7月末、エアバスから購入予定だった大型機の契約解除が、一気に経営問題に発展したスカイマーク。エアバスが請求する違約金約700億円を払わなければならない事態になれば、自己資本わずか389億円のスカイマークが破綻するのは必至だ。
「エアアジアがスカイマークに出資などの協力を打診」――。8月19日、この報道を受けてスカイマーク株は急騰、ストップ高で取引を終える騒ぎとなった。同日、エアアジアCEOのトニー・フェルナンデスはツイッターで「スカイマークに興味はない」とコメント。真偽のほどが分からないままだが、果たしてエアアジアにとって、スカイマークへの支援は「美味しい果実」なのだろうか?
拡大戦略の失敗とLCCの台頭で本業の不振も加速
スカイマークの現状をおさらいしよう。7月末にエアバスから突きつけられた、「A380」6機の契約解除。約1900億円もの巨額契約だったため、スカイマークの支払い能力にエアバスが疑問を持ったのだ。前払いしている約260億円は戻ってこないと見られるが、それ以上に問題なのは、エアバス側が、さらに追加で700億円もの違約金を請求していることだ。金額は今後の交渉次第で減ると見られるが、財務基盤が脆弱なスカイマークにとっては大打撃だ。
スカイマークの自己資本は、2014年6月末で約389億円。航空機はすべてリースでまかなっており、現在は33機。拡大路線を走ることで、提供座席と運航距離を掛け合わせた「座席キロ」という指標は、3年前と比べて倍増した。
羽田を中心としたドル箱路線で、日本航空(JAL)や全日空(ANA)よりも安い運賃設定がウケて、一時期は業績が急拡大していたものの、急速な拡大戦略が裏目に出て採算性が悪化。
本業に黄信号が灯っているうえに、財務基盤は脆弱。このうえ、エアバスとの違約金がのしかかれば、スカイマークの破綻は現実味を帯びたものとなる。新興エアラインとして国内の航空市場に新風を吹き込んだ西久保愼一・スカイマーク社長は、「JALやANAの傘下入りだけはしたくないと思っているようだ」(業界関係者)。そんな西久保社長にとって、LCCの旗手としてアジア随一に躍り出たエアアジアの方が、遥かにシンパシーを感じる存在であろうことは、想像に難くない。
巨額の未経過リース料も重荷「破綻後に支援した方が安全」
しかし、エアアジアが本当にスカイマーク救済に乗り出すか否か。大きな問題として立ちはだかるのは、「無借金経営」と「リース債務」の存在だろう。
2010年に破綻したJALは債務過剰が問題となっていたが、裏を返せば、カネを借りられたということ。スカイマークと違い、自社保有の航空機など資産を多く持っていたJALは、それらを担保に日本政策投資銀行やメガバンクから融資を受けていた。
しかし、スカイマークの場合、前述のように、航空機はすべてリース。
借金がない代わりに、立ちはだかるのがリース債務だ。未経過リース料、つまり契約している年数分のリース料金の総額は、908億円(14年3月末)にも上る。収益改善のためには不採算路線の整理が必要となるが、大きく身の丈を縮めれば航空機が余り、リース解約が必要になるだろう。解約すれば未払い分がチャラになるということはなく、リース会社との交渉次第だが、ある程度は支払わなければならない。しかし、今のスカイマークに、大きなリストラ関連費用を計上する余裕はない。
エアバスの違約金だけでなく、リース債務もスカイマークの抱える大きな問題なのだ。支援する側からすれば「民事再生法か会社更生法でリース債務を大きく減らせなければ、手を出すのは二の足を踏む」(大手エアライン関係者)状況。要するに破綻するまで待ち、それから触手を伸ばした方が安全ということだ。
そんなスカイマークの唯一のうまみは、ドル箱である羽田の発着枠を36持っていること。「スカイマーク自体に興味はないが、発着枠は欲しい」のが、エアアジアのみならず、JALやANAの本音だろう。しかし、発着枠は国土交通省の裁量で割り振られており、スカイマークを他社が支援した場合、そのまま残るかどうかは不透明だ。
こうした状況を見てみると、エアアジアによる救済が簡単に進むとは考えにくい。また、JALの場合、子会社のJALカードやホテルなどの資産を切り売りすることで、破綻までの数年間、時間稼ぎをしたが、スカイマークにはそうした現金化できる資産もない。残された時間はあまりに少なく、打つ手も限られているのが現状だ。