武井咲さんと後藤久美子さんがW主演を務める、テレビ朝日開局65周年記念 松本清張 二夜連続ドラマプレミアム『顔』(テレビ朝日系)が、 1月3日(水)21時より放送されます。

松本清張氏が1956年に発表した同名短編小説を実写化した本作は、音楽会を席巻する覆面アーティストで、殺人犯の井野聖良(武井)と、殺人現場から聖良が立ち去るのを目撃した人権派の弁護士・石岡弓子(後藤)が衝撃的な再会を果たし、火花を散らす様を描くサスペンスドラマ。
2人が再会したことで、運命の歯車が激しく回り始めます。

この度、3年ぶりのドラマ復帰となった武井さんにインタビュー。30年ぶりのドラマ出演を果たした後藤さんと共演してみての感想、また“覆面アーティスト”というこれまで演じてこなかった役へのアプローチを聞きました。

松本清張作品で3年ぶりドラマ復帰

――本作で3年ぶりのドラマ復帰となります。久しぶりに撮影現場に参加してみていかがでしたか?

撮影期間は1か月ほどだったのですが、本当にあっという間でした。ただ、出演すると決まってから少し時間もあり、撮影に向けて準備もできましたし、監督の中にもすでにキャラクターができていて「こう演じてほしい」という意思と、自分が掴んだ聖良のキャラクターの方向性が同じだったのでとても演じやすかったです。


――この3年の間、「早く復帰したい」という気持ちはあったのでしょうか?

そんな余裕もなく、という感じです(笑)。でも、テレビを見ている時にふと「私だったらどう演じるかな」と現場のことを考えることがあって、こんな作品に出たいなぁと思ったりすることはありましたね。

――そして、満を持して松本清張作品で復帰となりました。脚本を読んで抱いた印象は?

松本清張というしっかりとした骨組みのままに、現代にアップデートされていて、とても驚きました。最近では馴染みのある“覆面アーティスト”というところに、ある秘密が隠されていて、そこに“松本清張ならではサスペンス"が含まれていて、読んでいてすごくワクワクしましたね。

後藤久美子からのポジティブな言葉に共感

――最近では馴染みのある覆面アーティストですが、武井さんにとっては初めての役柄。
聖良というキャラクターをどうやって作り上げていきましたか?

聖良を演じるにあたって、まっすぐに台本を読んで、描かれてる通りのキャラクターで演じるのは少し違うんじゃないかな。と思っていて、それを監督にお話した時、監督も理解してくださり、そこから監督と一緒に、聖良像を丁寧に作り上げていった感じです。現場に立たないとわからなくて、現場に入るまでは本当に不安でした。聖良は、歌を歌うことで(心の)バランスが取れているキャラクター。言葉にしない、表に出さない気持ちがすごく多かったので、それをどう視聴者に伝えるのかが難しかったです。

――かなり技術のいる役柄だったと。


細かい、短いシーンも重要になってくるのですが、撮影はどうしても飛び飛びになることもあり、毎回撮影のたびに気持ちを作り直すのがすごく大変でした。

――アーティスト役ということで、歌を歌うシーンも。ここでの苦労はありましたか?

お話をいただいた時に、ギターを弾いたり歌ったりするシーンがあると聞いて「覆面ってことは(歌やギターを担当するのは)私じゃないのかな?」なんて思いました(笑)。正直なところ、歌は得意ではないですし上手くはないのですが、上手い下手よりも歌を通して聖良の思いを届けるというのは私がやらなくてはっていう責任を感じたんです。 そこから夫(TAKAHIRO)にも協力してもらって、レコーディングに挑みました。歌もギターの練習も、教えてもらいました。


――後藤久美子さんとの共演も久しぶりだそうですね。久しぶりに共演してみての印象を聞かせてください。

後藤さんとは以前にコマーシャルの撮影で海外に行った際にお会いしたのですが、その時のことを覚えていてくれて、「大人になったね」と言われました(笑)。後藤さんはとってもチャーミングで気さくな方。現場でもたくさんお話をしてくれて、役に対してもとても柔軟で、やりやすい空間を常に作ってくださいました。

――お話して、特に印象の残っている言葉はありますか?

「健康で美しくあることが一番大事」ということお話してくださいました。
後藤さんも若いときに結婚・出産をされていて、今もこうしてお仕事で活躍されていますが、仕事とプライベートのバランスを取って来た方なので、言うことすべてが腑に落ちました。「自分自身が幸せであることが、家族の幸せだから」など、ポジティブな言葉をたくさんいただきました。

――制作会見の際、後藤さんが「咲ちゃんの家族の写真を見たい」と言っていましたが、それは叶ったのでしょうか?

はい、実現しました(笑)。娘たちにプレゼントもくれて、本当にかわいがってくださいました。

――武井さんと松本清張作品といえば、“悪女”。悪女を演じる上で大事にしていることは?

確かに、『黒革の手帖』の原口元子の印象が強いですよね。
元子を演じていた時は、本当に心の底から笑いが出るほど人を憎む気持ちで現場にいましたね(笑)。演じていて爽快さまで感じてしまうほど。ですが、今回演じる聖良は、殺人犯ではあるけれど、私にとっては“悪女”ではありませんでした。もがいて苦しみ葛藤する気持ちに同情していましたね。なので今回は、「ただ音楽好きで、純粋で普通の女の子」を演じることを常に意識していました。聖良という女性に、見てくださる方が引き込まれてくれたらうれしいですね。

――最後に、放送を楽しみにしている視聴者にメッセージをお願いします。

松本清張の作品は、1度見ただけでは理解しきれない部分があると思います。なので、TVerを使って何度も何度も繰り返し見てほしいですね。覆面アーティストということで、サングラスやマスクを付けているシーンがあるのですが、実はそんなシーンでも細かいことしたりしています(笑)。うっすらと透けて見える目の動き、呼吸、間など、一つひとつの表現に意味を込めながら丁寧に撮影しましたので、ぜひ何度も見て、噛んで、味わってほしいです。

取材・文・撮影:米田果織
スタイリスト:二見綾子
ヘアメイク:竹下あゆみ