香川のご当地グルメといえば、讃岐うどんを思い浮かべる人が多いと思うが、「骨付鳥」も隠れた名物だ。

骨付鳥とはその名の通り、骨の付いた鳥の足(もも肉)に塩・コショウ・ニンニクなどで味をつけ、オーブンや網で焼いたもの。
昭和27年に香川県丸亀市のある店で生まれた。いまや丸亀市のみならず、香川県のあちこちに骨付鳥を出す店がある。

料理自体は非常にシンプルだが、ユニークなのは多くの店で“親鶏”か“若鶏”を選べること。両者の味わいはかなり違い、若鶏は柔らかくてジューシー、親鶏は濃厚な旨味と歯ごたえを持つ。

好みは人によって分かれるところだが、親鶏の滋味に富んだ風味がいたく気に入った私。あるとき、あの味を家でも食べたいと思い、神奈川にある自宅近くのスーパーに行って気がついた。
親鶏が売っていない……。

よく考えれば、これまで鶏肉を買う時に親鶏か若鶏かを気にしたことはなかった。スーパーのパック入りの肉にも部位しか書かれておらず、唯一見つけたのは、「若鶏もも唐揚げ用」くらい。何軒かのスーパーやお肉屋さんに問い合わせてみたが、基本的に売っているのは若鶏で、親鶏を売っている店は皆無だった。いったい、親鶏はどこで売っているのか?

骨付鳥の故郷、丸亀市観光協会に聞いてみると、
「えっ、売ってないんですか?」
とむしろ親鶏が入手できないことに驚かれた。なんでも丸亀市の肉屋さんでは普通に売られており、家庭で骨付鳥を食べることも珍しくないのだという。

「フライパンやオーブンで作ったりしますよ」
丸亀市や高松市のスーパーにも確認してみたが、確かに多くの店に置いてあり、常時置いていない店でも事前にいえば取り寄せてくれるという。

なぜ他の地域では売られていないのだろうか? 社団法人日本食鳥協会に聞いてみると、
「親鶏は硬くて食べにくいので需要がないからだと思います」
確かに骨付鳥も親鶏はかなり噛みごたえがある。もちろん食べられないほどではないが、骨付鳥のような特定の料理がない限り、需要がないというのは納得かも。一般的に親鶏はミンチにして加工食品などに使われているようだ。また、若鶏は6億羽ほど飼育されているのに対して、親鶏は9,000万羽程度にすぎない。圧倒的に数も違う。


どうやら親鶏の骨付鳥が食べたかったら、香川や専門店に行く、またはお取り寄せするということになるよう。普通に家庭で食べられる香川の人たちがうらやましい限りです。
(古屋江美子)