2021年9月2日から先行予約受注がスタートしていた新型レガシィ アウトバックが、10月7日に正式発表された。

ラインアップは、上質感を高めた都会向けの「リミテッドEX(429万円)」と、アクティブでアウトドアを意識した「XブレイクEX(414万7000円)」の2グレード。
9月2日から10月4日までの約1カ月間の受注はレヴォーグの売れ行きに匹敵する好調な滑り出しで、メーカー自身も驚くほどだという。受注の比率はリミテッドEXが約75%、XブレイクEXが約25%と上級グレードのほうが売れている。

さて、そんなレガシィ アウトバックについて、開発陣にいろいろと質問を投げかけてみた。

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■先代の価格は341万~363万円でしたが、新型は先代に比べて66万~73万7000円高い。その理由は?

価格が上がったように思われがちですが、先代はオーディオがレス仕様からのスタートだったり、ナビゲーションもオプションでした。新型は、大型のセンターインフォメーションディスプレイであったり、アイサイトXの全車種装着であったり、さまざまな装備を標準装備としたため、この価格としました。
(商品企画本部 プロジェクトゼネラルマネージャー 村田 誠氏[以下、村田 誠PGM])

■「リミテッドEX」と「XブレイクEX」グレードの仕様違いについて

まず外観から言いますと、XブレイクEXのほうはよりスポーティ、タフでラギッドなイメージを強調する仕立てになっています。具体的には、リミテッドEXのほうでシルバーやクロームを使った部分を極力、ブラックで統一しています。グリルや下のカバー、フォグランプのまわりの加飾の処理もすべて黒で統一。ツヤのある黒で統一しながらも、ツヤの黒と半ツヤの黒を組み合わせることによって質感を高めています。またアルミホイールも黒の塗装ですね。

最大の違いがルーフレールで、リミテッドEXは、クロスバータイプのルーフレールですが、XブレイクEXは通常のルーフレール。
XブレイクEXのほうは、より耐荷重の高い仕様にしており、耐荷重が高いのでこの上にテントを載せて張ったりできるルーフレールです。

内装の一番のポイントはシートです。XブレイクEXは撥水のポリウレタンシートを採用しました。撥水性と汚れも拭きやすいということで、アクティブなシーンで使いやすい素材です。(商品企画本部 デザイン部 田中 繁氏)

■今回から国内ではセダンを廃止したのはなぜ?

セダンの全需動向が下がっているため、つらい決断ではありましたが、今回ラインアップから外すことにいたしました。(村田 誠PGM)

■レガシィの冠を付けている理由は?

海外では「アウトバック」を名乗っていますが、国内では先代に引き続き「レガシィ」という冠を付けて、正式名称は「レガシィ アウトバック」になります。
レガシィというと、国内ではやはり認知度が高いということと、スバル車のなかでレガシィはレジェンド的な存在になります。そこを大切に残していきたかったということになります。(村田 誠PGM)

■現行モデルは2019年9月から北米市場に投入されています。なぜ日本は2年遅れでの導入になったのでしょうか?

理由は2つあります。日本のお客様のニーズに合わせて、日本市場専用の環境対応エンジン(1.8L水平対向ターボ)を採用したというところと、高度運転支援システムの「アイサイトX」を装備するということで、開発に少し時間をいただきました。従いまして、アメリカに対して遅れて日本で発売したということになります。
(村田 誠PGM)

■北米は2.5L・NAと2.4Lターボ、欧州は2.5L・NAエンジンですが、なぜ国内は1.8Lターボのみになったのの?

海外では2.5LのNAですとか、北米ですと2.4Lのターボエンジンもあるわけですけれども、やはり日本の市場環境を考えた際に、環境性能や動力性能が両立するエンジンとして、日本の市場にマッチしているということで、1.8Lターボを選択しております。(村田 誠PGM)

■パワートレーンでレヴォーグとの違いは?

ハードは1.8Lターボエンジン、トランスミッションともに同じです。ただし、トランスミッションはファイナルギヤ比をタイヤの関係上、変えております。これがハードについての変更点です。ソフト関係は車両重量、さらにはタイヤ径が違うので、アクセル開度に対するGの立ち上がり感といったレスポンスなどを含めてアウトバック専用でチューニングをしております。(商品企画本部 企画&総合安全性能 小野寺圭氏)

■先進安全装備の「アイサイトX」はレヴォーグと同じ内容でしょうか?

