近年、個性を尊重し一芸に秀でた合格者を選抜するAO入試が増加傾向にあり、私立大学では2013年の入学者のうち一般入試での合格者は48.9%。つまり、半数以上がAO入試と推薦入試での合格者となっている(一般入試での入学者の割合は、国立大学が84.4%、公立大学が73.3%、国公私立大学全体では56.0%)。増加の一方で批判・反発も多いAO入試について、トモノカイ(東京都渋谷区)が現役大学生・大学院生を対象にアンケート調査を行っている。
調査日時は2月18日~25日。調査対象は同社サービスのユーザーである大学生・大学院生182人。調査方法はウェブアンケート。
賛成派「多様性のある学生増える」反対派「大学の囲い込みでは」
まず、「あなたは推薦・AO入試の増加に賛成or反対」という質問に対し、賛成90人、反対は92人。真っ二つに意見が分かれたが、若干ながら反対の声が多かった。賛成派、反対派それぞれの意見は次のようなもの。
■賛成派
「自分もAOで入った。AOは将来どうなりたいか具体的に考えることができ、大学入学後それがとても生きている。
「大学入試というのは、勉強をした量ではなく、努力した量をはかるものだと思うから。スポーツや芸能、語学などで努力をした証があれば、それに見合う入学資格を与えるべきだと思う」
「将来のことを考えると、学者になったりする場合は別として、学生時代に必死になって得た知識や学力はほとんど使う場所がないから。必死になって勉強したという事実は自信として残るかもしれないが、実際に社会に出たときに必要になるのは基本的な常識や知識とコミュニケーション能力だと思う」
「学力以外の基準も含めて評価されるので、多様性のある学生が増えると思われるから」
■反対
「大学は学問をする場である。そのため、基礎的な学力のないものは大学での勉強についていけない。推薦、AO入試は従来の入試方法より高校までの学力を軽視した選抜方法であるため」
「もっとも客観的で公平な入学試験は人の主観が入らないペーパーテストだから。推薦やAO入試で落とされた人は落ちた理由に納得できないと思う」
「(略)『国際数学オリンピックなどの受賞歴や、高い語学力のある受験生』が有利になる。これではますます受験生の家庭の所得による格差が拡大してしまう。私自身決して経済的に恵まれた家庭で育ったわけではないが、『学力』によって難関大学に合格することができた。教育を受ける権利が、金銭的な理由で阻まれては絶対にいけないと思う」
「定員割れが将来起きるであろう大学が囲い込みをしている結果であり、勉強しなくてもレベルを落とせば大学に入れる=大学入学時の学力が低くなる、という現象が起きているため」
トモノカイは、「賛成派は理念を高く評価、他方で反対派は推薦・AO入試によって生まれる実情を問題視」していると分析。また、理念には肯定的だが、運用や実情には否定的な見解を示している回答者もいたという。
AO入学者は本当に学力低い?各大学の取り組み分析が重要
推薦・AO入試の問題点として挙げられるのが、合格者の学力レベルや、「『受験勉強せずに遊びたいから推薦・AOで受ける』という友人がいた」といった意識の低さ。
「(略)一般入試の人だけが大学でも優秀な成績を修めているとは感じない。むしろ内部生や推薦の上位の人たちは外部より格段に成績が良かったりする(略)」
「AO入試で入ってくる人は総じてコミュニケーション能力が高く、光るものを持っている人が多いのであまり問題は感じない。推薦入試組も真面目な人が多い印象で、一般入試の学生と比べて悪いイメージはない」
「学力については基本的に問題ないと思います。なぜなら一般の学生も勉強しないからです。むしろ推薦・AO入試の人は真面目に取り組んでいるように思えます」
といった意見もある。推薦・AO入試に合格した入学者が全て学力レベル・意識が低いというわけではないのはもちろんだろうし、また、入学者の意識よりも注視しなければいけないのは、大学側がどんな問題を設定するか、どのような選考理由で受験生を選考するかだろう。
コメントにもあったように、囲い込みのために大学側が推薦・AO入試の仕組みを利用することがあれば、人物像を重視するなど多面的な評価を行うというそもそもの理念が失われてしまうことにつながりかねない。「推薦・AO入試」と一括りにせず、各大学が行っている「推薦・AO入試」を個別に分析することも重要だ。
(プレスラボ 小川たまか)