『The Last Resort: A Memoir of Mischief and Mayhem on a Family Farm in Africa(ラストリゾ-ト――アフリカの家族農園の破壊と混乱の記録』は、ジンバブエでゲームロッジ(観光サファリのための宿泊施設)を経営する白人一家が、ムガベによる土地の強制接収に対抗して自分たちの「ラストリゾート」を守るために奮闘する物語だ。
著者のダグラス・ロジャーズはローデシア共和国の中流白人家庭に生まれたが、大学でジャーナリズムを勉強したのち、この国では自分の人生に未来がないとイギリスに渡った。ロンドンで新聞や雑誌に旅行記を書くようになったあと、2003年には仕事の拠点をアメリカに移している。
ダグラスの父は首都ハラレ(ローデシア共和国時代はソールズベリー)で法律事務所を営み、母親は演劇教師をしていたが、2人は退職後にジンバブエ東部の山岳地帯に土地を購入し、外国人観光客が動物たちを観察できるゲームロッジを始めた。“Drifters(流れ者)”と名づけられたそのロッジは、格安で泊まれる気持ちのいい宿としてバックパック旅行をする欧米の大学生たちのあいだで人気を集めた。
ムガベが白人農園の占拠を認めるようになる経緯は前回書いたが、これによってロッジDriftersも危機にさらされる。ジンバブエに戻ったダグラスは、両親にロッジを明け渡して国を出るよう懇願するが、2人はあくまでも自分たちの土地を守るといってきかない。こうしてダグラスは、土地を追い出されて逃げ延びてきた白人農家や反体制派の黒人活動家、旅行者の来なくなったロッジを定宿にするダイヤモンド取引業者や彼らを目当てに集まってくる売春婦たちとともに、はちゃめちゃ(Mischief and Mayhem)な日々を過ごすことになるのだ。