車の運転中におこるケンカって、多くありませんか。

友人・知人の話でも、「車に乗っているとき、連れとケンカになって」といった話はよく耳にする。

「車の中でケンカになって、刑事ドラマばりに運転中の車からとびおりてやった!」なんて物騒なエピソードを持つ人もいる。

また、誰かの車に乗せてもらったはいいが、目の前で、運転席と助手席の恋人同士・夫婦同士のバトルが勃発!……なんて光景を見ることも、しばしば。
自分はあいにくペーパードライバーで、運転する人の気持ちがあまりわからないだけに、「車の中
ではなぜバトルがこんなにも起こるんだろう」と不思議に思っていた。
車内という密室が、なんとなくイライラを生み出すのか。でも、密室であるだけに、愛が育まれたって良さそうなもんなのに。

多くのドライバーを取材してきた自動車ライターの小池りょう子さんに聞いてみた。
「私自身も毎日のように運転していますし、いろいろなドライバーを取材していますが、
人それぞれ、運転技術やスピードの感覚って明らかに違うんですよね。それで、自分の感覚とほど遠い運転をされると、違和感が生まれることが、まずあると思います」

免許を取ってまもない、若い人たちに話を聞くと、口を揃えて言うのは、「自分で運転するようになってから、他人の運転が怖くなった」という言葉だとか。小池さん自身、そうだったとも言う。
「自分の運転感覚が確立し、スタイルが出来上がると、それ以外の運転が自分の感覚と違うので、怖くなるのでしょう。私の場合、狭い道でもスピードを緩めないらしく、よく同乗者から、怖いと言われます。自分としては、このくらいぜんぜんフツウと思ってるのですが……。
特に、ブレーキを踏むタイミングが自分の感覚より遅い運転者だと、この人怖い! と思うのですよね」

確かに、私もこれまで目にしてきた「運転中のケンカ」には、
○「危ない! もっと車間距離とって」←→「十分とってるよ!」
○「もっとスピード落として! ひとを乗せてるんだから!」←→「ゆっくり走ってるよ! ××キロくらいしか出てないだろ?」
○「ああ! いまのところで曲がったほうが近かったのに!」←→「そういうのは先に言ってよ!」
といった、「自分のスピード感覚」「自分にとって心地よい車間距離」「自分の道の選び方」など、自分と他者の感覚との違いによって生まれる「違和感」が原因となっている場合が多かったように思う。
「他人の車に乗ると、妙に肩がこる」などと言う人も多いし……。

さらに、と小池さんは付け加える。
「車を運転するときは、責任感や他の車の流れにのる協調性、運転技術など、肉体的にも精神的にも様々なことを一度に求められます。緊張もあれば、運転に集中するため、“素”が出やすいこともあると思います」

いってみれば、様々な責任・負担を背負っている運転中の言動は、「いっぱいいっぱいで、相手を思いやる余裕がなかった」だけかもしれない。

車中のケンカは、車中だけにとどめておきましょう。
(田幸和歌子)
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