親がハゲていたら遺伝するとか、母方の祖父がハゲていたら遺伝するとか説は色々とあるけれど、その理由まではあまり明確にはなっていない気もする。
「男性型脱毛症(AGA)のお話をすると、遺伝の要素は2つ存在します。ひとつは男性ホルモンをより強力な男性ホルモンに変換する“5α-リダクターゼ”という還元酵素。簡単にいうと、黒豆と白豆があったら黒豆、白豆、半黒半白ができ、ハゲを黒豆とすれば3分の2の確率でハゲになるという遺伝です。もうひとつは“感受性”。いわゆるセンシティビティー、その強力な男性ホルモンに敏感かどうかという性質の遺伝です」
その強力な男性ホルモン“ジヒドロテストステロン(DHT)”がハゲの根源となるホルモンらしい。これに「変身する力」と「反応する力」が加われば“ハゲ”のスイッチが入ってしまう。というわけだ。反応する力“感受性”はどのように遺伝するのだろうか?
「“感受性”は性染色体“XY遺伝子”で遺伝します。男がXY、女がXXです。この特定の“X“で遺伝します。男性の場合で説明すると、Yは父親からXは母親からもらうので感受性は母親から受け継ぐことになります。
つまり『母方のおじいちゃんがハゲていたら孫もハゲる』というのは“感受性”の遺伝の話だったのである。“5α-リダクターゼ”は両親の遺伝となるわけだから、冒頭の説はどちらも間違っていなかったのだ。では、ずばり“ハゲ”が遺伝する確率は?
「男性型脱毛症(AGA)に関して言えば、100%遺伝が原因といえます。ただし、その遺伝要素を持っていてもどちらかが弱かったり、途中で邪魔するものがあったりすればハゲないこともあります。ハゲるかどうかはこの“感受性”と“5α-リダクターゼ”の酵素活性のバランスが非常に重要となってくるのです」
そんなに可能性が高いとは思ってもみなかった。実際、私の母方のおじいちゃんもハゲている。母親は見た目ではわからないが、その遺伝子を持っていておかしくないのだ。ちなみに女性でも遺伝でハゲるのだろうか? 女性でも薄毛で悩む人はいるが、男性よりはるかに割合は少ない気がする。
「女性でももちろん遺伝はしますが、女性ホルモンには抜け毛を防止する作用があるんです。女性の男性型脱毛症“WAGA”というものもありますが、いわゆる閉経後が一般的で女性ホルモンが減少して50歳くらいから進行するというケースが多いようです」
遺伝の話となると“占い”のような感覚があったのだが、これだけ信憑性があれば……といっても信じたくない話だ。“ハゲ”はやっぱり避けたいものです。防衛策を教えてください!
「“プロペシア”(※)という“5α-リダクターゼ”の活性を阻害する薬があります。
“遺伝”に心当たりがあるようならフサフサなうちに……。ということですね。
(楓 リリー)
※禁忌事項 女性の服用は不可。OTC薬品ではないので医師の処方箋が必要となります。効果効能に関しては個人差があります