多くの場合、異国をおとずれて最初に降り立つ場所は空港だ。海外では、空港にも各国のお国柄が現れていることがあって面白い。


たとえばベトナムのタンソンニャット国際空港は、真夜中だというのに多くの人がいてアジア特有の熱気ムンムンだったし、タヒチのファアア空港は歌や花で出迎えてくれて、まさにリゾートの趣だった。

そして最近出会ったのが、スイスのチューリヒ国際空港でのユニークなおもてなし。同空港はスイス最大の国際空港であり、日本からの直行便も発着している。空港はとても広く、日本線をふくめた長距離便のターミナルまでは、「スカイメトロ」と呼ばれるシャトルで移動しなければならない。しかしこのスカイメトロこそ、チューリヒ空港の隠れたお楽しみのひとつ。実に面白いしかけがあるのだ。

スカイメトロの旅は3分弱。走りだしてトンネルに入ると、その内壁に突然ショートムービーが流れだす。しかも、ハイジやマッターホルンといったスイスらしさ満点の映像で、一瞬にしてアルプスの山々にトリップしたような気分に! スイスに着いた実感がムクムクと湧いてきて、長旅の疲れもふき飛んでしまう。

BGMには、アルプスの山々に響きわたるような美しいアルプホルンの音色を流しているのも心憎い演出だ。さらに、のどかな牛の鳴き声とカウベルの音まで聞こえてくれば、自然と笑顔もこぼれてしまう。

ところで、走っているメトロからなぜムービーが見えるのか? 実はこれ、実際にムービーを流しているのではなく、連続した160枚の絵を貼りつけてあるのだ。
すべての絵が少しずつ違うため、スカイメトロが時速50kmで走ったときに、約8秒間のショートムービーとして目に映るというわけ。

同空港がこのユニークな試みを始めたのは、2006年夏から。チューリヒ国際空港の担当者いわく、
「お客様からの反響も大きいです。とくに外国からの旅行者の方はとても驚くと同時に、スイスならではの温かいもてなしだと非常に好んでいただいています」
到着時はもちろん、帰国時にも楽しむことができる。

スイスらしさ溢れるお出迎えとお見送り。こうしたユニークな試みが、もっといろいろな空港で見られるようになれば、空港の楽しみ方も広がりそうです。
(古屋江美子)
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