いである。

 BNIでは、ビジネス・リファーラルを促進させるためのさまざまな世界共通の仕組みを各国の事務局が提供している。まず、ユニークなのが、BNIは各国内の希望者が各地域で自主的に発足させる複数の「チャプター」と呼ばれる小組織で構成されていること。そして、そのチャプターに入会できるのは、1専門分野1名が原則であること。

 つまり、もしあるチャプターに参加したくても、同じ専門分野(例えば税理士など。
ただし同じ税理士でも「相続」と「企業合併」など専門分野が異なれば入会可能)の人がすでにいれば入会できないシステムだ。ダブりを防ぐことで、会員それぞれのメリットをより確実にしているわけである。もし、専門分野が重なってしまって参加できない場合は、ほかのチャプターに入会したり、自分自身でチャプターを立ち上げたりもできる。

 また、BNIでは、効率的・効果的な人脈作りのためのツール(オリエンテーションCD、特製名刺ファイルなど)、年52回(毎週1回)の交流定例会、定例会の進行マニュアル、ネットワーキングスキルを高めるためのワークショップ、会員・チャプターへのさまざまなサポートなども提供している。実にシステマティックな会なのである。

 さらに、これらを利用しながら会に参加するためには年会費など一定の費用がかかることもポイントだ。このため、冷やかし半分でなく、本気で会をビジネス・リファーラルの場として活用したい人だけが入会する。

 このBNIが日本に上陸したのは2006年4月のことだ。事務局機能を持つ日本ビー・エヌ・アイ株式会社(BNIジャパン)の現・代表取締役である大野麻人氏が発足させた。大野氏は、英国でWeb関連の会社を共同経営していた02年秋に、現地のBNIの存在を知り入会。活動する中でそのメリットと社会的意義を実感し、帰国後、自らが中心となって日本への展開を試みたのである。

「ゼロからのスタートだったので、最初の2年はほんとうに困難の連続でした。
チャプターの正式な発足には米国本部の認定を受ける必要がありますが、その条件というのがチャプターの会員数が20人以上になること。それをクリアするため、私自身がネット検索で見込みのありそうな経営者や個人を探し、連絡して説明会にきていただきました」

 大野氏の努力が実り、会社設立から半年後の06年9月にようやく1つのチャプターが発足したが、その後は思うように展開できなかったという。しかし、様々なルール作りを進めた結果、昨年末から今年にかけてチャプターの発足が加速。東京の吉祥寺や渋谷、御茶ノ水、新宿、新橋、恵比寿、さらには名古屋などで一気に増殖し、現在では、10チャプターにまで拡大した。「さらに数チャプターが立ち上げ中で、8月には会員数が290人になる予定」と、大野氏は胸を張る。

 さて、気になるのは、会員同士のビジネス・リファーラルの実態だ。世界には5400のチャプターがあり、同会のホームページによれば昨年だけでも550万件のビジネス・リファーラル、2200億円の売上が会員にもたらされたとしているが、大野氏によると、日本でも徐々に実績が上がっているという。

「コーチング業を営むある女性会員は、BNI経由で年間420万円の売上があったと報告しています。会員間の信頼醸成がもっと進めば、実績は着実に増えていくでしょう」

BNIは見学も可能とのこと。

(大来 俊)


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