映画の予告編でしか流れない曲というものがある。映画の本編でその曲を聞けることはないし、もちろんサントラにも収録されない。


そんな曲を“予告編テーマ曲”と呼んでいる、勝手に。

先日も、予告編が印象的だった映画を見たのだが、予告で使われていた曲が本編で流れることはなかった。一体なぜ、予告編だけで流れる曲が存在するのだろう? 東宝東和株式会社宣伝部にお話を伺った。

「まず、予告編というのはオリジナル版と日本版というものが存在します。日本版は、オリジナル版のナレーションやタイトルなどを日本語に代えただけのものから、オリジナル版をまったく作り変えてしまうものまであります。予告編だけで流れる曲というのは、オリジナル版の予告に多いんです(シリーズ物以外では)。ですから、オリジナル版をあまりいじっていない日本版予告では、そういった曲もそのまま使ったりしています」

では、なぜオリジナル版の予告ではそういった曲が多いのだろう?

「予告というのは、映画上映に先行して劇場で宣伝していくものです。ですので、映画の完成前から、どのような予告編にするか製作の試行錯誤が行われます。その頃には、映画本編の音楽がまだ出来ていない(または決まっていない)ことがほとんどだと思われます」

聞くところによると、映画製作において音楽作業というのは、最後に行うことが多いそうだ。例えば、予告編製作の企画会議が大詰めを迎えている頃は、「オープニング曲すらできてねーっス!」という状況もあるのだろう。ちなみに、一度付けた曲が気に入らず、監督が作曲家を交代することもよくあるそう。

「例えば、テスト試写での評判がよくなかったりした場合、もう撮影は終わってるし、手を入れるとすれば編集か音楽ということになるんだと思います。
結構大物作曲家が差し替えられることもありますからね」と東宝東和(株)宣伝部。

上映に先行して予告を流さなければならない予告編製作班は、そんなゴタゴタに付き合ってる暇はない。そこで考える。「映画の曲が出来上がっていないのならば、予告の音楽はどうするか?」

「映画やTVなどの広告関係専門に曲を提供したり、映画音楽を選曲している会社がありますので、予告に合うものをチョイスして、使用料などを払い、予告に使用します」と東宝東和(株)宣伝部。

すなわち、その曲こそが“予告編テーマ曲”ということである。

「実は『映画を観たが予告の曲がなかった』『サントラを買ったが予告の音楽なかった』という問い合わせは、よくあるんです。中には『予告の曲の入ったCDを買いたいのだが』と言われる場合もあります。私どもとしましても、過去の映画でサントラに収録されているものだったら、それを紹介するなどしているんですが、専門会社から提供されている曲などは市販ではありませんので、ご紹介できずに困ってしまうんです」とのこと。

ちなみに、映画の音楽製作がすでに終わっており、本編で使っている曲を予告編に使っているということもあるそう。例としては、今年公開された『奇跡のシンフォニー』。

「これは音楽の天才少年が主人公なので、音楽が重要な映画。監督はまず音楽の製作から取りかかったそうで、映画が完成する前に最初から映画音楽が存在していました。
ですので、当然予告でも使用しております」とのこと。

他にも来年1月30日公開の『マンマ・ミーア!』はミュージカルの映画化。映画全編に渡りABBAの曲のオン・パレードだそう。ということで、予告編にも本編で流れるABBAの曲を使用している(ただし本編と予告で使用しているのはABBAが歌ったものではありません)。

必ずしも本編で使用されているとも限らない“予告編テーマ曲”。だからこそ余計に気になっちゃうのかもしれません。
(ドープたつま/studio woofoo)
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