昔はコショウといえば、「白コショウ」あるいは白黒混ざった「ブレンド」が当たり前だった気がする。

その一方で、黒コショウを初めて意識したときは、その香りの良さに驚き、背伸び感も手伝って「やっぱり黒コショウが辛くて美味いよねー」などと言ったもの。

ところが、今はどこの家庭にも「黒コショウ」がフツウにあり、ラーメン屋などでも「黒コショウ」を置いている店を多く見るようになった。

いったいいつからコショウといえば「黒コショウ」が一般的になったのだろうか。エスビー食品に聞いた。
「1987年から2005年のデータの推移では、スパイス全体が倍くらいの売上となっています。なかでも、黒コショウの伸びは大きく、91年から97年では1.4倍、97年から08年ではさらに1.5倍と、順調に売り上げを伸ばしています」

一方で、白コショウはほぼ横ばいだという。
「さらに、市場でみると、最近のスパイス全体の中でブラックペッパーは25%となっているのに対し、ホワイトペッパーは2.5%ということになっているんですよ」
なんと白コショウの10倍もの売り上げで、全スパイスの4分の1を占めるのが黒コショウということだ。


なぜなのか。
「実は黒コショウのほうが白コショウより売れていること自体は、洋食文化とともに、かなり前からの傾向としてありました。香りや辛味が好まれ、外食産業で取り入れられた影響から、徐々に『家庭のもの』になっていったのだと思います」

ちなみに、白コショウも、黒コショウも、もとは同じもの。どう違うかというと、黒コショウが「まだ青いうちに収穫して乾燥させたもの」であるのに対し、白コショウは「完熟させ、果皮をとって、中の部分を乾燥させたもの」ということがある。
つまり、黒コショウは青いまま採った果皮を含むため、辛味や黒みがあるのだが、白コショウは完熟させているため、辛味がまろやかで、さらに果皮をとっているため、色も白く香りも弱いということだそうだ。
「白コショウはもともと白いお料理、たとえば、ホワイトソースやお魚料理などに適し、黒いコショウは、辛味が強いため、ステーキなどの、お肉料理の仕上げやアクセントに適しています」

本来は、料理によって使い分けていたはずのコショウ。
西洋料理だけでなく、世界の様々な国の料理をいつでも食べられるようになったいま、舌が「刺激」に慣れ、常にどんな料理にも「アクセント」を求める人が増えたことで、黒コショウが大活躍し続けているのかもしれません。
(田幸和歌子)