先進国で最低レベルに甘んじている
安倍前政権が成長戦略の柱として掲げた「女性活躍」というキャッチフレーズは、今や企業社会に浸透しています。女性が男性と肩を並べて働き、キャリアアップしていく――。
しかし、実態はイメージとはちょっと違うようです。各国における男女格差を測るために世界経済フォーラムが発表している、「ジェンダー・ギャップ指数」をご存じでしょうか。今年3月に発表された2021年版の同指数で、日本は156カ国中120位と、先進国の中では引き続き最低レベル、アジア諸国の中でも非常に低い順位に甘んじたのです。
日本は政治・経済分野での順位が特に低く、経済分野では女性の管理職割合の低さ(14.7%)や非正規労働者の割合、平均所得の格差が指摘されています。国を挙げての取り組みにもかかわらず、日本企業の現場では女性活躍が道半ばであることがわかります。
そんな中、就職・転職のためのジョブマーケット・プラットフォーム「OpenWork」を運営するオープンワーク株式会社は、投稿された女性社員によるクチコミから、女性の成長環境がある企業を調査。キャリア成長を測る上で重要となる「人事評価の適正感」「20代成長環境」「人材の長期育成」「待遇面の満足度」「社員の士気」の5段階スコアに加えて、「女性の働きやすさ」と「働きがい・成長」のフリーアンサーを機械学習によって解析し、スコア化して、「女性の成長環境がある企業ランキング」を発表しました。
今回はその調査結果を基に、女性がキャリアを形成する上で大切なポイントは何なのかを、実際に働く女性社員の声から探ってみましょう。
ランキング上位には、どのような企業が並んでいるのでしょうか。
トップ3は、1位P&Gジャパン(成長環境スコア/26.295)、2位グーグル合同会社(同26.190)、3位リクルートマネジメントソリューションズ(同25.594)となりました。
そして、ゴールドマン・サックス証券(4位)、サントリーホールディングス(5位)と続きます。
これら上位企業における女性社員のクチコミからは、(1)男女関係なく挑戦機会がある「フェア」な点、(2)家庭との両立を支援する環境がある「ケア」の点、(3)実際に活躍する女性のロールモデルがいる点、を評価する声が多いことがわかりました。ランキング上位の企業について、実際に女性たちの口コミを見てみましょう(原文ママ)。
「女性の働きやすさというレベルでは考えていない。女性であっても男性であっても働きやすい会社を目指している。性別に関わらず、多様な人材を求めている会社であり、どの社員も機会を与えられている。(中略)女性だからといって区別されることはない」(生産統括、女性、P&Gジャパン)
「育児休暇は取るのが当たり前の雰囲気になっており、非常に取得しやすい。時短勤務も可能。(中略)私の知る限り、女性だからといって評価を下げられる、仕事を与えられないといったことは一切なく、実力があれば男性以上に活躍できる」(総務、女性、サントリーホールディングス)」
女性活躍のために本当に大切なこととは
「女性だからといって区別されることはない」といった声に象徴されるように、女性たちが本当に求めているのは、女性活躍をお膳立てする目的だけの制度ではないことがわかります。彼女たちが評価するのは、男女関係なく挑戦・活躍でき、公正にキャリアアップの機会が与えられる企業風土と言えるでしょう。
女性を管理職に登用する数値目標を定めることは大事ですが、世の中の企業にとっての喫緊の課題は、女性の仕事に対するモチベーションを底上げするための地道な取り組みを、今すぐ始めることかもしれません。日本の企業社会が目指すべき女性活躍のヒントの一端が、今回のアンケートから垣間見えるようです。
(本記事はOpenWork[オープンワーク]からの提供データを基に制作しています)