総合商社の双日が「ひょうたんから駒」の新ビジネスで、地方再生に一役買っている。

 高松市で来月23日、商業施設「瓦町FLAG(フラッグ)」がグランドオープンする。

この駅ビルは、かつて百貨店のそごうや天満屋が入居していたが、客足が伸びずにいずれも撤退。「三度目の正直」でビルの再生を託されたのが、双日だった。

 総合商社のショッピングセンター(SC)事業といえば、自ら不動産を取得し開業後に売却するという不動産開発型が主流だ。これに対して、双日のビジネスは外部オーナーからビルの再生を請け負い、賃料収入の一部などを受け取るという業界初のモデルだ。

 双日は2003年以降、自社ブランドの商業施設「モラージュ」を佐賀など全国3県で開業し、SC事業に本格参入した。しかし08年のリーマンショックで資産価値が激減。自己資本が乏しい双日は、売却による損失に耐える体力もなく、モラージュを保有し続けるしか選択肢が残されていなかった。

 「お荷物」となったSC事業は、不良資産を再生させる投資マネジメント部に移管され、経営管理体制やコストの見直しが徹底的に行われた。そのかいもあって売り上げは改善し、3店舗の資産価値を4年間で50億円積み増した。こうした実績が評価され、過疎化や競争激化で苦しむ地方の商業施設オーナーから再生依頼が舞い込んでくるようになったのだ。

 双日は13年以降、「筑紫野ベレッサ」(福岡県)、「弘前ヒロロ」(青森県)の運営を受託し、テナント数の少なさから「明るい廃虚」とやゆされた「ピエリ守山」(滋賀県)の再生にも関わった。「SCチーム」の下竹原庸佑主任は「利益が出ていない商業施設は、清掃や警備などの業者が開業以来ずっと同じ。

業界の慣習にとらわれない切り口で事業を再構築できるのがわれわれの強み」と明かす。

海外への事業展開も視野

 4店舗目の開業となる瓦町FLAGは、中心市街地に位置する初の案件だ。ビル周辺は近年、シャッター街が増え、衰退が著しい。

 売り上げを伸ばすためにはコスト削減だけでなく、商店街を含めた地域活性化が欠かせない。双日は毎週のように本社から社員を派遣し、コンセプトに基づいた内装設計や資金調達支援、商店街を巻き込んだイベントを実施。誘致した100近いテナントのうち、約40店舗は香川初出店という力の入れようだ。まさに「ゼロから再生のプランニングを始め、最も深くノウハウを注入した」(下竹原主任)重要案件なのだ。

 双日は国内で培ったノウハウを生かし、海外のSC運営に商機を見いだす考えだ。財務体質の弱さから偶然生まれた新ビジネスの成否は、瓦町FLAGが文字通り再生の旗印となるかどうかが鍵となりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)

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