独自ランキングを作成
東京オリンピックでトライアスロンやオープンウォータースイミングなどの会場となったお台場海浜公園の水質汚染問題が、国内外で話題となった。
東京都の下水道の大半は、汚水と雨水を分離せずに浄化処理する「合流式」。
遊泳者にトイレ臭を指摘されるようなビーチはあまりないだろうが、水質については全国の海水浴場で大きな差がある(なお、お台場海浜公園は、ビーチはあるものの遊泳禁止で、海水浴場ではない)。
環境省は毎年、全国の海水浴場(川、湖沼の水浴場を含む。以下、海水浴場と表記する)の水質調査を取りまとめてきたが、今年は去年に引き続き、コロナ禍で水質調査結果の取り扱いが異なることなどを理由に中止となっている。
そこで今回は、ダイヤモンド編集部のデータ班が各都道府県にヒアリングしたデータ、または各都道府県が開示したデータを基に、「水が汚い海水浴場ランキング」を独自に作成した。
ランキングの対象は、7月27日現在でデータを取得できた558カ所の海水浴場とした。また、下記の都県は対象外とした。東京都(21年は水質調査を実施せず)、奈良県と徳島県(21年は開設する海水浴場無し)、香川県(開設する海水浴場無し)、沖縄県(非開示)、千葉県と神奈川県(7月27日までに回答が無かった)。
水質の判定基準は(1)水の汚れを示す化学的酸素要求量(COD)、(2)糞(ふん)便性大腸菌群数、(3)透明度、(4)油膜の有無――の四つがあり、これらの基準によって海水浴場の水質は適(AA、A)、可(B、C)、不適の5種類で格付けられている。
ただし、水質格付けが「C」と「不適」の海水浴場はないため、今回紹介する「水が汚い海水浴場ランキング」の対象は、水質格付けが「A」と「B」の海水浴場となる。水質格付けがBの海水浴場(全92カ所)をCODの多い順とし、さらに93位以下は水質Aの海水浴場(全68カ所)をCODの多さで同様に並べた。
CODとは、水に含まれる有機物を酸化剤で酸化するときに、消費される酸化剤の量を酸素の量に換算したもの。CODの値が高いほど、水中に存在する有機物の量が多いことを意味し、有機物による水質汚濁の程度が大きいことになる。
先述の通り、ランキングは川、湖沼の水浴場も対象としている。長野県や滋賀県など海のない自治体に住む人も、ぜひチェックしてみてほしい。
なお、現在は感染力が強い「デルタ株」が猛威を振るうなど新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、8月2日時点で緊急事態宣言の対象地域が6都府県(東京、埼玉、千葉、神奈川、大阪、沖縄)に拡大された。また、まん延防止等重点措置も5道府県(北海道、石川、兵庫、京都、福岡)に適用されている。
さらに、8月1日には全国知事会が緊急提言をまとめ、国民向けに「都道府県境をまたぐ旅行・帰省等の原則中止・延期」を呼び掛けている。
海水浴場の利用については、こうした状況を踏まえてくれぐれも慎重に判断してほしい。
青森県の湖畔が1、2位を独占
CODが4mg/リットル以上で、全国有数の水が汚い海水浴場に選ばれてしまったのは6カ所。そのいずれもが青森県(3カ所)、もしくは北海道(3カ所)だった。
ランキング1位となったのは、小川原湖公園(青森県東北町)だ。昨年のランキングでも7位と上位だったが、今回は首位となった。
糞便性大腸菌群数は6個/100ミリリットルで、全体の55位と、それほど高くはないものの、CODは4.5 mg/リットルと最も高い結果となってしまった。
小川原湖公園は小川原湖の湖畔にある水浴場だ。小川原湖は全国の湖で11番目に面積が広い、海水と淡水が入り混じる汽水湖である。
今回のランキングで2位となったわかさぎ公園(青森県東北町)と7位の小川原湖(青森県三沢市)も、同じく小川原湖にある水浴場。
なぜ、小川原湖の水浴場ばかりが本ランキングの上位に並ぶのか。
青森県の環境保全課は、「湖なので水がたまることに加え、検査当日の気象条件によって数値は大きく左右されたのではないか」という。
3位はジェットビーチ石狩(北海道石狩市)。北海道石狩市を流れる望来(もうらい)川の南側に隣接した海水浴場だ。前回のランキングでは14位だったが、今回は一気に3位となった。1位と2位が湖沼だったので、海にある水浴場としては、ジェットビーチ石狩が1位ということになる。
4位は三沢ビードルビーチ(青森県三沢市)。7位の小川原湖と同じ三沢市にある海水浴場だ。
前回のランキングでは116位だったが、今回は一気に4位となった。
三沢ビードルビーチはCODが4.3 mg/リットルと高いこともさることながら、目立つのは糞便性大腸菌群数の多さだ。270個/100ミリリットルと全国で最も多い。なお、糞便性大腸菌群数が2番目に多いのは、7位の小川原湖である。
5位はおたるドリームビーチ(北海道小樽市)、6位は石狩浜(北海道石狩市)と北海道勢が並んだ。6位の石狩浜は、3位のジェットビーチ石狩と同様、石狩湾に面した海水浴場だ。石狩浜は前回ランキングでも25位だった。
これら三つの海水浴場がランキング上位になった理由について、北海道環境生活部環境局循環型社会推進課は「水質検査を行った5~6月頃に、COD値が高い雪解け水が河川から流れ込んだ可能性がある」と説明する。
開設中止の海水浴場は昨年を上回る473カ所
8位は若松(愛知県美浜町)と狩留賀(かるが)海浜公園(広島県呉市狩留賀町)が同順位。
若松は知多半島にあり、伊勢湾に面した海水浴場。前回ランキングは52位だった。
狩留賀海浜公園は400メートル続く白砂の人工ビーチの海水浴場。
10位は西浦温泉(愛知県蒲郡市)。1999年に砂浜を整備し、名前も「西浦温泉海水浴場」から「西浦温泉パームビーチ」に変更。海水浴と温泉が楽しめる海水浴場だ。前回ランキングは34位だったが、今回はトップ10入りとなった。
なお、今年も去年に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの海水浴場が開設中止となっている。
海上保安庁によると、昨年は全国1156カ所の海水浴場のうち、開設しなかったのは469カ所(全体の約41%)に上った。さらに、今年は、全国1121カ所のうち、開設しなかったのは473カ所(全体の約42%)と、昨年以上の海水浴場が開設中止を決めている。
多くの海水浴場が開設中止となったことで、開設した海水浴場に利用者が集中する可能性もある。海水浴場は屋外なので、密閉空間に比べて新型コロナウイルスの感染リスクは低いとみられるが、多くの人が集まる砂浜や周辺施設などにおいて、接触や飛沫による感染の恐れがあることは注意すべきだろう。
また、開設されていない海水浴場は、監視員やライフセーバーなどがいないため、万が一の事故時の発見が遅れる可能性が高く、救助体制も整っていないため、非常に危険だ。
開設している海水浴場を利用したいという場合でも、前述の通り、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象地域や、政府・自治体の要請を確認の上、慎重に判断していただきたい。
(ダイヤモンド編集部 松本裕樹)