このように幸福度が世界的にも低下傾向にある日本の国内では、地域によって幸福度にどのような違いがあるのだろうか。各都道府県の住民へのアンケートによって「幸福度」を明らかにしたのが、ブランド総合研究所の実施した「都道府県『幸福度』ランキング」だ。
このランキングは、ブランド総合研究所が今年初めて行った住民視点で地域の課題を明らかにする『地域版SDGs調査』によるもの。それでは早速、47都道府県の住民へのアンケートでわかった「都道府県『幸福度』ランキング」を見ていこう。
※アンケートはインターネットにて実施。1万5925人から回答を得た(一部を除き各都道府県から約340人)。調査時期は2019年7月12日~19日。住民に対し「あなたは幸せですか」という問いを投げかけ、「とても幸せ」「少し幸せ」「どちらでもない」「あまり幸せではない」「全く幸せではない」の5段階から1つ選んでもらった。回答はそれぞれ100点、75点、50点、25点、0点として全回答の平均を「幸福度」とした。
1位宮崎県、2位熊本県、3位福井県幸福度は「西高東低」の傾向あり
「都道府県『幸福度』ランキング」1位は、宮崎県で72.4点となった。幸福度2位は熊本県の71.0点。
一方で、40位以下に目を移すと、東北地方の5県が並ぶ(40位宮城県、43位青森県、福島県、46位岩手県、47位秋田県)など、東北各県の幸福度が低い結果となった。また、関東も40位以下に神奈川県(41位)、東京都(45位)がランクイン。このことから、東日本の順位が総じて低いのに対し、西日本の幸福度は相対的に高い結果となった。
3位の福井県が「幸福度」以外は30位台に沈んでいる不思議な現象も
結果をより詳しく見ていこう。1位になった宮崎県は20代の幸福度が78.3点と日本一。30代でも福井県に次いで2位の76.1点と高かった。ところが、40代になると65.3点、50代も66.8点にまで低下する。60代は76点にまで回復するものの、全国的には上位に入っていない。つまり、宮崎県では20代~30代若者の幸福度が高いことで順位が引き上げられているようだ。
3位の福井県は、アンケートで「とても幸せ」と答えた人が33.6%と47都道府県中、一番多かった。30代では80.3点とダントツ1位だ。
「福井県は文科省が行っている小学生・中学生の全国学力テストで、常にトップクラス。それくらいの年齢の子どものいる親世代が30代であるため、幸福度が高くなっているとも考えられる。そして、もう1つの要因として考えられるのが別の幸福度調査などで『幸福度1位』の常連になっている点だ。『福井県は幸福度が高い』という長年の刷り込みによって、今回の調査でも『幸せ』と答えた人が多いのではないか」
今回の調査でユニークなのは、福井県のように「幸福度」だけが高い都道府県がほかにもある点だ。例えば徳島県は、幸福度は4位にもかかわらず、満足度40位、愛着度38位、定住意欲度は44位だった。
「これまで他の調査で示されてきた『幸福度』は、合計特殊出生率などの客観的なデータを基にしたものが多い。今回の調査での満足度や愛着度、定住意欲度と幸福度との乖離を考えると、実際の住民の『幸せだ』という感覚とはかけ離れている可能性がある」(田中社長)
エリア別に幸福度を見ていくと、北海道・東北は64.0点、関東は65.3点、中部67.9点、近畿67.7点、中国・四国67.0点、九州68.9点となった。このように東北地方や関東で相対的に幸福度が低い理由については、住民が感じている悩みや地域にある社会課題をつぶさに調べ、一つ一つ明らかにして、解決していくことが大切だろう。
(ダイヤモンド編集部 林 恭子)