吉本でお笑いコンビ「オオカミ少年」で活動する傍ら、探偵事務所の代表を務める筆者の元には調査の依頼が多く来ます。今回は知り合いの演劇グループの女性マネージャー・立川さんからの「ウチの劇団の脚本家がいなくなったので捜してください!」という依頼です。
依頼内容「ウチの劇団の脚本家がいなくなったので捜してください!」
登場人物
立川(演劇グループ女性マネージャー、45歳)…相談者
佐々木(演劇グループ若手脚本家、22歳)
藤田(演劇グループ劇団員で佐々木と同居、26歳)
岸本(演劇グループ劇団員で佐々木と同居、23歳)
京本(映画プロデューサー、50歳)
演劇グループ45歳女性マネージャー
以前、お仕事でお世話になった演劇グループの女性マネージャー、立川さんから電話がありました。
「片岡さん急にすみません。探偵の仕事をお願いしたいんですが…実はウチの演劇グループの若い男の子と昨日から連絡が取れなくて、まわりのみんなも困ってるんですよ…」
「分かりました。詳しく聞きたいので今日会ってお話を聞きましょう」
都内の喫茶店で待ち合わせをすると、立川さんは化粧もせず、目の下にクマもできていて、憔悴しきった様子でした。話を聞くと、徹夜で、いなくなった若手脚本家・佐々木君が行きそうな漫画喫茶、ファミレス、友達の家などを捜していたそうです。
立川さんにまずは落ち着いてもらい、佐々木君がいなくなった経緯を詳しく聞きました。
昨日の稽古に佐々木君が現れず、携帯電話もつながらない。同居している劇団員の藤田君と岸本君に事情を聞いても分からず、さらに家には佐々木君の財布と携帯が置いたままだったそうです。
昨日は、映画プロデューサーの京本さんに本番さながら舞台を見てもらい、アドバイスをしてもらう大切な日でした。今回の舞台は佐々木君が脚本を担当していて、普段遅刻もしないまじめな佐々木君からすると、無断で来ないのは考えられないことでした。
ただ、行方不明になる前日、立川さんが仕事のことで佐々木君を叱ったとのことでした。
携帯、財布も自宅に残し失踪?自殺の可能性もあるのにのんきな同居人
私は佐々木君と同居している劇団員の藤田君、岸本君に会い、家の中を見せてもらいました。
今回の捜査で気になるのは、佐々木君が携帯、財布、商売道具のパソコンを自宅に置きっぱなしにしたことでした。
こういう場合に考えられるのは、1つ目はまわりの誰かに迷惑をかけたい、2つ目は突発的な現実逃避、3つ目は「私は死にます」というメッセージ。
とにかく、本人が残した手掛かりを徹底調査しなくてはいけません。まずは、佐々木君のパソコンを調べることにしました。藤田君も岸本君も、佐々木君のパソコンを使用していたので、ログインのパスワードを解除してもらえました。ホームページの検索履歴などを見て、ホテルを予約していないか、電車の切符を購入していないかなどを調べましたが、見当たりませんでした。
本や郵便物なども調べましたが、手がかりはありませんでした。
自殺という最悪の事態も考えられるのに、同居人の藤田君、岸本君は「ほっとけば帰ってくるんじゃないですか?」と意外とのんきなのが少し引っ掛かりました。もしかしたら失踪の理由を知っているかもしれません。連絡先だけ交換してその日は他の場所に捜索に向かいました。
立川さんの「普段、遅刻する事はなかった」という発言からして、佐々木君はまじめで、思い込んでしまうタイプであることが予想できます。
警察に捜索願を出しても事件性がないと捜索してもらえない
そして立川さんは、失踪前日に佐々木君を叱ったのが原因でいなくなったのではと気にしていたので、内容を聞くと、言葉に詰まる感じで「私は若い佐々木の教育係だったので、関係者の先生を紹介したり、礼儀作法や脚本の書き方などを教えたりしていたんですが、最近気合が入ってない気がしたので…ついつい説教くさくなってしまったのかもしれません…」と。説教するのは教育係としては当然のことなので、イマイチ歯切れが悪く聞こえました。
私が「捜索願は出されましたか?」と聞くと立川さんはうなずきました。しかし、捜索願を出しても、ほとんどのケースで家出人を捜してもらうことはできません。誘拐の恐れがある場合や子供、老人など1人で生活していくのが困難である「特異行方不明者」と認定されれば、ただちに捜索が開始されます。
一方で、特に事件性がない場合には「一般家出人」に分類され、警察が特別に捜索に乗り出すわけではなく、警察のデータベース上に行方不明者として登録され、行方不明者を見つけた場合は捜索願を出した人のもとに情報がいくようになっています。また、当事者にも捜索願が出ていることを伝え連絡することを促してくれます。
失踪した日に舞台を見てもらう予定だった映画プロデューサーの京本さんに話を聞きたい旨を伝えると、数時間後にアポが取れました。