今回は、残りの233ヵ所で「水が汚い海水浴場ランキング」を作成した。水の汚れを示す化学的酸素要求量(COD、mg/l、複数回測定の平均値)を基に、水質格付けが「B」と「A」の海水浴場を評価してみたい。
ワースト1位は日本の“ワイキキ”、2位は “世界最古の海水浴場”上位の顔触れを眺めると、愛知県の海水浴場が多数ランクインしている。ワースト10のうち愛知勢は六つ。11位以下30位までを見ても五つが入っている。
1位の宮崎(西尾市吉良町)は、三河湾国定公園にある海水浴場である。4位の恵比寿(同町)と共に、2006年に米ハワイ州の観光局から承諾を得て、「吉良ワイキキビーチ」と称するようになった。
宮崎は、白い砂浜を売りにしていて、長さは570mある。ヤシの木も植え、利用者のリゾート気分を盛り上げようとしているが、CODは4.2mg/lで最悪だった。
ちなみに宮崎、恵比寿とも18年の水質格付けが、今年と同様Bとなっている。
2位となったのは、大野(常滑市)と三河大島東浜(蒲郡市)。このうち大野は、“世界最古の海水浴場”と呼ばれている。
ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず――。有名な一文で始まる『方丈記』の作者である鴨長明。彼が鎌倉時代、大野を海水浴場としてたたえる歌を詠んだことを根拠に、“世界最古”とされているのだ。
時代は下り、江戸末期の天保年間に出された「尾張名所図会」にも、大野は”万病に効く”といわれた潮湯治の様子が描かれている。歴史的に親しまれてきた海水浴場だが、CODは4.1mgだった。
なお、18年に水質格付けが「C」となった海水浴場は、全国でも三つしかないが、大野はこのうちの一つに該当してしまっている。
あとの二つは、愛知県常滑市にあるワースト30位のりんくう海浜緑地と、千葉県千葉市のいなげの浜(今年は工事のため閉鎖されており、水質調査の対象外)だった。
ちなみに今年は、Cと格付けされた海水浴場はゼロである。調査時の天候や、波の状況などが結果を左右することもあるため、前年の格付けも併せて確認するとよいだろう。
愛知の水質の汚さは奥まった湾にある影響大愛知県はなぜ水質の悪い海水浴場が多いのか。愛知県は人口が全国で4位である。自動車産業の一大集積地で、有力なメーカーが多いのも特徴だ。
前回確認したが、海の汚れは基本的に陸上から流れてくる。人が住んでいれば、ある程度の生活排水や工場排水などが発生するため、海流で汚れた水が入れ替わるかどうかが重要なポイントだった。
水質に詳しい国立研究機関の研究官は「愛知県で水質の悪い海水浴場は、いずれも三河湾や伊勢湾の奥まった場所にある。この地域の海は昔からCODが高止まりする傾向がある」と指摘した。
本文で、これまで触れた海水浴場を検証してみよう。ワースト1位の宮崎、2位の三河大島東浜、4位の恵比寿は、渥美半島と知多半島に挟まれた三河湾の奥に位置する。2位の大野と、30位のりんくう海浜緑地は伊勢湾の中にある。
愛知県以外の上位を見ると、7位の桂島(宮城県塩竈市)や8位の豊浦海浜公園(北海道豊浦町)は似たような立地といえる。閉鎖的な海域にあることの影響は、かなり大きいと考えられる。
CODが高い海は有機物による汚濁の程度が大きい環境省による水質格付けは、COD、ふん便性大腸菌群数(個/100ml)、透明度(m)、油膜の有無という四つの判定基準で行われている。
四つのうち一つでもAの基準をクリアできなければ、その海水浴場は、他の判定基準がどれだけ良くてもB以下に落とされる。仮にCODが同じ値でも、AとBでは水質が異なるわけだ。
そこでダイヤモンド編集部の水が汚い海水浴場ランキングは、まずBと格付けされた海水浴場をCODの高い順にワースト1位から128位まで順位を付けた。そして、129位以下はAと格付けされた105ヵ所をCODの高い順に並べて作成している。
少し化学的な話になってしまうが、CODについても説明したい。CODは、海水に含まれる有機物を酸化剤で酸化するときに、消費される酸化剤の量を酸素の量に換算したものだ。
CODが高いほど、水中に存在する有機物の量が多いことを意味し、有機物による水質汚濁の程度が大きいことになるのである。
全国819ヵ所の海水浴場のうち、今年は油膜が確認された場所はなかった。そこで次回は、残りの二つの基準であるふん便性大腸菌群数と透明度を使って、今回の記事とは異なる視点から、水が汚い海水浴場を確認してみたい。併せて参考にしてほしい。
(ダイヤモンド編集部 清水理裕)