基本的な機能はレヴォーグと一緒になります。
ただ、車両重量などがレヴォーグと異なりますので、それに合わせてアウトバック専用のセッティングにしております。(技術本部ADAS開発部 前田普之介氏)

■足まわりのセッティングは国内専用でしょうか?

足まわりのセッティングは国内専用です。日本はアメリカのフリーウェイや欧州のアウトバーンのような車速域ではなくて、また日本の場合は路面状況が整っているというところを生かして専用セッティングにしています。具体的にはダンパーの減衰力は、乗り心地の改善でゴツゴツ感を低減するために、圧縮側の減衰力を少し下げて、その分フワフワしないように伸び側の減衰力を上げています。また、ステアリングの操舵力については、日本の場合は路面からの外乱入力が少なく、ドライバーの修正舵も少ないので、いざドライバーがステアリングを操作したときには、手応えを感じていただけるようなセッティングとしています。クルマとの一体感を演出した国内専用のセッティングです。
(技術本部 ボディー設計部 宇津木芳明氏)

■日本仕様の内外装はオーストラリア向け仕様がベース?

オーストラリアと基本仕様は同じです。日本向け仕様は、外装は6灯のLEDフォグランプが標準装備となり、外から排気口が見えづらいヒドゥンタイプのツインマフラーになっています。内装はフル液晶メーターがポイントです。あとは衝突安全性能で国内は歩行者エアバッグを付けておりますので、フードの後端のところにエアバッグが入っております。(商品企画本部 企画&総合安全性能 小野寺圭氏)

■デザインのポイントについて教えてください

今回、エクステリアデザインのコンセプトは「アクティブ×タフ」です。全体的なプロポーションの部分では、よりスポーティさを強調するようなスピード感のあるようなシルエットに仕立てながら、ボディサイドの窓肩から下の部分でしっかりと厚みを表現したり、フェンダーまわりの力強い造形を組み合わせることによって、アウトバックの唯一無二の価値を表現しております。

アウトバックといいますと樹脂部分のクラッディングパーツが特徴の1つでもありますが、今回スポーティなシルエットにしっかりとフィットするような仕立てとしました。より連続性のある動きのあるグラフィックを使いながら、機能を表現するということにも挑戦しております。

内装はフル液晶タイプのメーターがポイントになります。レヴォーグと同じセンターのインフォメーションディスプレイとのコンビネーションで先進感を表現しています。内装全般の特徴としては、開放感と安心感のある空間を組み合わせています。具体的には、インパネ上部を長い線でラウンドさせながら、座ったときの乗員の開放感を感じさせるような空間を作っています。また、シートに着座したときの腰まわりのあたり、特にシフトまわりなどは先代からボリュームを上げていますが、適度な包まれ感を表現することによって、安心して走っていける印象を持っていただけるような室内空間を作っています。

またリミテッドEXはオプションで単色のレザーを用意していますが、インストルメントパネルの中段部分にも同じ素材をコーディネートすることによって、より華やかで開放的な印象を持てるような空間になっています。(商品企画本部 デザイン部 田中 繁氏)

■デザインで苦労したポイントは?

初期の段階では、アウトバックというクルマがもともとワゴンから派生したクロスオーバーSUVということで、ワゴン方向にしたらいいのか、それともよりSUV方向にしたらいいのか、といったところでさまざまな議論がありました。その中でやはり唯一無二の価値ということで、この両立をしっかりしていこうというところで、先ほどの「アクティブ×タフ」というコンセプトでデザインをまとめました。(商品企画本部 デザイン部 田中 繁氏)

■北米と日本の外観の差について

北米においてアウトバックは、すでにかなりのお客様からアウトドアの実用的なツールとしての認知度が高まっています。国内も含めたほかの市場においては、スバルのラインアップの頂点にあるクルマという位置づけでありますし、そこをそれぞれしっかり感じていただけるような質感や存在感に特に注力してデザインを仕上げました。(商品企画本部 デザイン部 田中 繁氏)

今回のモデルは発売のタイミングが国内外で差があるという部分もありまして、やはり各市場、特に日本市場を私たちは意識しています。日本は北米より2年遅れの導入というところで、デザインが北米向けのままでいいのか、という議論がありました。そこから「上質なアウトバックとは何なのか?」というところをデザイナーに突き詰めてもらい、ヘッドライト、さらにはグリル、バンパーなども含めて北米仕様から変えております。北米の投入から2年が経ちますが、新しい風を吹き込みながら、性能ともに向上させたのが日本仕様です。(商品企画本部 企画&総合安全性能 小野寺圭氏)

〈文=ドライバーWeb編集部〉