毎年、都道府県魅力度ランキングを発表することで知られるブランド総合研究所が、今年初めて、住民視点で地域の課題を明らかにする「地域版SDGs調査」を行い、その結果を9月6日に発表した。
2015年国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」。国や大企業の取り組みを目にする機会が増えてきたが、政府が注力していることもあって、実は日本全国の自治体でも取り組みが進んでいる。ところが、SDGsはそもそも地球全体の視点で作られた目標であり、各地域の状況を踏まえたものではない。
そこで、日本各地の実態を加味し、地域に合った持続的な開発目標を明らかにしようと行われたのがこの調査だ。
調査は、住民が感じている悩みや課題について、都道府県別に数値化しており、地域が直面している問題に取り組むことで、各地の幸福度や満足度、定住意欲度を高めることを目的にしている。
今回はこの調査の中から、住民が個人として不満や悩みに感じていることの個数を聞いたアンケート結果を都道府県別に集計し、回答者1人当たりが選択した悩みの個数が多い順に並べた「悩める住民が多い都道府県ランキング」を紹介する。
※調査を行ったのはブランド総合研究所。アンケートはインターネットにて実施。1万5925人から回答を得た(一部を除き各都道府県から約340人)。調査時期は2019年7月12日~19日。「悩み」としては「低収入」「ストレス」「介護」などの48項目と、「その他」「悩みはない」を加えた合計50項目を選択肢とした。
東北地方の各県が上位にランクイン
「悩める住民が多い都道府県ランキング」1位は秋田県で、1人当たりの悩みの個数は4.26個という結果になった。秋田県は「借金・ローン」「体調不良」「就職難」「電車やバスの路線廃止・減便」などの8項目で悩みが最も多い都道府県だった。
次いで2位が茨城県(3.96個)、3位が徳島県(3.95個)となった。4位には岩手県と山形県(3.93個)がランクインしており、東北地方の各県で悩みの数が多い傾向が見られた。
こうした結果を受けて、住民が抱える問題は東北地方に多いと思ってしまいがちだが、調査を行ったブランド総合研究所の田中章雄社長は必ずしもそうではないと指摘する。
「本調査はあくまでも住民に悩んでいるかどうかを尋ねた調査であって、(収入や借金などの)実態を反映したものではない。つまり、同じ悩みの要因があったとしても東北地方の人のほうが他の地域の人よりも悩みやすい県民性があって、こうした結果が導き出された可能性もある」
最も多い悩みは「低収入・低賃金」北海道・東北で悩む人が多い傾向に
では、全国的にはどのような悩みを抱えている人が多いのだろうか。
「住民の悩み」で最も多かったのが「低収入・低賃金」で、35.8%が選択している。この悩みを持つ住民の割合は地域による差が大きく、北海道・東北で41.6%に対し、近畿では30.1%と11ポイント以上も差があった。
年代では20代が39.6%、30代が39.9%と若年層で高かったのに対し、60代以上では26.3%だった。
職業別ではパート・アルバイトでは46.8%と半数近い人が悩んでいるのに対し、専業主婦では27.6%と差が大きい。ちなみに、男性の32.5%に対し、女性では38.5%と女性の方が6ポイントも高かった。
お金に関する項目では、他に「貯蓄・投資」が28.6%、「税金・社会保険の負担」が15.6%「借金・ローン」が15.2%という結果に。金銭面に悩む人がいかに多いかがよく分かる。
2番目に多い悩みは「ストレス」(28.7%)で、20代から40代では30%を超えているのに対し、60代以上ではわずか11%となっている。健康に関する項目では、「運動不足」が23.4%、「体調不良」「花粉症」「持病・難病」などが10%以上に上った。
このように住んでいる地域はもちろんのこと、年齢や職業などによって、人々が悩む項目は異なる。また、同じように問題があったとしても、県民性などで深く悩んだり、悩まなかったりと差があるのも事実だ。
自治体には、こうした多くの人の悩みの実態を把握しながら、地域住民が満足して幸せに長く暮らせるための目標設定や施策を行うことが求められている。
(ダイヤモンド編集部 林 恭子)