卒業シーズンで、「卒業の定番ソング」などの話題が、テレビやネットなどでたびたび取り上げられている今日この頃。

だが、そういったなかではほとんど取り上げられない、でも、局地的に超有名で愛されている卒業の歌がある。


それは、「うららかに春の光が降ってくる~ 良い日よ~良い日よ~良い日今日は~♪」で始まる「卒業式の歌」(小林純一 構成・作詞/西崎嘉太郎作曲・編曲)だ。

子どもの頃、毎年学校で歌っていただけに、「どこの学校でも歌う曲」と思い込んでいたのだが、実は知っている人が非常に少ないということを、大人になって初めて知った。

何がスゴイって、この曲、全員参加で「1~3年生」「4~5年生」「卒業生」「父母」「先生」など、それぞれのパートがあり、オペレッタ形式で歌いつないでいくため、全部で16~17分もかかってしまう大曲なのである。

低学年の無邪気な声、4~5年生の快活な声、卒業生のちょっと大人びた声、お母さんたちの優しい声、さらに先生たちのシッブイ低い声と、毎年聴き&歌っていくなかで、友人同士の間ではいつの間にか「全部のパート物まね」が流行ったりもした。
物まねだけで16~17分。ずいぶんくどいが、いまだに鼻歌で歌ってしまうくらい、愛着を持てる素晴らしい曲である。


なぜ一部でしか知られていないのか。いま、楽譜などはないのだろうか。調べてみたところ、教育研究社の『卒業の歌ピアノ伴奏集』に収録されているらしい。そこで、教育研究社に問い合わせてみたところ、こんな回答をいただいた。
「『卒業式の歌』は、作詞の小林さんも作曲の西崎さんもすでに故人でいらっしゃるため、どういった経緯でつくられたかはわかりません。また、楽譜は20年ほど前に発行して、その後、再販ぐらいまでいったのですが、すでに絶版になってしまっています」

根強い人気はあったそうで、他に『行事の歌 ピアノ伴奏集』というところにも収録されたが、これも17〜18 前に発行されたものとのこと。

「こちらも昨年に品切れ・絶版になってしまいました……」
つまり、残念ながら、現在は入手できないのだそうだ。

自分など、歌ってきた者にとっては、大人になった今でも一人オペレッタができるほどの名曲なのに、なぜなくなってしまったのだろうか。
「まず楽譜の発行自体がなくなってしまったことがあります。また、16~17分もかかるオペレッタ形式なので、演奏時間が非常にかかること、父母や職員もまじえた全員参加の曲なので、なかなか仕上げにくいということもあるのではないでしょうか」

ちなみに、現在の小学校音楽教材として、卒業の定番曲は『旅立ちの日に』なのだとか。

いまは卒業式に下級生が出席する学校が少ないこともあるし(コネタ既出)、全員参加の長い長い卒業の歌は、廃れていってしまったのかもしれません。
(田幸和歌子)