大卒者の2割が“就職”できず、さらに留年者が10万人。

 リーマンショック以降の就職を取り巻く環境の悪化は如実に大学生の進路に表れている。
グラフは、過去10年間の大学“卒業者”の進路を示したものだ。

 今春の大学卒業者約54万1000人のうち就職したのは約32万9000人で、就職率は60.8%(「学校基本調査」8月速報値)。これは前年より7.6ポイント低下しており、48年の調査開始以来最大の下げ幅である。

 しかも、大学を卒業したものの進学も就職もしていない進路未定者は約8万7000人で前年比で28.3%も増えている。これは大卒者全体の 16.1%にもなる。これにアルバイトやパートなどの一時的な仕事に就いた約1万9000人を加えれば、約10万6000人と、大卒者の2割が就職できなかった計算になる。

 さらに、これとほぼ同じ規模の約10万6000人もの留年者が存在する。留年には留学や休学も含まれるが、約7万2000人は「1年」だけの留年者で、そのほとんどが就職留年と推測される。

 グラフのように留年者、そして1年限りの留年者が共にリーマンショック前の08年を底に2年で1割も増えている。

 こうした就職留年者が卒業したと仮定すれば、大学生の約3割が就職できなかった計算になる。

 就職難によるものと見られる留年増は、就職に強いといわれる一流大学でも起きている。

 たとえば、法政大学の留年者は3年前の約480人が、今年は約750人と、5割以上の伸びを見せている。
上智大学と明治大学も共にこの数年、減少に転じていた留年者が今年は上智が15%、明治は2割強も増えた。

 関西では、立命館大学が09年の1739人(08年は1554人)が、今年は2245人と一気に3割も増えた。また関西学院大学では、留年者の絶対数に大きな変化はないが、06年度卒業者から始まった卒業延期制度(学費等の減免なし)の利用者は、昨年の83人が今年は150人とほぼ倍増するほどの伸びを見せている。

 上智や立教大学、中央大学など、伝統のある大学は留学や弁護士などの資格試験のために留年を認める制度は以前からあった。だが、リーマンショック以降の就職難から、青山学院大学や学習院大学などが、就職難を理由にした留年者に対し授業料を減免するといった新制度を創設するなど、もはや一流大学といえども、就職難の留年者増に対応せざるをえない状況になっているのが実情だ。

 厚生労働省の調査では、大卒者の就職内定率は今年3月卒業者で91.8%と、就職氷河期と呼ばれた2000年の91.1%のレベルに迫っている。来年はさらに悪化するのは確実で、たとえば就職情報会社のダイヤモンド・ビッグアンドリードの調査では、今年5月時点で内定保有者の割合は48%で、昨年より7ポイント低く、7月時点でも64.7%と、3分の1の学生が内定がないという惨状である。

 大学生の就活を支援する就職予備校の大手「内定塾」には、4年生の就活の厳しさを目の当たりにして、希望者が殺到している。昨年、年間で200人だった3年生の希望者はすでにこの半年で600人と満杯状態だ。しかも、「昨年までほとんどいなかった就職留年組が1割を占め、その半分は親が申し込んできた。早慶、一橋など一流大学も少なくないから、今年の就職状況がそうとう厳しいのは間違いない」という。

 この状況が続けば、就職できない大卒者と留年者がさらに積み上がるのは確実だ。


 急激な円高による景気底割れの懸念が強まるなか、現在の3年生の就活は今年よりさらに困難なものになるだろう。そして、もはや選択留年制度といったその場しのぎの“対症療法”も焼け石に水でしかないだろう。再来した就職氷河期は深刻の度を増すばかりだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小出康成)

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