夜中に車を走らせ、行ったことのない場所に行くのが好きだったりする。そして適当な場所に停車。
そこから徒歩で未開の地を散策するのだ。
よく考えたら危険な趣味かもしれないが、自分の不思議な好奇心を満たしてくれるし、自分と肌に合うスポットをみつけたら、ナゼか心が落ち着く。まれに職質されるのがタマにキズなのだが……。

すると、たまに「何、この道?」みたいな、人の気配が全くしない場所に行き着くことがある。寂れたスポットに、道がポツンとおいてけぼりにされてるような……。
実は、こういう道が人気を呼んでいるらしい。
人呼んで「廃道ブーム」。
役目を終え、使われなくなり放置されたままになっている道路に惹きつけられる人が続出という、このブーム。

何となく気持ちがわからないわけでもない。そこで、全国に点在する44本の廃道を紹介するムック本『廃道をゆく』を出版しているイカロス出版に、ブームについて話を伺った。

そもそも「廃道」の定義とは何なのでしょうか?
「要するに、使われなくなった道路のことです。たとえば、山を越えるような道が元々あったのだけれど、そこにトンネルが開通し、山越えの道は使われなくなる。
こういったパターンで廃道になるケースがあります」

しかし、どうしてそんなにも廃道に惹かれるのだろう。自分でも、それがわからない。その辺のことも聞いてみると、
「かつて“廃墟ブーム”というのもあったのですが、廃道ブームも同様に自然の中に埋もれていた文明をみつけだすのが面白い、というのがあるのではないでしょうか」
なるほど。まさに廃道をみつけだす好奇心でもあるし、都会から離れたときに感じる心の平安に似たところもあるのだろうか。

そこで、オススメの廃道を教えていただいた。それは福島と山形を結ぶ「万世大路(ばんせいたいろ)」。
万世大路という名前は明治天皇が行幸に訪れた際に「末長く愛される道になるように」と直々に名付けた、なんて逸話もあるような歴史に名を残す道。この道の県境に「栗子隧道(くりこずいどう)」というトンネルがある。栗子隧道は日本で初めて脊梁山脈(分水嶺となるような大山脈)を貫通する歴史的なトンネルだったが、交通事情の変化により次第に放置されるように。今では植物にまみれ、林の中に存在する“廃道”に変貌。マニアからの支持を集めている。

実はこのブーム、以前より盛り上がっていた模様。
『廃道をゆく』が出版されたのは昨年の10月末なのだが、ブームのピークは2008年10月~11月ごろだったそう。
しかし、今でもブームは継続中。なんと、廃道めぐりを企画している旅行会社まであるとのことで、まだまだ“廃道”の熱が消える気配はなさそう。
また、廃道愛好者を「オブローダー」と呼ぶそうだが、そんなマニアによる廃道めぐりのオフ会も開催されているとのことで、こちらも愛好者は目がはなせない。

わからない人には一生わからない世界だろうが、一度ハマってしまったらズブズブの虜になってしまいそうな“廃道”の魅力。「是非とも!」と闇雲にオススメできる世界ではないが、こういう嗜好も世の中にはあると知っておいても損はない!?
(寺西ジャジューカ)